学園でも目立ちたくない③
「お、全員揃っているな。とりあえず自己紹介といこうか。俺はここの担任を務めるオルバ・クリストファーだ。ま、知ってるやつも多いかもしれんが宮廷魔導師も兼任している。お前達一級クラスともなればなかなか担任を務めれられるやつが居なくてな、必然的に俺になった。」
オルバ・クリストファー伯爵。
僕でも知っている。
宮廷魔導師には序列が存在する。
四色魔導師で宮廷魔導師序列3位。
十二神。
上位12名だけに与えられる特別な肩書き。
十二神が1人オルバ・クリストファー伯爵。
こんな所で先生をやるような人物じゃないはずだ。
どんな権利があって国を守る最後の砦とも呼ばれる十二神の1人を雇っているんだろうか。
「何故俺が担任なんだとそんな顔を皆してるな。それはな、今年は黄金世代と呼ばれているからだ。四大公爵家の子供達と皇子皇女が全員入学した。分かるだろ?今年の学園は歴代最高の人材が集まっている。ちなみに全員一級クラスだ。」
タイミングが悪いなホントに。
何故僕が入学する年に限ってそんな事になるんだ。
16歳なのを恨むぞ。
「ま、そういうわけで仲良く頼むぞみんな。じゃあ最初の授業は全員自己紹介しようか!よしそこの一番端から頼む。」
最悪だ。
よりによって自己紹介……。
全員が僕を認識してしまう。
目立つことは必至。
なんとかならないものか……。
そんな思いも虚しくどんどん自己紹介は進んでいく。
その中で一際歓声があがる自己紹介があった。
「ルーザー・アステリアです。皇子ですが皆さん気軽に接して頂くと嬉しいです。」
「エリザ・アステリアですわ。皇女だからといって遠慮は無用です。お気軽にお話下さい。」
ほほう、皇子皇女とな。
気の所為か2人共こっちをチラ見したが、気の所為だったことにしておこう。
あまり関わりたくない2人だからな。
「私はカイル・アストレイだ。優秀な者以外は私に近付くな。私の価値が下がる。」
確かミアに教えてもらった四大公爵の最後の1人。
アストレイ公爵家だったはず。
なかなかの美男子。
まあなんというか貴族らしいっちゃあ貴族らしい人だな。
「ロゼッタ・クルーエルよ。よろしく。」
うわ、次僕の番だ。
嫌だなぁ。
でもやらないわけにもいかない。
「マリス・レオンハートです。」
気持ち小さめに発言したのにも関わらず目線が痛い。
先程騒ぎになっていた皇子皇女に見られている。
何もしていないぞ、まだ。
「あれが、試験の時に……」
「オリジナル魔法の……」
ボソボソと僕の話題を出す声が聞こえてくるが全部聞こえていないフリをして座る。
人違いだと思わせよう。
「俺はフェイル・ワーグナーだ!先程のマリスは俺の友達でもある!故に!彼の友達がここにいるのなら俺とも仲良くしてくれ!頼むぞ!」
いらない事をしてくれるなフェイル。
今の発言で更に僕の注目度が上がってしまっただろうが。
「フェイル様と友達らしいぜあいつ。」
「仲良くしておいたいいんじゃないか?」
「上手くやれば公爵家から良くしてもらえるかも……。」
出たよ、ほら。
面倒な事しやがって。
フェイルは僕の方を見て親指を上に向けるグッドの合図を送ってきている。
僕は無視した。
「よーし、これで全員自己紹介は終わったな!次の時間は各々の実力を見たい。休憩時間が終わったら訓練場に集合してくれ。では解散。」
オルバ先生が教室を出ると同時に皆立ち上がる。
真っ先に人が集まっているのは皇子皇女の所だ。
次に人が集まるのは公爵家の者達になる。
僕の横はロゼッタがいる以上ここにいれば、目立つことは必至。
すなわちサッサと訓練場に行ったほうがいいと結論付けて立ち上がると、それを見ていたのかフェイルも立ち上がりこちらに歩いてくる。
「おいマリス。もう行くのか?俺も一緒に行くぞ!」
「あ、ああ。でもフェイルはほら周りの人とも仲良くしたほうがいいんじゃないか?」
「いや構わん!初日だしな。そんなに焦る必要はないだろう。故に今の友達を大事にしたいのだ!」
クソ、何を言っても無駄だろうな。
仕方ないと割り切りフェイルと共に教室を出ようとすると待ったがかかった。
「待ちたまえ君達。」
「え?」
「君が……レオンハートの息子か。」
カイルだ。一番面倒くさそうな人じゃないか。
「なんだカイル。今から俺達は訓練場に行くのだが?」
「フェイル、お前いつの間に友達なんて出来たんだ?こないだまで友達なんて1人も居なかっただろう。」
「やかましい!俺とマリスは既に親友に近しいのだぞ!」
いや、それはフェイルが思っているだけです。
とは言えないが、黙って2人のやり取りを見守る。
「彼と話がしたい。フェイルは先に行っててくれるか。」
「それは無理な相談だな。俺とマリスは一緒に行くと約束したのだ。それを違える訳にはいかん。」
「オリジナル魔法を教えてもらう為か?クックック、独り占めとはズルいではないか。私にも1枚噛ませろ。」
「ならんぞ!カイル!貴様はそもそも男爵など平民と大して変わらんと昔言っていたではないか!マリスは男爵家の者だ。お前と話はさせられん!」
カイルから守ってくれているようだな。
ここは素直にフェイルに感謝しておこう。
「まあいい。マリス、先に公爵家の者を味方に付けるとはなかなか手が早い。しかし私は諦めんぞ。」
それだけ言うと僕らの前から去っていった。
「なんだったのだ奴は。すまぬなマリス。あれと関わるのは辞めておいた方がいい。奴は貴族らしい貴族だ。男爵など顎で使うような人間だ。」
「ああ、なんとなくそんな気はしていたよ。正直助かったよフェイル。」
「むむ!そうであろう!!!俺がいれば安心だぞ!!さあゆくぞ!訓練場に!」
フェイルは熱い男ではあるが、根は良いやつだ。
厄介な相手に絡まれないよう守ってくれるのであれば、友達になっても悪くないかもしれないな。
「あのマリスってやつ、相当フェイル様と仲良いのか?」
「おいおい、尚更俺等もお近づきになったほうがいいじゃねぇか。」
「私もフェイル様と仲良くなりたーい。」
聞こえてくる声が耳に入ってくる。
前言撤回。
フェイルと仲良くするのは危険だな。
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