愛と魔法のご馳走作り
昔々、森が広がる豊かな国がありました。
王様も王妃様もたいへん優れた資質の方々で、国の民たちはたいそう平和に暮らしていました。
美しい王妃様や、立派な王様のいる華やかな宮廷は、国民の自慢でした。誰もが、会いたければいつでも、王様や王妃様に会えました。
もう一つ自慢なのが、凄腕の王宮の料理人たちでした。
中でも有名なのが、「木こりの料理人」と呼ばれる、ある女性でした。
彼女の料理は、国内外の貴族や大使たちを唸らせ、絶賛させ、うちの国にもこんな料理人が欲しいと羨ましがらせました。
誰も食べたことがない、見たことがないような一皿を作りあげる彼女は、この国の威信をますます高める力がありました。
その料理人は、ブルーナ。
なぜ「木こり」なのかって?
本当に、木こりをしていたからです。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ブルーナは10才のときには、もう170センチ以上もあり、その頃には森の作業所に働きに行かされました。彼女はあまりこの時の話はしません。
その作業所で、倒された巨木を運んだり、切ったりするのを、男性たちに混じってやりました。
大の男がくたくたに疲れて、足腰が立たなくなるような仕事もどんどんやったのです。
女など子供のブルーナと、洗濯するのに雇われたり、食堂で料理をする、おばさんやお婆さんしかいませんでした。
ある日、作業所の食事係のおばさんが大怪我をしてしまい、ブルーナが代わりに食堂に行かされました。
その料理を食べた全員が、言葉も出ないほど驚きました。
「うまい!なんだこれは?」
「材料はいつもと同じなのに?」
「魔法のようだ!」
「こんな美味いもん、食ったことねえぞ!」
食堂のみんなが口々に叫びました。
それからブルーナは、辛い現場を離れて、料理だけをするようになったのです。