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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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拉致されても目立ちたくない⑩

「何故ですか!我々も十分戦力になるはずです!!行かせてください!」

帝城の謁見の間でルーザーが皇帝に詰め寄る。

既に王国との戦争は始まっており帝国の主な戦力は戦場へと投入されている。

しかし、ガイウスはグランバード学園の生徒の参加を認めはしなかった。


「父上も魔導大会は見ていたでしょう!私やエリザ、それに魔導探求会のメンバーの実力は大人顔負けだったはず!何故我々を戦場に行かせてくれないのですか!」

「……ここは謁見の間だ。例え我が息子と言えどもここでは陛下と呼べ。」

ガイウスは冷たくルーザーをあしらう。


グランバード学園の生徒は並の兵士よりも実力者揃いであり通例であれば戦争に参加させる事を拒否したりはしないが、今回に限っては王国を滅ぼすつもりであった。

故に子供達に一つの国が滅びゆくさまを見せたくはなかった。


「ならん、お前達はまだ子供である。絶対に許可は出さんぞ。」

「陛下!!ガウェイン殿やキャロル殿は参加したと聞いております、何故生徒によって参加の可否があるのか教えて頂きたいのです。」

「ガウェインは神殿魔導師として参加してもらった。キャロルは自身が領主だ、自領を守る為に戦うのはおかしなことではなかろう?お前達はあくまで学園の生徒、故に参加は認めん。」

ルーザーがどれだけ粘ろうとガイウスは首を縦に振ることはなかった。


謁見の間から追い出されたルーザーはその足で馬車に乗り込みある場所へと向かった。


学園外で集まる時は、もっぱらロゼッタの住む屋敷だ。

もちろんルーザーは変装をしている。


執事に案内されロゼッタの部屋へと案内されると、ルーザー以外は既に全員集まっていた。


「皇子、どうでしたか?」

「……駄目だったよ、やっぱり戦争には参加させないって。」

「うーむ、仕方ない。ここは全員変装して西に向かうべきか……。」

実を言うと、彼らはなんとか自分達でマリスを救出したいと考え、ルーザーに戦争の参加許可を貰いに行ってもらったのだが、残念ながらそううまくは行かなかった。


「陛下に許可が貰えないとなると、下手に動くと不味いわね。命令拒否と同じだわ、まあアタシ達は子供だから当分の間監視を付けられておしまいだと思うけど、皇子と皇女殿下は多分城から出してもらえなくなりそうよね。」

「それは……嫌ですわ。」

エリザは自分がそうなってしまった時を想像したのか、悲しそうに俯いた。


「マリスも面倒くさい事にまきこまれたもんだぜ。」

「まあ仕方ないよ、虹色魔導師なんてバレれば世界各国が欲しがる人材だしさ。」

ジンとミアは呆れたように肩を竦める。

マリスの秘密はいつかバレるだろうと予想していたお陰で呆れるだけであった。


「そもそもアイツがもっと上手く立ち回っていればこんな事にならなかったのよ!!面倒くさいわね!!」

ロゼッタもマリスのマイペース加減にイライラしており、本音を零していた。

そんなロゼッタの怒りを鎮めるのはシーラの役目だ。

好きな紅茶とお菓子を用意し注意を逸らせるとロゼッタはいつの間にか笑顔に戻っていた。

扱いに慣れているなと思ったが口には出さないレイはただ見ているだけであった。



「私にいい考えがあるんだが……。」

すると皇子が真面目な顔付きでこんな事を言い始めた。

「みんな、前にパーティーで出会った商人の娘がいたのを覚えているかい?確か名前は……」

「シェリー・クライブ、クライブ商会の娘ですわね。」

ルーザーに被せるようにロゼッタが言葉を放つ。

ロゼッタは皇子が話そうとしている提案は何となく予想がついていた。


「そう、シェリーだ。彼女に協力して貰って内密に帝国西部へと行けないかなと思ってね。」

「いい考えですわお兄様!」


ルーザーの提案はこうだ。

シェリーのような大商人の娘であれば自分の馬車を持っている。

その馬車に乗せてもらい変装した彼らは戦場へと赴く。

表向きは、シェリーが変装した彼らに気付かず戦争へ参加する一般兵だと思い込み帝国西部へと送り出す。

皇帝にバレたとしてもあくまで、シェリーは気付かなかったと突き通せば処罰される事はないだろう。


この提案に全員が賛成した。

というよりもはやそれしか手段はなかったからだ。


実家の馬車を使えば簡単に特定されてしまうし、かと言ってその辺の乗り合い馬車に乗り込むのも変装がバレるリスクが付き纏う。


ルーザーとエリザには護衛が常に控えており下手に動けば皇帝にまで伝わってしまうと、ロゼッタとシーラがシェリーの下へと向かうことにした。




クライブ商会の扉を開けると、人混みで溢れていた。

戦争が始まれば物資の流れは滞ってしまう。

それならば今のうちに買い溜めしておこうと、客が殺到していたからだった。


「凄い人の数ね……ちょっとそこの、店員さん。」

ロゼッタは近くで客の相手をしていた店員を呼ぶと、その店員はクルーエル家の者だと気づいたのか直ぐに責任者らしき人物を連れてきた。


「申し訳ございません!ただいま人で溢れかえっておりまして来店していたことに気付きませんでした……。」

「いいえ、それくらい構わないわ。それよりもVIPルームへと通してくれるかしら?ちょっとシェリーに話したい事があってね。」

ロゼッタがそう言うと商談かと思ったのか、責任者はロゼッタとシーラを案内し奥まった個室へと連れて行ってくれた。


「こちらでお待ちくださいませ、直ぐに副会長を呼んで参ります。」

腰を90度に曲げ礼をすると責任者は部屋から出て行った。


しばらくシーラと待っているとドタバタと走る音が聞こえ扉が勢いよく開かれた。


「お、お待たせして申し訳ございません!!クライブ商会副会長のシェリー・クライブです!」

「来たわね、じゃあちょっと話をしましょうか。」

ロゼッタの雰囲気から商談とはとても思えず、シェリーは震えたまま目の前のソファーへと掛けた。


何を言われるのだろうと、戦々恐々であるシェリーであったが、ロゼッタの次の言葉で呆けてしまった。

「貴方に頼みたい事があるんだけど、いいかしら?」



クルーエル公爵家からの頼み事だ。

光栄であると同時にシェリーに箔も付く。

断る理由などなく、内容も聞かず承諾する。

「勿論です!!……えと、どんな頼み事でしょうか?」


ロゼッタとシーラは顔を見合わせた後シェリーの方を向き小さな声で呟いた。


「パーティーで出会った面子を覚えているかしら?あの時のメンバーを全員内密に帝国西部へと送り届けて欲しいのよ。」


シェリーは内容も聞かず承諾してしまった事を後悔した。

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