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私の名前。

…前回のあらすじ…


空き部屋に逃げ込んだけれどあっさりマスターに見つかった。彼のことは生みの親と言う認識も持っていて、とても混乱する。

「落ち着いた?」

「・・・はい」

先ほどと同じ客間で、私とマスターは椅子に向かい合って座っていた。

テーブルの上には白いティーカップがそれぞれの前に置かれていて、注がれた琥珀色の飲み物が湯気を立てている。

マスターが持ってきてくれたものだ。


「キミがそんなに混乱して追い詰められているなんて思わなかったんだ。・・・ごめんね」

「いえ・・・」

何を話していいか分からず、私の返答は歯切れが悪い。

それに気を悪くした様子も無く、マスターは静かに笑って私を見詰める。


「キミが何に混乱したり、恐怖しているのか、出来れば話してほしい。理由は半分くらい、分かってはいるんだけどね」

それでも、確認しておきたいんだ。とマスターは続けた。

その表情がやっぱり悲しそうに見えたから、私は逃げずに話そうと決めた。


「分かりました。・・・その前に、幾つかお聞きしてもいいですか?」

「勿論」

「私がマスターとお呼びしたとき、本当は、違う言葉を言おうと思ったんです。でも、的確ではないと思って止めました。それでも、今こうして話していると、やっぱり間違いではないような気がして・・・。色々と語弊があるかもしれないですが・・・マスターは、私の『お母さん』なんですか?」


私が言葉を捜しながら説明するのを静かに聞いていたマスターは、しかし最後の一言で目を丸くして、そして笑った。

「ふふっ。・・・ごめん、気を悪くしないで。ちょっと意外な話だったから。キミは、中々面白い見方をするね」

でも、間違ってはいないよ。と続ける。


「簡単に説明すると、キミは、キミの身体に僕の血を入れて創ったんだ。だから、僕が血を分けた肉親で、生みの親っていうのは間違いない。勿論、より的確に表現するなら、僕はキミの母でもあり、父でもあるってことになるけどね。・・・何となく分かった?」

「はい。・・・それから、マスターのことは、マスターとお呼びするということでいいのでしょうか?」

マスターは次の質問には考える素振りを見せた。


「そうだな・・・キミが呼びやすいように呼んでくれていいんだけど。そういえば、自己紹介もまだだったね。僕は柊雪人(ヒイラギ ユキト)。雪人が名前だから、そう呼んでくれても構わない」

「ええと・・・」

マスターはそう言ってくれたけれど、私は何となく名前で呼ぶことに躊躇した。

自分の親を名前呼びにするような抵抗があるのだ。


私の様子でそれを察したのか、マスターは苦笑する。

「呼びにくければマスターのままでいいよ。呼びたくなったら好きに変えればいい」

「分かりました」


次の質問に移ろうかと悩んでいると、マスターが先に口を開いた。

「キミの名前を考えていたんだけど、伝え損ねていたから、先に話してもいい?」

そう言われて、名前をすっかり意識していなかったと言うことに気付く。


「はい。名前・・・ですか」


殺される前の私の名前を、私はきちんと覚えている。

でも、それを此処で名乗るのは違うのだと頭で分かっていたから、私は名前を意識しなかったし、マスターに名乗らなかったのだと思う。


マスターは静かに笑った。

私の考えていることがある程度推測出来ているだろう事が雰囲気で分かったが、彼は謝らなかった。


「キミの名前は(イノリ)。祈として、生きていって欲しい」


それは、死刑宣告にも、祝福の言葉にも聞こえた。

それを受け入れるということは、以前の自分の終わりを完全に受け入れるということでもあるように思われた。

此処で終わらせるのかと言う自分と、頷いたほうが言いと言う自分。


直ぐに言葉が出ない私を見て、マスターは続ける。

「以前のキミと新しいキミが一緒に居るから、今のキミがある。その名前は新しいキミに付けたものじゃなくて、今のキミに付けたものだ。・・・僕はこれ以上、キミの過去を奪うつもりは無いよ」

本当に気持ちを見透かされたようで、一瞬息が詰まる。


この人は、後悔しているのだろうか。私を、殺したことを。

この人は、願っているのだろうか。私が、生きることを。


それを、私は確かめたい。

だから、頷くことにした。


「はい。分かりました。・・・どうか祈とお呼び下さい、マスター」

ようやく機能が少しづつ分かって来ました!

アクセス数が分かるって凄いですね…!

見るたびにドキドキしています。

ブックマークして下さった方がいらっしゃることも分かりました!本当に嬉しいです!!

有難うございます!!これからも頑張ります…!!

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