表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/62

お風呂ハプニング。

…前回のあらすじ…


お腹が鳴ってとても恥ずかしかった。

マスターと一緒にご飯を食べた。とても美味しかった。

マスターや私は、不老ではあるが不死ではないらしい。

その後、私が隠れていたのとは別の部屋へ案内され、此処が私の部屋になるといわれた。

先ほどの客間よりも少し広くて、部屋の奥に二つ扉がついているのが見えた。

マスターに尋ねると、お風呂とお手洗いの扉だと教えてくれた。


「疲れてるだろうし、とりあえずお風呂にでも入って、今日はもう休むといいよ」

「ありがとうございます」

人形に指示を出してあるから、お風呂はもう沸いていると後押しされ、私はマスターに頭を下げた。

「僕の部屋は隣だから、何かあったら遠慮なく声をかけて」

「はい」

マスターの言葉に頷くと、彼は部屋の外に出る。


「それじゃ、お休み」

「お休みなさい」

挨拶を交わすと、マスターは静かにドアを閉めた。


他にすることも無いので、私は早速浴室へ向かった。

脱衣所には既に着替え一式が準備されていて、ホテルみたいだなぁと思いつつ服を脱いで籠に入れる。

そのままタオルを一枚持って浴室への扉を開けた。


湯船にはお湯がたっぷり張ってあり、そこからの湯気で浴室は白く煙っていた。

広い浴室に落ち着かない気持ちになりながらも一歩踏み出したとき、視界に動くものが入って反射的にそちらを向く。

…そして固まった。


誰も居ないはずの浴室、煙る視界の向こう側に明らかに誰かが居るのだ。

湯気に溶け込みそうな白い髪に、ぼんやりと浮かび上がるような薄紅色の瞳をした誰かもまた、こちらを見詰めていた。


自分が悲鳴を上げていると分かったのは、浴室の反響で増幅された自分の声を頭で煩いと認識できた時だった。

人間、本当に怖いときには反射的に声が出るのかもしれない。あ、もう人間じゃなかったんだったっけ。


…なんて考えている私は冷静に思えるかもしれないけれど、実際のところは反射的に浴室を走り出て、脱衣所でうずくまっていたりする訳なんですけどね。

つまり、怖さのあまり現実逃避をしていたというのが本当のところだったりする。


「祈、どうしたの?悲鳴が聞こえたけど何かあった・・・?」

声が聞こえて顔を上げると、マスターが今まさに部屋からの扉を開けてこちらに入って来るところだった。

マスターと目が合う。

マスターは一瞬目を丸くしたが、そのまま流れるような動作で棚からバスタオルを取って私にかけてくれる。


・・・そこで漸く、私は自分がタオルを一枚抱えたままでしゃがみこんでいるという事に思い至った。


マスターを直視できなくて視線が泳ぐ。

自分の状態や失態で顔が熱いし、色々と考えることがあって動悸が凄い。


「あの、マスター、あの」

「大丈夫だよ、落ち着いて」


しどろもどろな私をマスターが優しく宥めた。

そうだ。浴室にいる不審者のことを言わないと。

緊急性としてはそちらの方が上だ。

・・・裸を見られたかどうかは、そのあとでゆっくり考えよう。


「よ、浴室に知らない人が居るんです。それで吃驚して・・・」

私の発言に、マスターは険しい表情になる。

「分かった、見てくるよ。祈はここでじっとしていて」

「はい」


マスターが浴室に入るの見届けてから、私はかけられたタオルを手早く自分の身体に巻きつけた。

立ち上がり、恐るおそる浴室へ声をかける。


「あの、大丈夫ですか・・・?」

「うん。誰も居ないみたい」

私の呼びかけから一泊置いて、浴室からぼんやり反響するマスターの声がする。

入ってきても大丈夫だよ。と言われ、私もゆっくりと浴室へ踏み込んだ。


「隠れるような場所もないし、少なくとも今此処には居ないようだね」

「そうですか、ありがとうございました。良かった・・・」

私は漸く一息つく。


「ちなみに、何処に居たの?」

「えぇと、こっちの方でした」


マスターから尋ねられて、私は白い人が立っていた方向を向きながら指差した。

・・・そして固まった。


結論から言うと、先ほどまでの騒ぎの謎は全て解決した。


私が指差した先にはマスターが居た。

否、居た。と言うのは少し御幣がある。

マスターは私の隣に立っているのだから。


だからより正確に言うと、そこにはマスターが映っていた。

そしてその隣には・・・先ほどの白い人が立っていた。

「えっ・・・」

どうやら、脳が処理できる情報量を超えてしまったらしく、私は二の句が告げなくなった。


「・・・もしかして、鏡だって分からなかったの?」


マスターが私の様子を伺いながら訪ねてくる。

「だって、私じゃ、ないですよね・・・?」

漸く発言できるようになったものの、未だに状況が理解できない。

否、何が起こっているかの理解は出来るのだが、上手く飲み込めない。


もう一度鏡を見る。

私と思われるその人は、その薄紅色の瞳を軽く見開き、髪色と同じくらいの顔面蒼白で佇んでいた。

良くあるお風呂ハプニングを書いてみたかったんです!

でも書き終わったら私の思っているお風呂ハプニングとは違ってしまったような…これだとお風呂でばったり!どころかお風呂でどっきり!に近いですね…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ