おや、男の子の様子が…?
取り敢えず此処にいればこれ以上身体が冷える事はないけれど、このあとはどうしよう。
暖炉にあたってはいるものの、顔色は悪いままだ。
意識がないままお風呂に入れるなんて無理だし、ご飯も食べさせられないし…。
ああでもない、こうでもないと一人でオロオロしていると、少年が身じろぎした。
「う、ん…」
「…気が付いた?」
そう声をかけると、彼はゆっくりと目を開けた。
双眼は綺麗な金色をしていて、黒髪や褐色の肌と相まって、黒猫みたいだな。と思った。
「ここは…?」
「私の家だよ。君が森の中で倒れてたから運んできたの。もしかして、お父さんやお母さんとはぐれちゃったのかな」
そう答えると、少年は眉根を寄せた。
「子ども扱い、するんじゃねぇ…」
心底嫌そうにそう言われて思わず固まる。
いや、だって…どう見ても小学校低学年くらいの見た目だよね?思春期にも程遠そうなんだけど…。
「えぇと…でも君かなり小さいし…」
何かの間違いでは…という私の発言が地雷を踏んだのか、がばっと起き上がった彼は私を睨みつけた。
「なんだと!おれ…は…」
いきなり起き上がったせいか、大声を出したからか、はたまたその両方か。
彼の視線が上に泳いで、そのままふらりと私にもたれ掛かってきた。
「だ、大丈夫…!?」
慌てて両肩を支えて覗き込む。
「くそ…もう、力が…」
肩で息をしながらなんとか喋る声には憔悴が滲んでいた。
「どうしよう…!これからお医者さんに連れて行くからね。さぁ、こっちにーーー」
このままでは危ないと思って背負おうとした手を、彼が掴んだ。
「止めろ」
弱っている子どもとは思えない力だった。
「今外に出たら…本当に死ぬ…」
「どういうこと?でも、このままじゃ…」
言っていることが分からなくて困惑する。
しかし、彼は私の疑問には答えずに続けた。
「アンタに迷惑をかけるつもりはない…けど、今は此処に居させてもらえないか。夜になったら出ていくから…」
「そんな…こんなに弱ってるのに追い出すようなことなんて出来ないよ。私は此処で一人暮らしだし、もし行くところがないなら好きなだけ此処に居ていいからね。それより、何所か具合悪いところとかはない?」
少年をソファに寝かせ直してそう尋ねると、彼はぽつりと呟いた。
「…寒い」
そう言われて彼の頬を触るとひんやりしていた。暖炉の前にいるのにまだ顔色が悪い。
きっと朝から何も食べてないだろうし、そのせいで芯から体を温めるのが難しいのかもしれない。
「分かった!ちょっと待ってて」
そう言って台所に向かう。
体調が悪い時にも食べやすくて、さらにカップラーメンより早く作れるとっておきのレシピがあるのだ。




