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失敗の原因。

掃除が終わって一息つくと、書斎へ移動する。

失敗続きだった調合を、今日こそは成功させたい!

クロカゲのことがあってバタバタしてたから、ここ数日は全然手をつけられていなかったのだ。


座って香茶を飲んでいたクロカゲに、薬の調合してくるね。と伝えたら、興味があるのか一緒に着いてきた。

すり鉢や鍋を準備して、調合書のページを捲る。

この前は傷薬が中々上手くいかなかったから、今日は気分を変えて、切り傷や手荒れに効く軟膏を作ってみようかな。


軟膏のページを開いて、クロカゲと一緒に材料や手順をまじまじと見ながら作業を開始する。

まずは、乾燥させた薬草タンポポの根を細かく刻んで、それを煮詰めていく。

その間に風車草の種をすり潰して、出てきた油分を絞り出しておく。

鍋が煮詰まって来たら、そこにトキワソウを加えて更に煮る。

最後に絞り出しておいた風車草の油分を少しずつ入れながらぐるぐるとかき混ぜると、軟膏状になる…って書いてあるんだけど…。


クロカゲと一緒になんとも言えない表情で鍋の中身を見る。

ドロっとはしているけど軟膏って言われると何か…違うような。

でもこれ以上煮詰めていると焦げ付いて来そうだし、仕方ないので判別薬品を混ぜて別の容器に移した。

参考書を見て、匂いを嗅いで首を傾げる。

うーん…と唸ってクロカゲを見るも、彼も渋い顔をして首を傾げた。


参考書には完成香が妖精草の花の香りになっていて、詰まる所、嗅いだことのない花の匂いが指定香になっているため、判断出来かねるのである。


この反応だと、クロカゲも花の匂いを実際に嗅いだことはなさそうだけど…。

でもどうなんだろう、コレは…。


目の前にある白い軟膏から漂う異臭を目の当たりにしながらため息を吐いた。

もしかしたら、可愛い名前にそぐわない匂いの花の可能性もある…けど、多分失敗なんだろうなぁ。


「これはまた失敗かなぁ…」

容器の中の液体は変な匂いだし、手に取ってみてもベチャッとしていて、とても軟膏とは思えない。

仕方がないので全部廃棄して、鍋や乳鉢などを洗っていると、さっきから何やら考え込んでいたクロカゲが私の手元を覗き込んできた。


「姉貴が使ってるソレって、まさか鉄の棒じゃないだろうな?」

ソレ、とは今洗っている鍋を混ぜていた棒のことだと思うので、洗いながら頷く。

「うん、よく分かったね。器具があんまりそろってなくて、とりあえず混ぜられるなら何でもいいかなと思って、火掻き棒使ってるの」


判別薬品があったのは有難かったが、家具でさえ必要最低限のものしかなかったこの家に、調合器具と呼べるものは乳鉢位しか見当たらなかったのだ。

流石に調理用のお玉で薬を作るのは気が引けたので、暖炉にあった火掻き棒で代用している。


私の発言を受けて、クロカゲは心底驚いたという風に目を丸くして、はぁ!?と叫んだ。

「そんなもんで薬が作れる訳ねぇだろ、何考えてんだ!」

「でも、ちゃんと綺麗に洗って使ってるよ」

ほら、と洗い終わったばかりの火掻き棒をクロカゲに見せてみたが、そういう問題じゃねぇ!と一蹴されてしまった。


「調合に使うのは魔力の伝導率の高い銀の棒って決まってるだろ。失敗の原因は間違いなくコレだな」

その調合書に書いてなかったのか?とクロカゲは呆れた表情で私を見た。


「そうだったんだ…。最初から読んだけど、書いてなかった、と思う」

そんなに重要なことだったら、もしかして私の見落としかも。と不安になる。


調合書をパラパラと流し読みしたクロカゲが首を傾げた。

「…確かに書いてないな。でもこの調合書って初歩なんだろ?だとするとなんか不親切だよなぁ」

「あ。クロカゲもそう思う?私も最初に読んだときに少し解り辛いなって思った」

自分と同じ意見が出て何だか安心する。


…良かった、私の理解力が低いわけじゃなかったんだ。

あ、でも調合書としてはあんまり良くないのかな。初歩なのに不親切なんだもんね。


「まぁでも、今のことが分かれば大分進歩なんじゃねぇか?他が間違ってそうな感じもなかったし、次はちゃんと作れると思うぜ」

「本当!?ありがとう!でも、銀の棒なんて貴重品じゃない?取り扱ってるお店あるかなぁ…」

私の疑問に、クロカゲはきょとんとする。

「なんでだ?普通にあるだろ、それくらい」


クロカゲはそう言ってるけど、小さい町だし、そんな簡単に手に入るなんてことは…。



「銀の混ぜ棒一本ね。これなら銀貨5枚だよ」

…あった。

半信半疑で町の雑貨屋さんに行ったら、普通に置いてあった。

「はい、お願いします」

「まいどあり」

お金を払って包んでもらう。

それを受け取ってまじまじと見つめる。


本当に常識なんだ…吃驚した。

更新がゆっくりになってしまったのにブックマークして下さった方、本当にありがとうございます!!

凄く励みになりますー!!

読んでくださっている方が居るんだ…!と思うととても嬉しいです。モチベーションも沢山頂いてます!!

書き溜めがないので自転車操業ですが、頑張っていきますので、これからもよろしくお願いします!!


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