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エピローグ 狼少年

 それは新聞がばらまかれた一週間後。


 もう調査がすまされた元研究小屋に、記者がやって来ました。店内はきれいに片付けられていましたが、床は黒いままです。


「面白いものだね。俺は嘘なんていってないのに、世間は勝手に君を魔女だと決めつけている。」


 誰もいない部屋で、一人面白おかしく話をしています。男が指をぱちりと鳴らすと、オーバーオールが歪み、黒いローブへ早変わりしました。


「はぁ、記者の真似事も中々楽しかったが、潮時か。」


 錬金術師はため息をつきます。まだまだ、血が足りないのです。


 実験には失敗は付き物。その度に消費しますから、いくら血があっても足りません。


 (いっそのこと、村1つくらい消してしまおうか。)


 ━━……ぐさっ!━━


 ふと男は、背後に痛みを感じました。驚いて振り返ると、そこには赤いベレー帽を被った少年が、ナイフを握っているではありませんか。


 どうやら隠れて話を聞いていたようです。


 ナイフを引き抜かれ、錬金術師はよろめきます。心臓を刺されたわけではありませんが、ぼとぼとと、血が止まりません。


「よくも……よくも姉ちゃんを!!」


 少年は、少女によく似た憎悪の光を宿していました。彼は今、復讐心で我を忘れているようです。


「殺して……いない、のに」


 錬金術師は少女を唆しはしましたが、殺してはいません。彼女を殺したのも、逆さまに釣りしたのも、男ではありません。


「嘘だ!お前が姉ちゃんを殺したんだ!」


 血がたくさんたくさん流れて、錬金術師の意識は朦朧としてきました。あれだけ待ち望んだ血液なのに、ちっとも嬉しくありません。


 このままでは、死んでしまいます。


 ━━早く器を見つけて乗り移らなければ……━━


 そこで男は気がつきました。気づいて、思わず笑ってしまいました。


「君…殺人つみを、犯しましたね?」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 それから数年後。とある山奥の小さな村で…


「狼だ!狼が来たぞ!!」


 少年が必死に叫びながら、村を走り抜けていきます。どうやら、狼が村を襲いにきたようです。しかし村の一大事だも言うのに、誰も家から出てきません。


「今度も狼?もう騙されないわよ。」


 村人は誰一人もして避難しません。窓越しに、駆け抜ける少年を見ては、ため息をこぼすばかり。


「狼が来るぞ!みんな逃げろ!」


 少年は必死で呼び掛けます。


 だって本当に狼の群れが、やって来るのですから。涎を垂らした狼が、《《少年を追いかけて》》すぐそこまで迫ってきています。


「逃げないと食われちまうぞ!!」


 かつて法螺吹きだった少年は、嘘つきとなって不気味に笑いながら村を走り抜けていきましたとさ。




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