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何事も程々がいちばん。

大きめのどんぶり二つにご飯を盛って、お鍋の具を半分ずつ分けてかける。

最後にさっと湯がいた三つ葉を飾れば完成だ。

三つ葉、嫌いな人もいるんだけど、私は高級感と言うか、上品な味になるから凄く好き。

クロカゲも好きになってくれるといいなぁ。


「はい出来たよ。どうぞ」

「おう!ありがとな、姉貴!」


いただきますをしてまずはそのまま一口。

ふっくらした鶏肉に、味のしみ込んだ玉ねぎ、そして半熟のとろとろふわふわの卵が最高!

その後三つ葉と一緒に食べると、また違った上品な味わいになって二度美味しい。


目の前のクロカゲが無言なので、どうしたのかな?と思って見てみると、彼は一心不乱にもぐもぐ口を動かしていた。

「めっちゃ美味い!いくらでも食べられそうだ!」

香茶を飲んで一息ついたのか、クロカゲが満足そうにそう言う。

「気に入って貰えて良かった。三つ葉、大丈夫だった?」

「上の緑の葉っぱのことか?何か独特の味がしたけど、一緒に食べるとそれはそれで美味かったぜ」

「良かった」


三つ葉も含めて気に入って貰えて安心する。

苦手だったらどうしようと思ってお吸い物は作らなかったんだけど、次回は一緒に出してもいいかもしれない。


私も少し遅れて食べ終わって片づけをしようとすると、クロカゲがそれを制した。

「姉貴が作ってくれたから、片づけはおれがやるよ。今日も色々動いて疲れただろ?姉貴は休んでな」

「え、いいの?」

「どうせこの後何か作業するつもりなんだろ?今のうちにゆっくりしとけよ」

ニヤリと笑ってそう言って、さっと目の前の食器をさらっていったので、私は苦笑する。

「…バレてたか。ありがと、クロカゲ」

「そりゃーな。リースの仕上げ、やりたそうにしてただろ。じゃぁ、すこしは休んどけよー」

「はーい」


台所に歩いていく後ろ姿に返事をして、椅子に座り直す。

クロカゲのご厚意に有難く甘えることにして、私は手元の香茶をゆっくりと飲んだ。



クロカゲがお片付けしてくれている間ゆっくり休んで、その後はお楽しみの虫よけリース仕上げ作業!

お礼を伝えてから書斎で作業すると話すと、一緒に行くと言われたのでクロカゲと書斎へ移動する。


クロカゲは後ろのソファに座って私の作業を見ていることに決めたようだ。

これからの作業はそんなに肯定も多くないし、私もクロカゲと雑談を挟みながらのんびりやっていくことにする。


まず、昼間採取してきたアルクスの葉と実を別々にして、実の方をすり鉢へ。

この実を磨り潰してから煮詰めた液にリースを漬けると、さらに虫よけ効果を高くできるみたい。

図鑑で調べたところ、アルクスの実は緑から黄色、橙へ熟していくらしいんだけど、どの色でも虫よけ効果はあるので、いつ採取しても大丈夫みたい。

ただ、緑の時は結構硬くてすり潰すのは難しいので、刻んで煮詰める方法もあると書いてあった。

幸いこの実は黄色くてある程度柔らかいので、すり潰してから煮詰めていく方法で行こうと思う。


一掴み分を磨り潰し始めると、アルクスの実から独特な匂いがしてきた。

蔦植物のスッとする感じとはまた違って、消毒液のような、そこに刈りたての草の香りが混じったような、不思議な匂いだ。


「何か不思議な匂いがするな」

暫くして、後ろのクロカゲも匂いに気が付いたらしくそう言ってくる。

「ね。…嫌な匂いじゃないんだけど、流石に近くでずっと嗅いでると頭が痛くなりそう」

保健室みたいな清潔感のありそうな感じの匂いは好きなんだけど、すり潰してるからなのか、匂いの濃度が凄い。


コレ、煮詰めたらどうなっちゃうんだろう…。

窓、開けた方がいいかなぁ…?


「…大丈夫か、姉貴?窓開けるぞ」

磨り潰し終わったものを鍋に入れていると、私の考えていることが伝わったのか、クロカゲが窓を開けてくれた。

窓から爽やかな夜風が入ってきて、一瞬で部屋の匂いがかなり薄まった気がする。


「ありがとう。煮詰めたら更に凄いことになりそうだもんね」

「湯気からかなりの匂いがきそうだもんな。廊下とかには行かないようにそっちの扉は閉めとくぞ」

そう言って、次は廊下に続くドアを閉める。

「あ、そうだよね…!気づいてなかった…本当ありがとうクロカゲ」

「おう。混ぜてる間に気分悪くなったら言えよ。変わるからさ」

魔力調合じゃないから大丈夫だろ?と言われて頷く。

「うん。でもクロカゲも無理しないでね」

「分かってるって」


結論から言うと、それはそれは凄い匂いだった。

鍋から立ち上る湯気に乗って匂いが部屋中に充満しているみたいで、私もクロカゲもマスクをつけたりしたけれど、それでも全然効果がない。

匂いの嗅ぎすぎで軽い頭痛を覚える。

悪臭、という訳ではないんだけれど、いい匂いでも度が過ぎるとキツイというか、何と言うか。


…例えるなら、香水売り場に長くいた時の感じに似てる。

ブックマークしてくださった方がいらっしゃいました!

ありがとうございますー♪

凄く嬉しいです!こらからもよろしくお願いします!!


…おまけ そのにじゅうに…

◼️お料理紹介◼️


◯親子丼◯

スライスした玉ねぎと一口大に切った鶏肉を、醤油、砂糖、お酒、だし汁を混ぜた割り下で煮る。

煮立ってきたところに、玉子3個をボールに割って軽くほぐしたものの三分の二を流し入れる。

固まってきたら、最後の三分の一を流して火を止めて、少し蒸らして半熟にしたら完成。

最後にお好みで三つ葉を散らすと彩りも綺麗になる。



クロカゲ:そう言えば、何で卵を2回に分けて入れたんだ?


イノリ:最後に追加で溶き卵を入れると、半熟の所と火が入ってる所がいい感じの割合になってふんわりトロトロの親子丼になるんだよ。


クロカゲ:なるほどな!だからしっかり煮てたのに半熟だったのかー。色々考えられてるんだな。


イノリ:ねー。私もその方法を知って、なるほどなー!って思ったもん。


クロカゲ:そう言えば、そういう知識って姉貴はどこで知るんだ?


イノリ:お母さんとかおばあちゃんから聞いたり、テレビとかインターネットで知ったりかなぁ。


クロカゲ:テレビとかインターネットって、あの箱みたいな奴か。姉貴の世界はいろんな方法で情報を得られるんだな。凄いよなー。こっちじゃそうはいかねーし。


イノリ:確かにそうだよね。こっちだと本とか、誰かに聞いたりとかだし。そう考えると、知りたい情報が直ぐに手に入るって、凄い事だったんだなぁ…。


クロカゲ:だろ?だから姉貴の知識って、結構貴重だと思うんだよな。


イノリ:うーん…私の知識っていっても、興味のある分野に偏っちゃってるし、貴重だとか、役に立てるかとかは分からないんだけどね(笑)


クロカゲ:でもうまい料理沢山作ってくれるだろ?おれにはそれだけでも凄い事だと思うぜ。


イノリ:ありがとう,そう言ってもらえると嬉しいな。これからも色々作っていくね!


クロカゲ:楽しみにしてるぜ!宜しくな!

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