学園でも目立ちたくない②
「見つけたわよ!マリス!!!」
赤髪が風に揺れ、キツネ目の少女がこちらを見ている。
いつ見てもプリプリしているな。
「あ、ロゼッタさん。おはようございます。」
「ええ、ごきげんよう。じゃないわ!!!何故試験の日アタシを無視して帰ったのよ!」
「何かフェイルと仲良さそうにしてたので邪魔かなーって。」
「む?マリス、俺はこの女と仲が良い訳では無いぞ。むしろライバルとも言える関係だ。」
「そうなのか?でもなんか仲良さそうに見えたけど。」
「ちょっと!アタシを無視して会話しないで頂戴!それに聞き捨てならないわね、ワーグナー公爵家と仲が良いですって?ありえないわね!」
「な?こういうことだ。」
フェイルのわかっただろ?とでも言いたげな顔はムカついたが確かに四大公爵同士ならバチバチやりあっててもおかしくはない。
「まあいいわ。それでマリス貴方のクラスは?」
「人のクラスを聞く時はまず自分から……。」
言い終わるが早いが、ロゼッタが癇癪を起こしだした。
「きぃぃぃぃ!!!またそれなの!?アタシは一級よ!!!これでいいでしょ!貴方は!?」
「一級です。」
「それでいいのよ!いちいちこんな短いやり取りも時間かけさせてくれるわね。」
「はは、ありがとうございます。」
「褒めてないわよ!!!!」
そのやり取りを見ていたフェイルが寂しそうに呟く。
「む、なんだお前達。仲良さそうだな。俺も混ぜてくれ。」
「仲良くはないだろどう見ても。一方的にこの人が突っかかってくるだけだよ。」
「言い方!!!貴方とやり取りしてるとストレスになるわ……先に教室行ってるわよ。行きましょシーラ。」
「はいお姉様。」
気になっていたんだ。
何故か何も喋らずロゼッタの斜め後方で佇んでる女の子がいるなぁとは思った。
お姉様ってことは妹かな?
まあ何にせよお淑やかで可愛い雰囲気だ。
しかし僕の横を通り過ぎる時、それはただの幻想でしかなかったことを分からされてしまった。
「マリス……と言ったわね。次お姉様にふざけた態度を取れば殺す……。」
それだけ小声で呟くとロゼッタの真横に寄り添いながら教室へと向かって行った。
「なあフェイル。」
「なんだ?」
「あの女の子って?」
「む、あれはロゼッタの双子の妹だ。ロゼッタに比べれば何倍もお淑やかで可愛げのある子だぞ。ロゼッタよりお見合いの手紙が多く届いているらしい。」
「へぇぇ。女の子は見かけによらないのかもな。」
さっきの殺意高めの呟きと言い、やっぱり中身は姉妹だなと思ってしまった。
見た目に騙されてはいけない。
そう自分に言い聞かせた。
教室に入るとちらほらと人がいる。
まだみんな揃っていないのだろう、僕も自分の席を探して座る。
運良くフェイルとは席が離れており目立つことは避けられそうだ。
「おい、あんた。」
座って間もなくして頭の上から声をかけられる。
見上げるとまた見たことのない男だ。
「はい?」
「あんた、試験の時オリジナル魔法を披露したやつだろ?」
「そんな事もあったようななかったような……。」
「いやあったじゃねぇか。それどうやったか教えてくれよ。」
きたきた、必ずこういう輩は来ると思っていたんだ。
「あー申し訳ないですけど、あれはグランバード伯爵に教えてもらった魔法で……。」
「嘘つけよ。知ってるぞ、あんたがポロッと自分が作ったと言わんばかりの事を言っちまったって。割と広まってるぜこの話。」
おいおいなんてこったい。
あの時の自分を殴りたい。
駄目だ、もうどうやっても言い逃れできなそうだ。
「あーそのですね、えーと、」
しどろもどろになっていると思わぬ助け舟が出て来た。
「少し煩いですわね、もうじき先生もやってくるのですよ、もう少し慎ましさを覚えたほうがよろしくて?オルランド伯爵家の方。」
「なっ!なんだてめぇ……リスティア様!?いえ何でもないです。静かにします。」
ほう、僕の目の前にいた男を一蹴した女の子が現れたぞ。
もうこれは嫌な予感しかしないな。
「どうも初めまして。魔法創造の知識を持つマリス・レオンハートさん。」
「どうも……。」
ああ、粉になりたい。
何故こうも目立つことばかり起こるのか……。
「申し遅れましたわ、私リスティア・アルバートと申します。まあ四大公爵ですので貴方も知ってはおられるでしょうが、一応ご挨拶ということで。」
出た出た、四大公爵3人目。
緑の長髪に長身の女の子だ。
クールな女性って雰囲気がある。
「先程は面倒な方に絡まれておりましたので、手助けしただけですわ。そんなに警戒なさらないで?」
「警戒なんてそんな……。」
「フフフ、態度で分かりましてよ?」
は~お嬢様だ、この人は本物のお嬢様な気がする。
これぞ貴族令嬢を体現している。
「せっかくのご縁ですわ、少しお話しませんか?」
「いえ、大丈夫です。」
「まあそんな邪険にしないで?貴方の事をもっと知りたいのですよ。」
面倒くさいな。
こんなことなら試験の時普通の魔法使っとけば良かったよ。
地味な魔法を作って調子に乗るからこんな事に……。
「貴方はまだ何か秘密がありそうな気がしますわ、これは私の勘ですけれど。」
鋭いなこの人。
なんか他の公爵より気を付けないといけない気がする。
「あのそろそろ先生来ますし、ご自身の席に戻られた方が良いのでは?」
「それもそうですわね、ではまた後でお話しましょう、マリス君。」
後なんてあるわけないだろ、授業終わったら速攻逃げてやる。
「ふーん貴方リスティアにも興味持たれてるのね。まあそれもそっか同じ歳でオリジナル魔法作れるやつなんて貴方以外見たことないし。」
いきなり横から話し掛けられてビックリした。
僕の横に座っていたのはロゼッタだった。
「げっ。」
「何よ、げっ!って。アタシの隣になれるなんてこんな光栄な事ないわよ?ほら周りを見てみなさい。羨ましそうにしている男子生徒がみんなこっちを見てるわ。」
ロゼッタに促され周りに目を向けると、確かにほとんどの男子生徒がこちらを見ている。
入学初日から目立つ行為は避けたかったなぁ。
「ロゼッタさんって人気なんですね。」
「そりゃあそうでしょ。こんな美少女で尚且つ公爵令嬢よ。あわよくばお近づきになりたい、なんてやつばっかりよ。貴方くらいね避けようとするやつは。」
くそ、早く先生来いよ。
何してるんだよ、早く最初の授業始めてくれ。
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