愛と魔法のご馳走作り
もともと材木を運んでいた腕力ですから、重たい野菜もあっという間に洗い上げてしまうし、手際も良いので瞬く間に大きな鍋いっぱいのおいしいスープが出来てしまうのでした。
野菜を煮ているあいだに、ブルーナはパンを焼きます。
大量の小麦粉も、その大きな手で混ぜられ、こねられると、すぐに形になり、どんどん釜に入れられ、パンが山のように出来ました。
このパンがまたおいしくて、みんなの大好物になりました。
スープに付けて食べたり、蜂蜜を塗ったり、肉を挟んで食べたりと、いろんな楽しみ方がありました。
ブルーナが料理人になってからというもの、作業所のパワーは倍増。それまでより、かなり多くの材木が出荷されるようになり、近隣の森では一番になりました。
急に成績が良くなった作業所を、その地方を治める代官が視察に来ることになりました。
たくさんの御付きを連れた代官は、現場を少しだけ見ました。
こんなところにいたら服が汚れてしまうという態度でした。
そして「食堂があるそうだね?」と言いました。
「このあたりの食堂が束になっても叶わないほど美味いという噂だが」
現場の親方は(そういうことか)と納得して、大喜びでブルーナのところへと案内しました。
「代官さまがいらっしゃったぞ、ブルーナ。たくさん美味しいのをお出ししろ」
親方は大声で命じました。
その声には誇りのようなものが混じっていました。
ブルーナは「はい」と言い、代官に頭を下げました。
ブルーナはまず、パンとスープを出しました。
代官はひと口食べると、これ以上大きくならないほど目を開き、
「信じられない!うまい!」
と言いながら、あっという間に平らげました。
野菜のスープは肉の脂で香ばしく炒められ、白く濁り、とろりとして、甘みさえ感じられます。
パンは小麦の香りが瑞々しく、外側がパリッとしていて、中身は雲のようにふんわりです。
「おかわりをいただきたい」
代官は、絶対に!という、口調で言いました。
それもぺろりと食べてしまい、さらにもう一度おかわりをしようとすると、
「代官様、今お肉が出来上がりましたので、まずはそちらをどうぞ」
とブルーナが止めました。
「う…あまりに美味いので、ついな…」
ブルーナがにこにこしながら、骨つき肉をこんがりと焼いたのに、つぶしたじゃがいもをバターであえたものをたっぷり乗せてやって来ました。
代官は目を輝かせ、お皿を見つめ、匂いを楽しみ、そして凄い勢いで食べ始めました。そして、やっぱりスープとパンを少しだけ頼むと言いました。
最後に「りんごの甘いものです」と、ブルーナがお茶と共に持ってきたものを見て、代官は満面の笑みを浮かべました。
りんごは黄金色に煮られていて、大きめなビスケットの上に乗っていました。
りんごもお茶もおかわりして、やっと満足した代官は、
「躍進の原因がわかったぞ。理想的な現場と、素晴らしい料理人だ。今後も励みたまえ」
と親方に言葉をかけ、ご機嫌で去ってゆきました。