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男の子拾いました。

道なき道を少し進むと、ものの数分で少し開けた場所に出た。

そこは丁度高い気が何もなくて、踝くらいの高さの草が一面に生えているちょっとした広場のような場所だった。

しゃがんでどんな植物が生えているのかを調べてみると、草に混じって花が咲いているのもぽつぽつと見えて、その中に淡い黄色の花を見つけて近付く。

菊のような形の薄黄色をした小さな花に、雲のようにもこもこした縁取りの葉っぱ。

植物図鑑で確認する。間違いなく薬草タンポポだ。

ゴボウのように細長い根は傷薬などの材料に使われることが多い薬草で、葉や花は食用に出来るらしい。

途中で根を切ってしまわないように慎重に周りを掘ってからゆっくり引き抜くと、最後まで綺麗に根が取れた。

葉っぱや花も食べられるとのことだったので、そのままカゴに入れる。

記念すべき初採取が上手くいったのが嬉しくて頬が緩んだ。

この調子で他の素材もどんどん探していこう!


他の素材もそこそこ見つかって、カゴが半分位埋まってきたので、少し休憩しようと顔を上げる。

素材を見つけるのに夢中になっていて、気が付いたら広場の端の方まで来てしまっていた。

帰り道が分からなくならないように少し戻ろうと立ち上がったところで、林の中に何か黒いものが見えて固まる。

え…何、あれ。

クマやイノシシなどの凶暴な野生動物だったらひとたまりもない。

パニックになりそうな思考を押さえつけ、それが何か見定める為に目を凝らす。

小さくて、色が黒いのは毛皮などではなく布のように見える。

もしかして人間…の子ども…?

子どもが倒れてる!?

そう思った時にはもう駆け出していた。


近付いて、うつ伏せに倒れているのを抱き起すと、外見はマスターと同じか、それよりも少し幼い位の少年であることが分かった。

息をしているのを確認して胸を撫でおろすが、ぐったりしているし、体はとても冷たい。

朝になる前から倒れていたのか、黒髪と濃紺の服は朝露で湿っていて、褐色の肌にも血の気がない。

「ねぇ大丈夫?しっかりして…!」

声をかけて軽く揺すってみるものの、気が付く気配はなかった。

このままではいけないことは明白だ。抱き上げるのは私の腕力的に難しかったので、何とか背負って走り出す。


どうしよう、町まで運ぶ…!?

でもここからだと私一人でも30分以上かかる。

この子を背負って行ったらもっと時間がかかるし、子供とはいえ意識のない少年はずっしりと重い。

このペースだと私の体力が持たないかもしれない。

…とりあえず家に連れて行こう。

全力で走れば直ぐだし、何かあれば最悪家に寝かせておいて、私が町まで走ってお医者さんを呼んだ方が確実だ。

少年をしっかりと背負い直し、走るスピードを上げる。

私の息が絶え絶えになる頃、何とか家に着くことが出来た。


一旦寝室のベッドに寝かせてから、急いで暖炉を点けに行く。

書斎にあった小さなソファを暖炉前に移動させてから、取って返してクローゼットを漁った。

男の子の洋服はないけれど、濡れたままにしておくわけにもいかないので、最初に着ていた白いワンピースを引っ張り出す。

顔や腕などが汚れていたので、温かい濡れタオルでしっかり拭いてから少年を着替えさせてソファに運んだ。

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