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一夜明けて。

…前回のあらすじ…


マスターには結局裸を見られてた。

マスターはお母さんだから大丈夫マスターはお母さんだから大丈夫…。

色々あってすごく長かった一日がやっと終わった。


目を覚ますと、見慣れない天井。大き目のベッド。

窓から差し込む光が、朝であることを告げている。


・・・あれ、此処って何処だったっけ。


ベッドサイドに腰掛け、窓の外をぼーっと見続けること数分。

見慣れない景色は見慣れないままだし、夢から醒めるような気配もまるで無い。


そうして段々と頭が覚醒してくると、昨日の記憶たちが走馬灯宜しく頭の中を駆け巡り、今の状態の異常性がとてもよく理解できた。

私を殺した人が私を創った人で、つまり私の親のような存在で、後を継げと言われていて。

さらに、私は一回殺されて、生き返ったのか生まれ変わったのかしていて、器と言うちょっと違う存在になっている、らしい。

殺した人が殺された人を生き返らせるってなんだろう。リサイクルなの?マッチポンプなの?


そもそも家族殺しって物凄く罪が重いんじゃなかったっけ。

・・・あ、でもよく考えると、そのときはまだ家族じゃなかったのか。

殺した相手を生き返らせたんだから殺人はノーカンになるの?・・・絶対になるわけが無い。


私の感じた絶望とか、恐怖とかまでなかったことには出来ないし、死ぬ前の生活にだってもう戻れない。

失ったものが多すぎる。

でもあの人に面倒を見てもらっている状況でもあるわけで。

あの人もまた、私と同じ境遇だったわけで。


この世界で、今頼れるのはあの人だけだ。

それに、彼が私を何の感慨も無く殺して生き返した訳じゃないことも、同時に分かってしまっている。

・・・ダメだ、状況も感情も全然整理できない。


身支度を整えて部屋を出る。

何処へ行けばいいのか分からなかったのでとりあえず隣のマスターの部屋を方へ足を向けると、彼もこちらに歩いてくるところだった。



「おはよう、祈。よく眠れた?」

「お早うございます、マスター。はい、よく眠れたとは…思います」

とりあえず頷くが、それでスッキリしたかといえばそうでもないので、私の回答は曖昧だ。


…ぐっすり眠れ過ぎた分、朝の反動が色々と凄かった。


歯切れの悪い私の回答に、マスターが首を傾げる。

「そう?その割には何だかぐったりしているように見えるけど」

不思議そうにするその仕草といい、背丈といい、マスターは普通にしていたら少年のように見える。

「…ぐっすり眠りすぎて、今の状況に頭が付いて行っていないんだと思います」

「ふふ、僕の器は本当に正直者だね」

ぐったりと返事を返す私に、マスターは笑った。


屈託無く笑う目の前の少年が私を殺してから創った張本人、つまり犯人で生みの親で主人のような存在で、ついでに後を継げと言われているのだから、私は色んな意味で笑えない。


とりあえず、彼が私にこれ以上危害を加えるつもりが無いことだけは分かっているし、二日で飲み込める方がおかしいと思えるくらいには事情が込み合っているため、この件は一旦保留にして、時間をかけながら折り合いをつけていこうと思う。


・・・後戻りが出来る状態じゃないことだけは分かっているから、私はもう前に進むしかないのだ。


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