表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/62

まさかの展開。

最初にお湯を沸かすんだけど、さっき沸かした分が残っているからそこは省略。

あと使うのは、お椀とスプーン、片栗粉とお砂糖。材料はこれだけ。

食べるときに熱いから、出来れば木とかプラスチックのスプーンの方が良いんだけど、家に金属のスプーンしかなかったのでそれを使う。


まずお椀に片栗粉を入れる。

お祖母ちゃんから教わったレシピだから量は適当なんだけど、このお椀は大きめだからとりあえず大さじ2杯くらい。

次にお砂糖を加える。甘さはお好みだけど、大体大さじ3杯くらい。

そこに熱湯をお椀8分目まで注ぎながらスプーンで素早くかき混ぜる。

集中して10秒位ぐるぐるやっていると、片栗粉の効果でとろっとしてきて、最終的にはぷるぷるした半透明のゼリーのようになるのだ。

葛湯と言って、私が風邪をひいた時にお祖母ちゃんが良く作ってくれた。


あったかくて甘くて、喉越しもいいから具合が悪くても食べやすいんだよね。

しかも、水分と糖分と炭水化物が一気にとれる優れものだ。

体も温まるし、弱っているときのエネルギー補給にはぴったりのお料理だと思う。

ただ、長い間放っておくと水に戻っちゃうから、そこだけ注意しないといけないんだけどね。


早速出来立てを持っていく。

「出来たよ。ほら、食べられる?」

少年を起こして葛湯を1さじ掬って口の近くまで持っていく。

怒られるかな。と思ったけれど、彼は大人しくそれを食べてくれた。

「…甘い。何だ、コレ?」

「葛湯っていうの。体も温まるし、食べやすいでしょ?」

「・・・ああ。もっとくれ」

「はい、どうぞ」

本人はまた子ども扱いするなって怒るかもしれないけど、こうして大人しく食べてくれる姿を見ると微笑ましくなる。

お椀の葛湯がなくなる頃には顔色も大分よくなってきた。

「気分、どう?」

食器を片付けて来てから、再びソファの隣に座り込む。

「大分マシになった。…さっきは悪かったな」

バツが悪そうな顔をして彼が呟くように言う。

私が吃驚していると、彼は続けた。

「助けてもらったのに怒鳴ったりして。あの時は気が立ってたんだ」

そう話す彼は随分と落ち着いているように見える。


事情を訊くのは今しかないと思い、私は口を開いた。

「どうしてあんな森の中に…?そう言えば、名前も聞いてなかったよね。私はイノリ。あなたは?」

「あー…色々あってあの森に飛ばされたんだ。因みにお前の言う名前みたいなもんはおれにはない」

飛ばされたくだりを話す彼が物凄く不機嫌そうだったので、あまり踏み入ってはいけないような気がして、その件について口を挟むのはやめておいた。

「名前がないっていうのはどういう事…?」

当惑する私に彼は、本当に気付かなかったのか?と言って、前髪を手で除ける。

そこには、小さいけれど角のような物が生えていた。


「おれは影踏鬼。妖魔だ」


ニヤリと笑ってそういう姿は、確かに少年とはかけ離れていて。

吃驚して二の句が告げない私に、彼は追い打ちをかけてきた。

「今更出てけとか言うなよ。そういう訳だから、これから宜しく頼むぜ。イノリ」


私、もしかして・・・否もしかしなくても、とんでもない拾いものをしてしまったかも知れません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ