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器の証。

…前回のあらすじ…


お風呂に不審者の影を見つけて逃げてきたら、脱衣所でマスターに裸を見られた。

死ぬほど恥ずかしかった。一回死んでるんだけど。

でも結局不審者は鏡に映った私だった。

だって、自分の見た目が変わってるなんて思わないじゃん…。

「祈が自分の見た目が変わっているって事に気づいていると思ってたんだ、ごめんね」

「いえ・・・気づかなかった私も私ですし・・・」

テーブルに向かい合って座り、マスターは苦笑気味に私に謝った。


とりあえずこのままではちょっと・・・ということなり、私はそのままお風呂に入った。

鏡に映る自分は何度見ても違和感があって、見るたびに何だかドキッとする。

何となく居心地が悪くて、私は手早くお風呂を済ませて部屋に戻った。


そのあと、マスターの部屋へ来るようにと言われ、今に至るという訳である。


「でも、どうして髪が真っ白になったり、目が赤くなったりしてしまうんですか?この変化には流石についていけないというか・・・」

「そうだよね。流石に前の容姿とはかけ離れているから、違和感があるのも当然か」


先ほどと同じ味のお茶を飲みつつ、マスターは掻い摘んで私に起こった変化を説明してくれた。

「僕が受け継いだ器を創る方法は、元の身体にかかる負荷が大きいからか、白髪になってしまうようなんだ。ほら、僕の髪も同じ色だろう?」

そう言って髪をつまんで見せるマスターの髪は、確かに私と全く同じ色をしている。


人間を器にするのは元の体に相当の負担のかかる行為らしく、そのせいで髪が白くなってしまったのだと思われるということだった。

ショックで髪が白くなるという話を聞いたことがあるので、そういうこともあるのかもしれない。


通りで周りの景色がきらきらチカチカして見えるわけだ。

その原因が自分の髪の毛と睫毛が視界を掠めていたことだなんて思いもしなかった。


それから、目が薄紅に見えているのは、体中を巡る血、つまり魔力が瞳を通してよく見えるようになってしまっていて、保有する魔力の量によって違う色になるのだそうだ。

アルビノのウサギの眼が赤いのは色素がないためだと読んだことがあるので、それに近い状態なのかもしれない。

マスターの瞳の色は真っ赤と言うよりは仄暗い赤で、私は薄紅。


「つまり、魔力が多ければ色が濃くなるということですか?」

私の質問に、マスターは頷く。

「そういうことになるね。髪と瞳の色については納得してくれた?」

「そうですね・・・慣れるのには時間がかかりそうですが、とりあえずは分かりました」


今までの話を頭の中で整理して、先ほどの話から、マスターも同じ方法で吸血器になったのかなと気になったので、もしかして、と続ける。

「マスターも、元は別の色の髪をしていたんですか?」

マスターは少し上を見上げて、ずっと遠くを眺める時みたいに目を細めた。


「僕は祈と違って、創られる前の記憶が余り無くてね。だからどんな色の髪だったのかはっきり覚えていないんだ。でも、薄っすらとある記憶では別の色だったような気もしてる」

そう言って笑うマスターはどこか寂しげで、いけないことを聞いてしまったような気がした。


マスターも、私と同じ境遇だったんだということを再認識する。

私と同じように混乱して、不安になったりしたんだろうか。

だから、時折こんな風に寂しそうな顔をするんだろうか。


「すみません、不躾に」

「気にしないで。それももうずっと前の話だから」

「・・・はい」

私がおずおずと頷くと、マスターは安心させるように笑った。

「そんな顔しないで。気を使わせてしまったね。今は祈の方がいっぱいいっぱいだろう?今日はもう部屋に戻ってゆっくりお休み」

マスターはそう言って席を立ち、私を部屋まで送ってくれた。


展開によって文章量がかなり変わってしまうので、1話の長さがまちまちになることが結構あります…。

同じ位の文章量で1話毎に区切れる方達はどうやって構成とか考えてるんでしょうか…本当に尊敬です…!


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