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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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拉致されても目立ちたくない①

マリスが行方を眩ましてから3日。

魔法探求会の面々は帝城のある一室に集められていた。

そこにはなぜか聖女もいた。


集められた理由は全員分かっていた。

マリスの事だ。

しかしガウェインやアスカもその場にいた。


ガイウス皇帝が入室すると全員即座に立ち上がるが、それを手で制し全員を座らせた。

「よい、ここは公式の場ではないのでな。楽にしてくれ。」


全員が席に着いた事を確認するとガイウスが重い口を開いた。

「集まってもらったのは他でもない、マリスの事だ。もう勘づいている者もいるだろうがここにいる者は全員マリスの秘密を知っている者だけだ。」

ロゼッタ達もまさか皇帝の口からマリスの事を話すなど思ってもみなかった為目を見開いた。

なぜ皇帝が知っているのか、などとは誰も言わない。

ガイン辺境伯=ガイウス皇帝陛下だと理解しているからだ。


「一応全員顔は覚えておいてくれ。こっち側に座っているのがマリスが部長を務める魔法探求会のメンバー、こっちにいるのがアスカ、ガウェイン、ナターシャ、ビストリオ法国の聖女だ。ここにはいないがオルバ、ジリアン、それにクレイとアインもマリスの事は知っている。」

アスカがいる事に違和感を覚えていたロゼッタ達は動揺していた。

何故知っているのか。

いや、それよりも何故アスカが知っているという事を皇帝陛下が知っていたのかだ。


そんな彼らのリアクションを見ていたアスカが口を開く。

「言ってなかったよね?ワタシこう見えても十二神なんだー!」

「十二神……だと?」

フェイルはこんなふざけた奴が帝国最高峰の戦力だということを認めたくなかった。


「まあワタシは元々マリスに近付いて仲良くしろよーっていう任務を受けててね、ほら、マリスって虹色魔導師じゃん?だから帝国としては手放したくなかったらしくて。」

皇帝の前でそんな内密な話をポロポロ喋ってもいいのかと、誰もが突っ込みたかったが飲み込んだ。


「アスカ……お前はもう黙っていなさい。」

「はぁーい。」

これ以上アスカを野放しにすると何を話し出すか分かったものではなく、遂にはガイウスが彼女の口を閉じさせた。


「……話を戻すが、ここにいる面子がマリスの捜索に尽力してもらう仲間達だ。少ないと思うかもしれんが、あまり人を増やしすぎて彼の秘密が漏れては困るからな。」

「話は分かりましたが、あの、何故聖女様がここにおられるのでしょうか?」

フェイルが一番気になっていた事を聞くと、ガイウスより先に聖女が口を開いた。


「私は……マリス様の魔色が見えます。だから……大会が終われば、顔合わせ……させて頂くつもりでした。」

「そうなのだ、会って話したいと言うから打ち上げという名目で顔合わせの機会を作ろうとしていたのだがな……。」


悲しそうに俯く聖女は、もはやこの世の者ではないのではなかろうかといわんばかりの美しさであった。

儚げで、触れれば消えてしまいそうな、そんな印象を受けたフェイルら男子組は全員ソッポを向いた。


「それでだが、マリス捜索隊のリーダーはガウェインに努めてもらいたいのだ。」

「……何故、と理由をお聞きしても?」

ガウェインが敬語を使っている様子を初めて見た彼らはとても驚いた。

いつもぶっきらぼうな印象があったが、流石に皇帝の前ではいつもの不機嫌な顔は鳴りを潜めるらしい。


「理由は単純な事だ。この中で一番戦力になるのはアスカだが……任せられんだろう?次点で強いのはお前だ。だから任せる。」

「……なるほど、理解しました。謹んで拝命致します。」

みんなもウンウンと頷くがアスカだけが納得いってないのか不機嫌だった。


「出来れば余も動きたかったが流石に皇帝の地位にいる者がたった1人の為に動くわけにもいかぬ。許してくれ。」

頭を下げる陛下を初めて見たのか全員が動揺する。

ボケっと何も考えていないのはアスカだけであった。


「では、頼んだぞ諸君。」

それだけ言い残して皇帝が部屋を出ると、全員ホッとため息を吐いた。

国の頂点と同じ空間にいる事すら殆どないのに、会話までしてしまった、とフェイルは感激で泣いていた。


「さて、じゃあガウェイン先輩、指示をお願いします。」

ロゼッタは腕を組んで目を瞑っている男に声を掛けた。

ゆっくり目を開くとロゼッタを見ずに話しだした。


「……確かに俺がリーダーとは言われたが指揮には向いていない。お前の方が向いてるだろ。戦闘時に関しては俺が指揮を取るが他の事は任せる。」

そう言われてしまうと何も言えずロゼッタは困り顔を見せた。

気の強い彼女でも流石に先輩に対しては強く出れないようだった。


「分かりました。じゃあいざという時はお願いしますよガウェイン先輩。」

「……あとその取ってつけたかのような先輩はいらん。」

「じゃあ、ガウェインさんと呼ばせて頂きますわ。」


こうして彼らはマリスが無事である事を祈りながら作戦会議を始めるのであった。




一方マリスはと言うと既に目的地へと到着しており、監禁されていた。


辺りを見回すとレンガ造りの壁に囲われており、窓もない。

唯一の扉は鉄製で鍵をかけられている。

何より一番厄介だったのは魔法が使えない事であった。


「ダメだな、何をやっても魔法が発動しない。」

マリスは周囲を見回しながら1人呟く。


魔導師対策として、魔法を使えなくさせる魔道具が設置されておりここに閉じ込められた者は力づくでは出られないようになっていた。


鈍感で一般常識から外れた彼であっても今の状況は明らかにおかしいと気付いている。


「これ……ロゼッタの家じゃ……ないよなぁ。あぁ間違えて馬車に乗っちゃったみたいだ。ロゼッタ怒ってるだろうな。」

マリスは呑気に考えているが今や城ではマリス救出の作戦会議が行われている。


魔法が使えなければマリスはただの学生でしかない。

フェイルのように体術や剣術など習得しておらず、肉弾戦は小さい子供にすら負けるだろう。


しばらくボケっと天井を眺めていると、扉が開いた。

部屋に入ってきたのは見たこともない男性だった。


「すまないねマリス君。手荒な真似はしたくなかったので直ぐにこの部屋へと入ってもらったのだよ。」

「ああ、まあ別にいいですけど。それよりここは何処なんですか?」

割と丁寧な印象の男性にマリスは問いかける。

一番疑問になっていることだ。



「ああ、すまない。伝えてなかったか。ここはハルマスク王国北部にある我が家、スプリガン家の地下だ。」

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