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02  途切れた関係


 俺は居間で一人の男性と一人の女性に対面していた。

 この2人が俺の何だなんて分かりきっている。

 そのはずだったが今はその前提が崩れている。


「さてえーっとまず、うーむ、非常に切り出しにくいな。今のお前の名前は何だ」


 自分の家で自分の名前を聞かれている時点でおかしいが、今問われているのは現在の名前である「■■     」の方だろう。

 俺の今の名前部分は2つの黒い四角部分になるだろうが、今回は家名部分も含めて答えたほうがいい気がする。


「ガーピー 参照エラー …です」


 家に再び大音量で変な音が響き、部屋はまたしても静寂に包まれる。

 そして女性が声を出す。


「あなたは私の息子、だったのですよね?」


「はい、そうでした」


 そうだ。この2人は両親、だった。しかし俺は間違いなくこの二人の息子ではないことになっている。この2人も間違いなくそれを感じているだろう。

 ここで元父親が俺に問いかける。


「ここ最近何かをしていたが、それの結果がこれか。一体何があったんだ」


 ここはどの辺りまで話すべきだろうか。元両親のどちらも魔法に関しては最小限理解しているが、詳しく説明した所で分からないし俺も結局はよく分かっていなかったから簡潔に話すか。


「自分の能力値を書き換え強くなるための魔法の研究をしていました。完成したと思い自分に使いましたが、不完全だったようでこのような結果になってしまいました。」


 現時点で仕事は決まっておらず、最後の賭けも失敗した。過去にないぐらい怒られるだろうし後はない。

 が、出てきた言葉は意外なものだった。


「そうか、お前の努力は俺が知っている。過去にない魔法を作ろうとしたのは評価できるがさすがに難しかったか。そういう行為に走らせたのは私の責任だ。力不足で苦労させてしまったな…」


 元父親から謝罪を受けることになる。

 比較的問題なくこの場は終わりそうに見える。しかし、そうは行かない。

 まず現時点で自分の仕事は決まっていない。農作業を手伝う手も本来はあったが、今は大きな問題がある。

 元父親が本題に切り込む。


「お前はこの先どうするんだ。気付いているだろうがここの跡取りにはまず間違いなくなれないだろう」


 そうだ。現在俺の家名は「    」になっている。家名が異なると爵位を引き継ぐことが出来ず、将来この家の後継者となることが出来ない。元両親も体感で分かっているようだ。

 本人確認で専門のスキルを持った者が家族関係も含めステータスを確認するのでこれで確実に引っかかる。

 手続きをすれば今の家名に変更できるだろうが、新たに立ち上げることになるのでやはり後継者になることは出来ない。

 このままここにいることは可能だ。だが、いつかすべてを失うことになる。

 ここまできたら覚悟を決めるしかない。


「俺はこの家を出ます」


「そうか…」


「この家を継ぐことが出来ず申し訳ありません」


 その場がまた静かになる。


「跡取りで問題が出るのはよくあることだ。兄弟を作れなかった私にも責任はある。この家名は失われるが私には弟、そしてお前がいる。異なる形となるが私達の意志を引き継いでいってくれ…」


「はい…」


 この後も少しは会話があったが、元母親は比較的静かだった。

 息子だった存在をどう扱えばよいか分からなかったらしく言葉数は少なかった。

 今、俺と元両親の距離は遠い。

 部屋を出て扉を閉める際に元母親の声が聞こえた。


「ガーピー 参照エラー、私は…」


 全部小声で言おうとしたんだろうが、ガーピーの部分は大きさが固定らしく、どうやっても大音量になってしまい気を引くので、それ以外の部分も聞こえてしまう。

 短い一言だったが、非常に重い一言で切なさが伝わってきてしまう。そしてもう一つ。

 その変な声というか音って他人にも出すことができるんだな…


- - - -


 俺は次の日家を出ることになった。元両親からは旅に必要な最小限の衣類や道具と銀貨100枚を受け取った。

 金貨一枚相当で、この家であれば2ヶ月ぐらい暮らせる額だが、道具類の購入や宿での生活を考えると一ヶ月が限度だろう。だが今までの自分を考えるとこれは多すぎかもしれない。

 俺は家の玄関の扉を開く。行ってきますと言いたい。だがそれは間違いだ。


「お世話になりました、さようなら」


 その一言だけを残し俺は家を出る。元両親が見送る形となるが、行ってらっしゃいと言いたかったのか、心境が複雑なのか、声を掛けられることはなかった。

 俺は振り返らなかったが、元両親の切ない空気が伝わってきた。

 本当はもっと言いたいこと、話したいことがあった。しかしその資格は既にない。


 一切成功しなかった俺の大きな失敗。この先に成功はあるのだろうか。


 この後俺は元両親の所に戻ることはなかったが、俺の部屋にあるものをある程度処分し、土地を購入し畑を拡張、少しは立て直す事ができたらしい。


- - - -


設定に関する補足


 銅貨100枚=銀貨1枚

 銀貨100枚=金貨1枚

 金貨100枚=白金貨1枚=銅貨100万枚

 銅貨1枚は10円前後を想定


 作中では家名変更しませんが、ガーピーの名前がバグりすぎているので家名変更しようとしてもエラーで処理できないので「    」から変更できない設定です。となると、■■の方はエラーが出ていないので変更可能です。


- - - -


if この物語を早く終わらせる方法 1 


※本編で出ていない設定が含まれます


 部屋のドアがいきなり開く。

 俺は扉が開いたことに反応し、その場を動こうとした。

 すると体が移動しようとした方向と逆へものすごい速度で動き始めた。


「一体何が…」


 部屋に入ってきた相手が何かを言っていたようだがもう遅い、離れすぎて聞き取れない。

 既に壁に穴を空け部屋を出ていた俺は、街を離れ、地面からどんどん離れていく。止めようとしても速度が早すぎてどうにもならない。


- - - -


 一人の男が光速をはるかに上回る恐ろしい速度で宇宙空間をさまよっていた。名前は「ガーピー 参照エラー」。

 空気がない影響で常時ダメージを受けているものの、健在だ。


 凄まじい速度で惑星にぶつかり、そのまま貫通していく。

 惑星にぶつかれば通常は減速しそうなものだが、彼は加速していく。

 彼の耐久性はマイナスであり、通常の人間では耐えられないダメージを受けているはずだが、HPが高すぎるので問題なく生きている。


 太陽のような大型の恒星に突入することもあったが彼の命は尽きない。

 ブラックホールに突入することもあったが、速度が早すぎて中央を通過し離脱していく。


 惑星やブラックホールの引力の影響を受け若干速度が落ちることはあるものの、本当に若干に過ぎず、加速されることのほうが多い。本人の意志では止まることも出来ない。

 彼は人間の枠を外れているので100年程度で死ぬ気配はなく、HPが尽きるのも今の速度では100年以上先のことになりそうだ。


 人類が誕生している惑星はこの宇宙に無数に存在する。

 しかし文明レベルの差は大きい。


 彼を観測し分析して止めることの出来る技術力を持つ惑星に近づくのはいつになるだろうか。

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