商品化会議。
「イノリちゃんからすれば吃驚よね。…それにしても、まさかイノリちゃんが魔力調合の本を持っていたなんて…しかも、魔力の性質があっているなんて。これはもう奇跡的な位の出来事だわ」
チヨさんが両手を組んで関心したようにそう言う。
チヨさんはそう言うけれど、よくよく考えてみれば、マスターの家にあった本ということは、マスターが調合していたものということになる。
そしてマスターから創られた私も同じような魔力の質をしている訳で。
だから私が魔力調合が出来たのは奇跡というよりは、必然的な出来事だと言える。
…とはいえ、私にとって幸運であることに変わりはない。
魔力調合の薬が出回っていない今、需要などは分からないけれど、これが良い薬であることはチヨさんが太鼓判を押してくれている。
上手くいけば、調合した薬を売って生活が出来るようになるかもしれない。
「色んな事情が分かって吃驚しましたけど、結果的にチヨさんに作ったお薬を持って来られて本当に良かったです」
「まさかこんなに早くお薬を持ってきてくれるなんて思わなかったわ。是非この店に置かせて頂戴」
「勿論です、ありがとうございます!」
その後もとんとん拍子に話が進んで、今日持ってきた分は明日から置いてもらえることになった。
値段は銅貨5枚。
この世界では木貨、銅貨、桜貨、銀貨、金貨の順番で高くなっていって、銅貨10枚で桜貨1枚、と言った具合に10枚で次の貨幣と同じ価値になっている。
因みに、木貨は木を、桜貨は珊瑚を加工して作った貨幣のことだ。
普通に売っている軟膏は銅貨3枚程らしいので相場より少し割高と言う事になる。
でも同じ値段で売り出した方が…と心配すると、チヨさんが。
「これは絶対に売れるわ!大丈夫よ」
と熱烈に推してきたので最終的にこの値段で落ち着いた。
…と、ここまでは順調だったのだけど、この後が問題だった。
商品名は何にしよう?という話になったからだ。
…因みに、私のネーミングセンスはクロカゲに、品性の欠片もねぇ。と言われているのでお察しである。
「『なめらか軟膏』とかどう?」
「うーん…そうねぇ…」
「何だそのふざけた名前は。商品名なんだからもう少し何とかなんないのかよ」
それでも一応名前を上げてみたらこのざまである。
チヨさんはまだしも、クロカゲ、歯に衣着せぬ物言いに拍車がかかってる気がする。
しかもそんな呆れ顔全開で言わなくてもいいじゃん…これでも頑張って考えたのに…。
「うーん…『薬用軟膏』はどうかな」
10分程考えて捻り出した名前を出してみるものの、クロカゲの表情はパッとしない。
「さっきより100倍良くなったけど、何かなー…」
にべもないクロカゲに心が折れそうになる。
ていうか100倍って。
さっきはどれだけ悪かったんだ…。
「…じゃぁ今度はクロカゲが考えてよー…」
万策尽きた私は早々と降参する事にした。
もうこれ以上心を抉られるのは御免である。
「そうだなー…」
クロカゲは考える素振りを見せる。
そして考える事ほんの数秒。
「『フェアリ軟膏』とかどうだ?」
クロカゲはあっさりと最適解を出して見せた。
悔しいけれど、確かに私の出した名前とは雲泥の差だ。
「確かにそれは可愛くていいかも…」
「素敵ね。フェアリーフの花の香りがする軟膏だし、いい名前だと思うわ」
チヨさんもにっこりと笑って同意してくれた。
何とか商品として売り出す内容が決まったので、後はチヨさんにお願いして私たちは帰ることにした。
当初の計画ではお昼前に帰る予定だったのがお茶をしたり話し合ったりで延びにのびてしまったので、今は夕方前位の時間帯だ。
チヨさんにお礼を言ってお店から出ると、夕暮れ時の町には斜陽が差していた。
ブックマークしてくださった方がいらっしゃいました!
ありがとうございます!モチベがとても上がりますー!!
沢山書けたのでまた投稿しちゃいました。
週末の更新は執筆量に左右されるので毎週は出来ないかもしれないですが、まとまって書けたら更新していきますね!
それから、おまけの内容をお料理編に変えたのですが、こんな感じの内容で大丈夫でしょうか…?
もし何かありましたら意見ご感想ください…!!
!追記!
お礼あとがきがもしかしたら規約に引っかかるかもしれないとの情報を読んだので、ここからは感謝を込めてあとがきにおまけ小話が毎回入ります!!
本編の息抜きにどうぞ!!
いつも読んでくださってありがとうございますー♬
…おまけ そのろく…
◼️お料理紹介◼️
◯葛湯◯
お椀に片栗粉、砂糖を入れる。
その中に熱湯を注いで素早くかき混ぜる。
全体が半透明になり、緩く固まったら出来上がり。
イノリ:本当は葛粉で作るものらしいんだけど、葛粉は高いからうちは片栗粉で代用してるんだってお祖母ちゃんが言ってた。
クロカゲ:だから葛湯って言うんだな。なるほどー。
イノリ:そうそう。あと、うちはお祖母ちゃんもお母さんも感覚で調理するから全部目分量で、教わった私もそんな感じだから詳しいレシピはないんだよね…。大体これ位かな?みたいな…
クロカゲ:姉貴普通に作ってるから気にならなかったけど、よく考えたらすげーよな。失敗とかしないのか?
イノリ:頻繁にはしないけど、たまにね。味見しながら作れる料理は大丈夫だけど、唐揚げの下味とか、味見できないところでも目分量だから…。大体同じ味になるけど、たまに甘すぎたり、味薄かったり…(苦笑)
クロカゲ:味見なしの目分量は難しそうだもんなー…。でも今んとこ失敗なしだよな!流石ー!
イノリ:ありがとう!万が一失敗しちゃったらごめんね。
クロカゲ:たまには仕方ないだろ、誰しも失敗はあるんだし。ちゃんと食べるさ。姉貴の作ったものだからな。
イノリ:ありがと、クロカゲ!出来るだけ失敗しないように頑張るからね。
クロカゲ:おう。もし失敗したら二人で頑張って食べようぜ(笑)
イノリ:うん、そうだね!(笑)




