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衝撃の事実。

…前回のあらすじ…


マスターに見た目が変わった理由を教えてもらった。

マスターも同じ方法で作られたみたいだけど、私のように以前の記憶はなかったらしい。

「・・・マスター、ちょっとお訊き事が」

部屋の前で、私はマスターを呼び止めた。

・・・ずっと気になっていたあの件を訊くためである。

「ん?どうしたの?」

部屋のドアに手をかけようとしていたマスターは振り返って私を見る。

「さっき、私の・・・その、見ました・・・?」

思い出すだけでも恥ずかしくて、言葉が尻すぼみになる。

「さっき?」

オウム返しに聞いてくるマスターに、私は半ば自棄になって叫んだ。

「お風呂で私の裸見ました!?」

マスターは一瞬吃驚したように目を見開いて、そして笑った。

「あぁ、そのことを気にしていたんだね。大丈夫、その時は見てないよ」

「そうなんですね、良かっ・・・」

大丈夫、と言われて安心して、笑いかけたところで固まる。

その時?『その時』って何だろう。

他の時があるって事?

「あの、その時って、何ですか?」

もしかして、まさかとは思いますが、他の時に見た事とかあるんですか・・・?と恐るおそる訊いてみる。

勿論語尾は不安で尻すぼみになっている。

私の質問に、マスターはそれはそれは穏やかに笑った。

「うん。さっき祈が着ていたワンピースがあるよね」

「はい」

言われて、あの白いワンピースを思い出す。

そう言えば、いつの間にか意識を失う前に着ていた私の服と違っていて・・・。

物凄く嫌な予感が全身を駆け巡る。

恐らく不安全開の表情になっているであろう私に、マスターはトドメを刺してきた。

「あれを着せたのは誰だと思う?」

「・・・!!」

不安が確信に変わって、私は顔を覆ってしゃがみ込んだ。

もう穴があったら入りたい。

そのまま恥ずかしさで消えたくなっていると、頭の上からくすくすと笑う気配。

「もう今更だし、そんなに恥ずかしがらなくても。ほら、赤ちゃんだって最初は裸で産まれてくる訳だし、僕はキミの親なんだから、気にすることなんてないと思うけどな」

確かに、見られてしまったものはもう仕様がないし、ここは思い込みでも何でも立ち直るしかない。

マスターはお母さんマスターはお母さんマスターはお母さん。

そう心の中で呪文のように何度も唱えて、雑念として取り払う事にした。

「・・・すみません、もう大丈夫です」

何とか平静を装える所まで立ち直ったので、立ち上がると、マスターは何だか楽しそうにこちらを見ていた。

「祈は本当に分かりやすいね。表情がくるくる変わって、見ていて飽きないよ」

「え、そうですか?」

自分がそこまで百面相しているのかと、恥ずかしくなって両頬を押さえる。

「うん。元々器は感情表現に乏しいんだ。段々感情が出てくる子も勿論居るけど、記憶があるからなのか、キミはとても表情が豊かだ」

「マスターは、私のほかにも器を創られたことがあるんですか?」

「ううん、祈が初めてだよ。他の家の器を見たことがあるから」

「そうなんですね。他の家ということは、此処以外にも吸血貴や器が住んでいる所があるんですか?」

そういえば、その辺りのことも訊いていなかったな。と思い尋ねてみる。

「うん。この辺り一帯は柊が治める土地だけど、他の地域では別の吸血貴が治めていたりする場所もあるよ。この近くだと、橘って言う吸血貴が治める土地が1番近いけれど、それも結構距離があるから普段会うことはないだろうね」

「もしかして、あまり仲が良いわけではないんですか?」

私の質問に、マスターは微妙な顔をする。

「うーん・・・そう言う訳じゃないんだけど。でも柊は代々かなり力を持っている方だと思うから、よっぽど何か理由でも無ければ向こうからはあまり寄ってこないと思うよ。終わりの柊、死神雪人って呼ばれてるくらいだから」

「もしかして、マスターって、他の人から嫌われてるんですか?」

「・・・祈って、時々吃驚するくらい直球な発言をするよね」

「あっすみません」

マスターが渋い顔をして見せたので咄嗟に謝ると、直ぐに苦笑された。

「ふふ。本当に祈は面白いね。勿論、畏怖の感情があることは確かだろうね。でもその方が都合がいいこともあるからそれでいいかなと思ってるんだ。・・・ただ、もし祈が外の世界に出ても、迂闊に柊の名は出さない方がいいよ。この名は諸刃の剣だからね」

「・・・はい」

最後の方は真面目な顔でいわれて、私は静かに頷く。

まだ知らないことが、きっといっぱいあるんだろうな。と思った。

「さて、また長話しちゃったね。難しい話はこれでお終い」

マスターは改めてドアへ手を伸ばして開ける。

「ゆっくりお休み、祈」

「はい、お休みなさい、マスター」


マスターがドアを閉めてくれたのを確認してからベッドへ向かう。

今日一日の出来事が余りにも多すぎて、軽く頭痛を覚えながら布団に入った。

マスターが言うように、多分頭での処理が追いついていないんだろう。

今までの人生の中で一番目まぐるしい一日だったんじゃないだろうか。

・・・というか、正確に言えば人生は今日から始まったのか。

それなら目まぐるしいのも当然なのかなもしれない。

いやいやそういう問題じゃないような・・・。


本格的に思考が定まらない。

色んな事をぐるぐると考えていたけれど、心身の疲れには逆らえず、考えがまとまる前に意識は布団に沈んで行った。


・・・夢は、見なかったと思う。

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