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香辛料と不思議な雑貨屋さん。

「クロカゲ、これ位の夕日なら大丈夫?」

念のために確認すると、彼はニッと笑う。

「ああ。寧ろこの時間帯位からは調子がいいんだ。何処かで夕飯の買い物でもして帰ろうぜ」

「そうだね。クロカゲが大丈夫ならお買い物して帰ろっか。今日は何食べたい?」

「断然肉だな!肉なら何でもいい」

力一杯そう言われると逆に困ってしまう。

献立において何でもいいは難題なのだ。

いや、肉っていうリクエストがあるだけまだマシなのかもしれないけど…。


「うーん…」

自分の頭の中にあるレシピを思い出しながら考える。


大きいお肉を買ってきてステーキとか?

あ、でもステーキは何か特別感があるから、またの機会に豪華に出す方がいいかも。

とんかつ…はこの前揚げ物食べたから、これもしばらくしてからの方がいいよね。健康的に。

あとはハンバーグかな?

うん、いいかも!

ハンバーグだって立派なお肉料理だよね。

合い挽き肉とたっぷりの玉ねぎ!

付け合わせの野菜も合わせれば栄養もバッチリ。決まり!


「ハンバーグはどう?」

私の問いかけに対して、クロカゲはぽかんとした顔をした。

「ハンバーグってなんだ?」

そう逆に問いかけられて吃驚する。


「クロカゲハンバーグ知らないの?」

「見たことも聞いたこともねぇな。それって何の肉なんだ?」

「えぇ!?」


流石に反対はされないだろうと踏んではいたけれど、まさか。

まさかハンバーグを知らないなんて。


子供が好きな料理でベスト5には入りそうな勢いの料理なのに。

あ、クロカゲは子供じゃないんだけど、まぁそれは置いておいて。

私としては物凄く一般的な料理だから、これには驚くしかない。


「そんなに驚くことか?しょうがねぇだろ、今まで料理なんてそんなに食って来なかったし」

「え、そうなの?」

「ああ。妖魔も魔力さえあれば死ぬことないしな。足りなくなったら食うけど、別に料理じゃないといけないって訳じゃねーし」

「そうだったんだ…」

「それで、ハンバーグって何なんだよ?」


クロカゲに聞かれて、簡単にハンバーグの説明をする。

この世界にソースの材料がどれくらい流通しているのか分からなかったので、その辺りは割愛した。


「へぇ。でもひき肉に玉ねぎなんて混ぜたら不味くならないか?肉料理っぽくなさそうだけど」

「そこは大丈夫。凄く美味しいよ」

そう言うと、クロカゲは楽しそうに笑った。

「姉貴がそういうなら期待しておくか。よし、材料買いに行こーぜ」

「うん、じゃぁまずは八百屋さんからね」

「おう」


八百屋さんで玉ねぎ、マッシュルーム、付け合わせの人参とブロッコリーを買って、お肉屋さんで豚と牛の合い挽き肉を買う。

ハンバーグソースに使うトマトソースは八百屋さんに売っていたし、ウスターソースはなかったけれど、お肉屋さんにとんかつ用のソースが売っていたので、代用品としてそちらを購入した。

それから、酒屋さんで小さいボトルのワインを1本買って、あとはアレがあったらいいなぁと思いつつ例の雑貨屋さんへ行く。


「やぁいらっしゃい、イノリちゃん」

もう顔なじみになりつつある店主ーーーゼンさんが片手をあげて挨拶してくれる。

「こんにちは。あの、香辛料とかありますか?粉末のナツメグがあったら欲しいんですけど」

私の突然の質問に、ゼンさんはいつものように頷いた。

「ナツメグだね、あるよ」


私が欲しいもの、それは挽き肉料理によく使われる香辛料のナツメグである。

お肉の臭みを取るのに使われる香辛料で、独特の香りがするものだ。

これがないと作れない!という訳ではないんだけど、入れると高級感が出るというか、風味が更に良くなるというか。

お店で食べるハンバーグのような味になるので、私は入れて作ることが多い。

ただ、入れないほうが美味しい!って言う意見も聞いたことがあるので、これは好みが分かれるのかもしれない。

今回はクロカゲの好みが分からないから、小さめのハンバーグを二つずつにして、一つはナツメグ入り、もう一つはなしにしてみようかなと思う。


いつものようにお店の奥に行ったゼンさんは数分足らずで戻ってきて、カウンターの上に小さな小瓶を置いた。

…ここに来ておいてなんだけど、そして毎回思うんだけど、このお店って雑貨屋さんの筈だよね?

もしかして、置いてないものなんて無いんじゃないだろうか。


「ありがとうございます。このお店、本当に何でもありますよね」

置いてないものなんてないんじゃ…と続けると、ゼンさんは笑った。

「ははは。まさか。他店で取り扱っているものは置いてないよ。だってそしたらお店同士で競合しちゃうでしょ?」

「そうですよねー…って、その言い方だと、何でも置こうと思えば置けるみたいに聞こえちゃうんですけど…」

恐るおそるそう尋ねると、ゼンさんはモノクルの奥の瞳を楽しそうに細めた。


「まぁ、他のお店になかったらうちにあるよ、とだけ言っておこうかな」


ブックマークしてくださった方がいらっしゃいました!

有難うございます!感謝です…!!

これからも宜しくお願いしますー♪


…おまけ そのなな…

◼️お料理紹介◼️


◯番外編 雪人の香茶◯

鮮やかな緑色をしていて、爽やかな口当たり。

魔力の補給効率を重視しているが、薬っぽい感じはなく飲みやすい。

調合方法は不明のままなので材料は分からないが、茶葉の見た目から緑茶がベースになっていると思われる。

そのため、ミルクや砂糖などは入れずにストレートで飲むことが前提。


イノリ:うちで毎回飲んでる香茶だね。緑茶ベースなのは分かるんだけど、他にも色々入ってるみたい。色もそんなに濃くなくて、見た目もすごく綺麗なお茶だよ。魔力補給の関係もあるのかも知れないけど、凄く美味しいから私は好きだなー。


クロカゲ:確かに美味いよな。香茶なんて初めて飲んだけど、おれも好きだ。


イノリ:いつもはホットで飲んでるけど、冷やして飲んでも凄く美味しそうだよね。夏になったら冷やしてみよっか。


クロカゲ:そうだな。そう言えば、このお茶は姉貴のマスターとか言うやつの香茶なんだろ?いつかは無くなるんじゃないか?


イノリ:うん、そうなんだよね。沢山持ってきたからまだまだあるけど、流石に3年分はないからこのペースで飲んでたら半年とかで終わっちゃうかも。その前に何とかレシピを見つけるか、新しい香茶を作るか見つけるかしないといけないよね…。


クロカゲ:そうだよな。チヨの家で飲んだ香茶は全然違う味だったし、一口に香茶って言っても材料幅広いんじゃないのか?作り方調べるのも難航しそうだよなー。


イノリ:そうなんだよねぇ…。茶葉から見ても、緑茶の葉以外に別の葉っぱっぽいものとか、小さい粒みたいな物も入ってて、これを調べるのは骨が折れそう。生活が軌道に乗ったら早めに調べ始めようかな。


クロカゲ:そうしようぜ。おれも出来ればこの香茶がいいし。飲んでると調子良いんだよな。最悪分かんなかったらゼンにでも聞いてみれば良いんじゃねーか?


イノリ:あ、確かに!ゼンさんなら何かしら知ってそうだよね。あの雑貨屋さんの品揃えって底が知れないし…。


クロカゲ:おれはゼンも底が知れない奴だと思うけどな。


イノリ:そう?良い人だと思うけどなぁ…?


クロカゲ:まぁ、良い奴ではあると思うけど。ただアイツなぁ…。


イノリ:何か気になることでもあった?


クロカゲ:いや、大したことじゃねーから気にすんな。それより、香茶、何とかしないとだろ。


イノリ:そうだね!取り敢えず茶葉を見て色々調べてみないと!魔力補給効率が良い植物を使ってるってヒントもあるし、調合の勉強が進んで植物に詳しくなれば何か分かるかも!そういう意味でも頑張らないとね。


クロカゲ:ああ。おれも手伝うから、2人で頑張ろうぜ。


イノリ:うん、ありがとうクロカゲ!



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