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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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亜人国でも目立ちたくない⑧

「滅んだ街ってこんな感じなんだね……。」

ミアは恐る恐るといった様子だ。

神獣の力はこれほどのものかとはっきり分かる有様であった。


崩れた家屋に形を成していない城壁。

木が燃えた後のような臭いが辺りに充満している。


神獣のいる方向はすぐに分かった。

濃密な魔力の波が僕らのいる所まで漂ってきていたからだ。

感覚の鋭い人であれば魔力酔いを起こしてもおかしくはない。

実際、エマさんは魔力を感じ取れる力があるせいか顔色が少し悪くなっていた。


「この街の真ん中に奴はいる。しかし、本当に大丈夫なのか?交渉は任せろと言っていたが……。」

「下手に出ればなんとかなるよ多分。」

「またそんな適当な……アタシは近くまで寄らないわよ!アンタ一人で行きなさい!!」

どうやらみんなは距離を取っておきたいらしい。

少しくらい僕を信じてくれてもいいんじゃないかな。


「キリカはどう?一緒に神獣の所まで行かない?」

「い、い、嫌です!!!怖いですよ!!!」

「じゃあ……フェイルは?」

「護衛といったところか。まあ俺は構わんが帯剣していれば逆に良くない気もするぞ。」

フェイルが珍しくまともな事を言う。

確かに武器を携帯して近づくのは愚行か。

それなら無害そうなミアとかはどうだろうか。


「嫌だよ!!ボクも離れた所にいるからマリス一人で行ってきて!!」

「みんな冷たいな。元はと言えば僕がここにいいるのもおかしいってのに。陛下と賭け事なんかするからだ。」

そうだ、本当だったら僕はこの場にいないはずだった。

みんなが僕の戦いを見て賭け事を始めたのがいけない。

それに乗った陛下も陛下だ。

その対価がこれだ。


「ワタシが一緒に行ってあげるからさ~そう怒んないでよマリス。」

アスカだけは付いて来てくれるようだ。

でもペラペラうるさくして神獣の神経を逆なでしないかが心配になる。


「私は皇子と皇女殿下の守りにつきますので……。」

ナターシャさんは付いて来てくれないか。

まあそれは仕方ない。

ルーザーとエリザさんに何かあれば大事だし。


「じゃあ交渉失敗したら合図するからすぐに駆け付けてくれよレオン。」

「任せよ。我が爪で奴の皮膚を切り裂いてやる。」

切り裂けるかしらないけどね。

多分毛皮めっちゃ硬いんじゃないかな。

仮にも神と名の付く獣だ。

そこらへんの魔獣と一緒にしない方がいいと思うけど。



待機組と別れアスカと一緒に神獣の寝どこまで歩く。

辺りは瓦礫の山が沢山築き上げられており、凄惨な現場だったことは簡単に想像できた。

アスカはスキップしており機嫌がいいようだ。

こんな場所で機嫌がいいというのはおかしな話だが。


「マリス、もしも交渉失敗したらどうする?ワタシはどう動けばいい?」

「いや、自由に動いてもらって構わないけど。」

「でもさーマリスの邪魔にはなりたくないんだよね~。だから指示飛ばしてよ、ワタシこう見えても十二神だしさ、上手く動いて見せるから。」

アスカはそんな事言うが僕は軍師じゃないんだけど。

十二神に指示を飛ばすなんてした事もないしこれからもする予定はない。


大体十二神って単騎で動く事が多いっていうじゃないか。

それならアスカも自由に動いてもらって対処してくれた方がいいんだけどな。


「虹色魔導師様に全面的に協力し可能であれば支援せよ、ってのが陛下からの指令なんだよね~。だからよろしく!」

支援ってなんだよ。

こっちが支援したいくらいだわ。

当たり前のように僕を起点に考えないで欲しいよ。


「いっとくけどチームワークとか僕は苦手だよ。だから僕も好きに動くしアスカも思うように動いてくれたらいい。」

「じゃあワタシに合わせてくれるってこと?」

「合わせるよ。僕に合わすよりそっちの方が簡単だろうし。」

「ん~確かにそれもそうか!マリスがどんな魔法が使えてどんな威力があるかも分かんないし!」

納得してくれたらしい。

どう考えてもその方がお互い動きやすいよ。

僕に合わせるってどうやって合わせるつもりだったんだろうか。

魔法だって全部見せた訳でもないのに。


ま、アスカの事だ。

何となく、って答えそうだから質問するのは辞めておいた。



神獣に近付いていくにつれて辺りに漂う魔力の渦は濃くなっていく。

アスカも次第に口数が減っていく。

神獣を前にしてふざけるのは流石に控えたようだ。


滅びた街の中心まで歩くと、白い毛に覆われた戸建て住宅と同程度の大きさの獣が鎮座していた。

丸まって眠っているようだが僕らに気付いていないのだろうか。


パッと見た感じ大きな白い狼だった。

毛並みは美しく信仰の対象になってもおかしくはなかった。


「あの、すみません。」

一声かけたが反応はない。

死んでいるのかな。

ちょっとつついてみようかな。


手を近づけるとバチッと何かに反応し弾かれた。

薄く結界を張っているようだ。

もう一度触れようとすると白い神獣は薄く目を開けた。


「……何用か?人間。」

低く腹に響くような声が白い神獣から発せられた。

気付いてくれたらしい。


「あの、お話したくて来たんですが。」

「……貴様もあの獣人と同じ、我を使役するつもりか?」

「使役?いや普通に話がしたくて。」


ゆっくりと白い神獣は立ち上がると僕とアスカを見下ろした。

改めて思うがでっかいな。

腕の太さとかもう一振りで吹き飛ばされてもおかしくない。


「前に来た獣人と同じ仲間か?」

「仲間じゃないです。もしかして高圧的に接してきましたか?」

「……我にふざけた口の聞き方をした。だからその者の住まうこの街を滅ぼしてやったのだ。」

じゃあその獣人が悪いよ。

神と名のつく獣に偉そうな態度はよくないね。


「僕らは貴方に力を貸してほしくてここに来たんです。」

「……協力だと?まあいい、今まで来た下等生物よりかはマトモに会話が出来るようだな。」

まあ僕はマトモだからね。

隣でだんまりを決め込むアスカはその限りではないが。


「亜人国と協力関係を結んで頂くことは出来ませんか?聖域も食料も全て用意します。」

「……貴様の名はなんだ。」

おっと、これは失礼な事をしたな。

緊張で名乗るのを忘れていたよ。



「自己紹介が遅れました。僕は、マリス・レオンハート。隣の女の子はアスカ・シラヌイと言います。貴方の名は?」

「我はフィンブル。白銀の神狼と呼ばれていた。」

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