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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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エルフといても目立ちたくない⑥

「うわぁぁぁぁ!!!!!」


いきなり僕の頭上に少女が現れたせいかルーザーは大声を上げた。

え、大丈夫かな。

外まで聞こえてたら誰かが飛び込んできてもおかしくないぞ。


「なっなんだそれ!?マリス!!説明してくれ!!」

「えっと……この方は魔神テスタロッサさんです。」

「は?魔神?……何を言っているんだいマリス。」

意味が分からないといった様子で慌てるルーザーだが、これはテスタロッサが悪い。


何の説明もなく目の前に浮遊した人が現れたら誰だって叫ぶだろう。


「テスタロッサ、タイミングが悪すぎるよ。」

「でもどのタイミングで出ても多分驚くと思うよ?」

確かにそれもそうか。


いやいや、変に納得してしまったがちゃんと説明してから現れればそこまで驚くものでもなかったはず。


数分置いてルーザーが落ち着いたのを見計らって僕は説明を始めた。


「僕の頭の上で浮いているこの少女はテスタロッサ、魔神なんだ。エルフの里で色々あってね、まあ、そこは長くなるから省くけど、色々あったせいで魔神の封印が解けた。」

「え?え?何を言っているんだいマリス。魔神だって?……どう見ても精霊にしか見えないんだけど。」

あ、それは禁句。

といってももう遅い。


「なんだと人間!?あんな低俗な精霊共と一緒にされるのは心外だ!!ボクはこう見えて慈愛に満ちた魔神と言われているんだぞ!そもそもボクにそんなふざけた事を言って許されると思っているのかい?マリスはボクの封印を解いてくれたから対等の立場で接しているけど、君は何なんだい?見た所皇族のようだけどさ、もう少し考えて発言したほうがいいよ。いくらボクが封印から解かれたばかりとはいえ、君を殺すくらい瞬きの間にできるんだからね。」

テスタロッサがムッとした表情で声を荒げた。

めっちゃ切れるじゃん。

息継ぎなしによくそんだけ話せるな。


「も、申し訳ない……私の勘違いです。」

勢いに押されたのかルーザーが頭を下げた。

知らなかったんだから多少の失言は許してあげて欲しいけどね。


「よろしい。ボクに舐めた態度を取れるのはそこにいるフィンブルとこのマリスだけだよ。覚えておいてね。」

「はい、大変失礼しました。では……本当に魔神テスタロッサ様ということですか?」

「そう、この世界に君臨する四大魔神の一柱、慈愛の魔神テスタロッサさ。」

仰々しい名乗りをしているが、実際は僕の頭上でフワフワ浮きながら少女の姿で胸を張って威張っているだけだ。


「まさか……でもそれなら帝国の地下に封印されている魔神は……。」

「皇族と十二神は知っているその秘密。僕も色々あって知ったんだけどさ、あそこにいる魔神が何なのか判明したよ。」

「え?」

「強欲の魔神ヘラ。暴虐の限りを尽くすと言われている最悪の魔神らしい。」

「強欲の魔神ヘラ……伝承では聞いたことがあるよ。」

「坊や、その魔神は最悪の中の最悪だよ。魔神の中でも一番を争う程に強くて、気性が荒いんだ。本気でやったことはないけど、ボクでも勝てるか分からないよ。」

何それ初耳。

そういう大事な情報は先に共有しておいてくれよ。

あ、寝てたから話せなかったのか。


「封印は確実にされています。それに十二神が守っていますし、簡単には封印を解く事が出来ません。」

「その十二神ってのがどれだけ強いのか知らないけど、魔神には配下に神獣を持つ者もいるよ。フィンブルみたいなね。だからもしも高位の神獣が来たら止められるのかな?」

十二神とフィンブルが戦って勝てるか。

そう言われると難しい気もする。


ただクレイさんならばなんとかなりそうだ。

あの人は底が知れないし、前回対峙した際もかなり手を抜いていた。


「なんだかマリスは何かと問題を抱える事が多いね。この亜人国に来てからというものの、高位の魔獣には何故か相棒と呼ばれるまでになるし、今度は魔神が側にいるし。」

「僕が望んでそうなったわけじゃない。言い方を変えれば話題に尽きないとでも言ってくれ。」

僕は出来るだけ大人しくしているつもりだが、トラブルが僕に寄ってくるのだ。


しかしルーザーの言う通り問題を抱えすぎている気もする。

こんな状態で帝国に帰れば何を言われるか。


人間の姿になれる高位の神獣だけでも驚かれるだろうが、魔神までセットだ。

トラブルよくばりセットとでも言われるだろう。


「でもテスタロッサも力を貸してくれるらしいし、案外王国との戦争は早く終わるかもしれないな。」

「そうかなぁ、王国も一筋縄ではいかないと思うよ。十二神に匹敵する四天がいるし他にも隠し玉があるかもしれない。」

ハルマスク王国は帝国と二分する程に強国だ。

小さな亜人国が勝てる見込みなんて普通だったらない。

しかし今回は今までと違う。


フィンブルにテスタロッサ、エルフまでいる。

それに加えて僕らのグループだっているんだ。

十二神だって2人もいるし。


「四天だって既に1人は牢屋に入れられているし、苦戦はしないと思うんだけどな。」

「だといいけどね。……マリスがいるからなんとなく簡単には終わらない気がするよ。」

どういう意味だ。

お前はトラブルを呼び込むとでも言いたいのか?

なんだかこのところルーザーも僕の事をトラブルメーカーだと感じている節がある。



「とにかくそのテスタロッサ様の事は帝国に帰ってから父上に相談しよう。地下の魔神の事もね。」

ルーザーはそう言い残すと部屋から出て行った。

扉が閉まる直前護衛の人がチラッと見えた気がしたが、凄いこちらを睨んでいたようにも見えた。


気にしない事にしよう。



「ふぅ、早く暴れたいものだな。我らで先に潰しに行くか?マリスよ。」

「駄目に決まってるじゃないか。そんな事したらマゼラン王が頭を抱える事になってしまう。」

フィンブルは早々に暴れたいらしくまだかまだかとずっとうるさい。

こういうのは作戦通りに動かないと失敗するものだ。

だから僕らだけで勝手な行動は許されない。


数人に迷惑をかけるだけで済まず、下手をすれば数多くの死者も出るかもしれないんだ。


その日はフィンブルをなだめながら一日が過ぎて行った。

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