第一話 プリンセス ヴェルダ
「姫様、いかがなされましたか?」
「いやぁ……なぁ」
目の前の禿げた親父に対して、私は足を組んで頬杖を付いてしまう。
「報告は良いのだが、聞いているだけでつまらんというだけだ」
「カートニー卿、かいつまんで説明してくれないか?」
私の隣にいる銀髪の女騎士、アーシャが禿げた親父に対して呆れた口調で言ってくる。
……アーシャの奴め、私が不真面目だと思っているな?
確かに私は飽きっぽいが勤めに対してだぞ。そこを分かって貰いたいものだ。
「わかりました、では結果から申し上げるとこの島は何も問題ありません」
「そうか、ご苦労だったな」
「いいえ、それでは失礼します」
親父ことカートニー卿が頭を下げて私の元から去っていく。
玉座の間には私とアーシャの二人しかいない。
……暇だ。たまらなく暇だ。せっかくの日曜日だというのに何もすることが無いくらい暇だ。
このままでは私は溶けたバター、いやアイスになってしまう。
そうなったら蟻に運ばれて巣穴に押し込まれてお終いだ。
「アーシャ、何か面白いことは無いか?」
「姫様が好みそうなものは何一つありません」
「そうか……」
またも沈黙が間に広がる。
自慢の緑の髪をもてあそびながらこの状況の打破を考る。
しかし、まったくいい考えが思いつかないので、適当な話題をぶつけてみる。
「山賊とか出ないのか?」
「山賊はこの間、姫様が単騎で片付けてしまったではないですか」
「そうだったな……」
そうだ、島にいる悪人は全て私が片付けてしまったんだ。
人数にして三十人、私の相手としては手ごろだと思ったが……。
あいつらももうちょっと気合を入れて悪事をして欲しいものだ。
そうじゃないと私の活躍の場がおもいきり減ってしまう。
「では町で話題の何かは無いのか? お菓子や大道芸人でもいいぞ」
「残念ながらその手のていは入ってきておりません」
「そうか……」
私はため息とともに玉座から立ち上がる。
このまま座していては身体もなまるし、健康的ではない!
「どちらへ?」
「決まっている! 新しいものは外から来る! 町へ行って新しいものを探すのだ! この手の話はきっとゴロゴロ転がっているはずだ」
「そうですか……」
「ウム、行ってくる!」
馬とともに城を勢い良く飛び出す。
照りつける太陽に太陽に目を細める。灼熱の太陽は私のことが嫌いらしい。
周囲の人間が姫様などと呼んでいるが、この島の太陽だけは慇懃無礼であった。
それもそのはず。ここは海の上の孤島、エスタングル島。赤道にやや近い常夏の島。
この緑の髪と白い肌を、焼くかのような暑い日差しを受けながらひたすら馬を走らせた。
町に着くと入口に馬をつなぐとそのまま町の中を散策する。
町の中は相変わらずの盛況だった。多くの人々でごった返している。
島という割には人種も実にバラエティ豊か。
まあそれもそのはず、この周囲には寄港出来る島が無いからな。
北から来るものもいれば南から来るものもいた。
あったあった、噂の宝庫。酒場だ。
昼間から飲んだくれてる奴なら面白い話を知ってるかもしれん。
酒場の扉を勢い良く開け放つ。視線が私に集中するが一行に気にしない。
「たのもー!」
「おお、姫様。いらっしゃいませ」
私に気づいた亭主が頭を下げる。
そのままカウンター席に勢い良く座り込んだ。
「亭主、何か飲み物をくれ!」
「かしこまりました」
しばらくして出されたのはヤシの実のジュースだった。
私がこれが好きだと言うことをちゃんと熟知しているな……亭主!
ジュースをすすりながら亭主に色々聞いてみる。
「亭主、面白いことは無いか?」
「うーん、姫様が面白いと思うようなことは何も無いですね」
「そうか、では最近の景気はどうだ?」
「ぼちぼちですね」
「そうか……」
そっぽを向いてグラスを拭き始める亭主。
どうにも動作がぎこちない。何か隠し事をしているな?
それは……甘い、甘いぞ亭主。この私は非常に目ざといのだ。その証拠に……。
「聞いたか? 山男の噂」
「聞いた聞いた、山奥に住んでてなんか怪しげなことをしてるってよ」
隅っこの方で飲んだくれている男たちに聞き耳を立てる。
やはりこういう与太話から何か面白い物が出てくるはずだ。フフフ……。
「怪しげって?」
「なんでも傷付いた動物の怪我を治したりしてるんだと」
「へぇ、良い奴じゃねぇか」
「ああ、それでこいつは見世物になる。と思って山男を捕まえようとした奴がいたんだが……。どうにも捕まえられないんだとよ」
「捕まえられないってどういうことだ?」
「噂だと山男を追いかけようとしたら熊や虎に出くわしたり、鳥から攻撃を受けたりと散々だったらしいぜ」
「ただの偶然なんじゃねぇか?」
「いや、一人だけだったらまだ分かるけど調査してる奴ら全員が同じ目に会ったんだぜ?」
「たしかに……おかしな話だ」
「で、山男って言うのは森の精霊なんじゃないか、って話が――」
なるほど……山男か……面白い、是非とも捕まえてやろう!
ちょうど良い頃合にジュースも底を付いた。
席から立ち上がると亭主に代金を払う。
「亭主、ご馳走になったな!」
「ハイ、またのご来店をお待ちしてます」
★
店を後にした私はそのまま馬とともに山へと登った。
開けた山道から遠くの海が見える。
海に近い場所だから当然だがどこまでも広がる海は見ていて気持ちよかった。
「うむ、自然が豊かなのは良いが、やはり地域の開発を考えなくてはいかんな」
それにしても静かだ……。何も聞こえない……。というか何も無い!
あたり一面は完全に緑一色。飛んでいる鳥も見えないのでとても静かだった。
こういうときには呼びかけてやったほうが良いかもしれんな。
「山男! 居たら出て来―い!」
…………何も聞こえんな。 いったい山男はどこに居るんだ!?
私が呼びかけているんだから姿の一つくらい見せて欲しいものだがな!
というかそもそも私は山男のことをまったく知らんかったな
一旦、城に戻りアーシャに山男の情報を集めさせるべきだったか……。
「まあ、いい! 山男のことだ。私の美貌に惹かれ出てくるはずだ!」
自分で無理矢理納得させた矢先、叢が大きく揺れる。
山男か!? そう思い、身構える。現れたのは――。
「なんだ、熊ではないか」
獰猛な肉食系が私に対して威嚇をしてくる。
それを見ていると腹が鳴る。せっかくだ……ご馳走になるとしよう。
私は馬から降りると馬の尻を叩いて城へと戻らせる。
そして目の前の熊と対峙した。
「来い、私は今腹ペコだ!」
腕を振るい上げ、襲い掛かってくる熊。
なかなか良い物を食っているのか動きは力強く豪胆。
しかし所詮は動物、腕を振るう隙をついて瞬時に懐へ飛び込む。
そのまま腹を殴って悶絶させ、胸、顎、眉間と畳みかけるかのように攻撃を仕掛けた。
さすがの熊も流石に溜まらんと思ったのか、私に背を向けて一目散に森の奥へと逃げていった。
「あっ、こら! 待て! 大人しく私の昼食になるが良い!」
奥へ奥へと逃げる熊を追いかけていく。
深い森の中を勢いよく疾走していく。逃げるのは苦手なのか、その差は徐々に縮まっていった。
「はっはっはっ! どうした!? 早く逃げねば食べてしまうぞ!」
完全に立場が逆転している。だが……調子に乗りすぎた。
「へ? ああああああああああああああああああ!」
私は足を滑らせ、そのまま地面を転がり、谷底に落下しただった。
★
「大丈夫ですか?」
「うう……いたたたた……。」
「良かった、気が付きましたね」
目を開くとそこには一人の少年がいた。
額に当てて手を離すと穏やかな微笑みを浮かべている彼。
何とか体を起こし、周囲を見渡す。そばに穏やかな流れの川があった。
どうやら私は谷底に落ち、川に流されたようだ。
「君は誰だ? 何故ここにいる?」
私の問いかけに少年は沈黙する。
泥まみれの服だったが、良く見ると私が見知った格好だった。
白のワイシャツ、紺色のスラックスに赤いネクタイ。青いジャケット。
……知ってるぞ、確かこれはブレザーというものだ。
私の知りうる限り、この世界にこんな服装をした人間はいない。
リリアのセーラー服とも違う。あれはDEの力で出した物だからな。
不信気味に睨みつけると少年はゆっくりと口を開いた。
「話すと色々長くなるのですが……何から話せば良いのでしょうか?」
「そうだな、まずは……名前を聞かせてくれ」
「名前ですか?」
「言えないのか?」
「そんなわけ無いですよ、僕の名前は信藤圭です」
「ケイ……変わった名前だな」
「……僕は名乗りました。あなたも名乗ってください」
「私か? ヴェルダ・エルグ・マルガレッド・イオニス・グランドール。まあ気軽にベルダと呼べ!」
「分かりました、ベルダさん」
「うむ! ……にしても変わってるな、君は」
「何がでしょうか?」
「まず見かけだな! そんな服、どこに売ってるんだ?」
「これは僕のオリジナルです」
彼はそういうがはっきりを言おう、それは大嘘だな!
私の記憶が正しければどこかの高校の制服である。
にしても……薄汚れているな……。洗濯はしないのだろうか?
スニーカーもちょっと年季が入ってるぞ。ずっとこの山にいたのか?
そんなことを考えていると傷を追ったウサギがやってきた。
ケイは慌てることなく動物に手を当てると動物の傷がみるみる塞がっていった。
魔力は感じない。いったいなんだ?
「回復魔法とは違うな……いったいなんだそれは?」
私の問いかけに対し彼は黙った。
表情がどうにも曇っている。これもまた地雷だったらしい。
「何故黙る?」
「すみません、こういうときに話すとあまり良い想いをしなかったもので…」
「そうか、それでは見なかったことしておこう、君も聞かなかったことにしてくれ」
私がそういうとケイはほっとしたかのような顔をした。
どうやらこの手の超能力で不幸な目にあってきたらしい。
人と関わりあうのが嫌なのは過去の私は十分知ってるからな。
だが、やはり気になる。
「では君は何故ココにいる? いくらこの地域が熱帯で温かいとはいえ、流石に下りたらいいではないか」
「それが……」
また言いよどむ。進まない話に私はイライラしてきた。
「ちゃんと話せ! 私は君に恩義を感じている! そんな君が困っていたら人の道理に反するだろうが! それに私は隠し事をする人間が嫌いだ!」
「……分かりました、じゃあこっちにきてください」
私はケイの後へ付いていく。
山の中にある切り立った崖になにやら男たちが数名いる。妙にコソコソとしてるな……なんだ?
男たちは周囲を見渡すと山壁にある洞窟に入っていく。
壁に何やら文様が書いてあるな。……まさか……あれは神殿か?
ここ最近、島ではやたらと隠された神殿が発見されてるという話を聞いているが……。
もしや!?
「盗掘か?」
「はい」
「……なるほど、あの盗掘団のせいで君は町に下りることが出来ないということか」
「話が早くて助かります」
なるほど、あのような悪人を見過ごすことができないというわけか。
となると、山男の噂の正体は彼のことを探すためのモノだったのではないか?
だとするならとても許せん、成敗してくれる。
「よし、ではいくぞ!」
「へ? い、いくぞって!?」
「盗掘団を叩き潰してやるだけだ! 礼には及ばんよ」
「待ってください、相手は武器を持ってるんですよ」
私の行いにケイが手をつかんで制止をしてくる。
その顔から恐怖は感じない。むしろ私を心配する瞳だった。
だが私はそれをあえて突っぱねる。
「武器が何だというんだ! 古人曰く! 義を見てなさざるは勇なきなり! 分かるな?」
「は、はい……」
「怖いのならここにいろ、私は行ってくるからな!」
「待ってください! それなら僕も付いていきます」
「うむ、君がいてくれる心強いな」
「まったく、強引ですね」
早速岩陰に隠れて中の様子を伺う。
出入り口に二人、奥のほうに一人……。むっ、崖上に二人か。
……正直、数としては少ないな。もっと大勢なら良かったのだがな。
それにしても……。よくもまああんなに見つけたものだ。
洞窟から幾多もの宝がひっきりなしに出てくる。
金とか銀の財宝もだがあの魔法アイテム。まったく、盗掘は犯罪だと徹底的に叩き込んでやらんといかんな。
さっそく私が身のを乗り出し、成敗してやろうとする。
「待ってください! 誰か来ます!」
ケイが私の肩に手を置いて押さえる。再び岩に隠れ彼が指し示す方向を見る。
崖の上から黒いローブに包まれた人物が神殿の入り口に降りてきた。
盗掘団の連中が頭を下げている。あれが頭領か?
私は盗掘団の頭領と思わしき男をじっくり眺める。
うーむ、やはりフードが邪魔だな! 悪党の面を拝んでみたいと思ってるがなかなか素顔は見せない。
イライラする私に対し、隣にいるケイが突然大きく手を振った。
「いったい何をするつもりだ?」
「まあ、見ててくださいよ」
するとトンビが勢いよく落下してきた。
そのままきれいな弧を描くとローブの男のフードを思いきり弾き飛ばす。
あれはヒゲ面は……たしか私の記憶の中にあるぞ。
たしか……。
「ホーネット卿ではないか、あの親父め……口では散々人を小ばかにしてるくせにこのような裏家業に手を染めてるとはな……」
「誰ですか?」
「わが国の宰相だ。ゆるせん」
ホーネット卿め、私に色々言うくせに自分があのようなことをするとは……。
もはや言い逃れはさせん! 末代まで罰してやる!
「さあ、いくぞ!」
「は、はい!」
意を決して私たちは盗掘現場へと踏み込んだ。
「そこまでだ! 悪党どもめ!」
「だ、だれだ!」
突然現れた私に盗掘団員はしどろもどろになっている。
「人類の宝を己が欲を満たすために使うなどと言語道断! このハッパ仮面が成敗してやる!」
「は、はっぱかめん……」
やはり前口上を堂々と言うのは気持ち良い物だ……!
それに少し前に大きな葉っぱで作ったマスクも会心の一品!
この二つのおかげで私はこれ以上なく高揚している。
「悪者どもよ! 貴様をうっちゃりで投げ飛ばし、市中の見世物にしてやる!」
「ふ、ふざけやがって!?」
「や、やっちめぇ!」
剣を抜いて向かってくるがあっさりと二本指で刃を掴む。
アカネもやったがどうも遅すぎるな……。
「う、うごかねぇ!」
「おまえ……まさか!」
「まさかも何も無い! ここでくたばれ!」
剣から手を離せばよいのに離すことはせず、そのまま奴らの体ごと持ち上げ、地面に叩きつけた。
二人は受け身を取ることすらできず、そのまま気絶をする。
……弱い! この程度か!?
「この野郎!」
崖上から盗掘団の男が弓矢で私を射ようとする。だが甘い!
「盗掘団員ミサイル!」
私は地面に伸びている盗掘団員を持ち上げるとそのまま弓矢を持った団員にぶつけた。
「いいいいいいいいいい!?」
突然のことに弓矢を使うことすらできず、盗掘団二名の体当たりを受けそのまま倒れる。
悪いが私は遠投力には自信があるのだ!
「ふん! バカめ!」
残るは二人。盗掘団とホーネット卿のみ!
どう料理してやろうか……。
「危ない! ヴェルダさん!」
突然ケイが私に声をかける。だが遅かった。
振り向くと同時に盗掘団の男の剣が大きく振るわれる。
辺りに重い金属の音が響き渡った!
「う……え?」
「ああ!?」
突然のことに男もケイも理解が追いついてないようだ。
それはそうだ。服は切り裂かれたが、振るった剣が真っ二つに折れたんだからな。
剣は頭にきちんと直撃をした。しかし剣の方が耐え切れずへし折れた。それだけだ。
あまりのことに目を白黒させている盗掘団の胸ぐらをつかむと竜巻のごとく回転をする。
むぅ! ホーネット卿め! 逃げようとしてるな、そうはさせん!
「どりゃあああああああああああああああ!」
雄たけびとともにローブの男、ホーネット卿の方へ投げつける。
二人の男たちは揉みくちゃにされながら神殿の奥へと吹き飛ばされ、小気味のいい音が聞こえた。
おそらく奥の方で伸びているだろう。後でアーシャたちに報せなくてはいかんな!
……だがこれで終わった。これでこの島も平和になることだろう……。
ケイが私に駆け寄ってきた。
「ベルダさん!? 大丈夫ですか!?」
「ふん、あの程度の剣戟で私が死ぬか!」
「でも……」
ケイの視線が下へ行く。視線の先では私の乳房がこぼれていた。
「むっ!? はっはっはっ、すまなかったな!」
すぐさま服を直そうとするが斬られたものは元に戻らんらしい。
仕方がないので丸出しのままにする。
「興奮したか?」
「そんなことは……」
「遠慮するな!」
「してませんよ! それにあなたは男じゃないですか!」
「……え!?」
彼の発言に私の思考回路が一旦停止する。
別に彼に私が元男だと喋ってないし、素振りを見せたつもりもない。
しかし彼は堂々と言い放った。私が男だと。
突然の指摘に私の額からかいたことのない汗がダラダラと出てきた。
「……い、いったい何を言ってるんだ?」
「すみません、言葉足らずでしたね。あなたの前世は男ですよね?」
「……分かるのか?」
「全部は流石に無理ですけど波動というかパルスというかそういったものが男性特有のものと一致したので……」
「そうか……」
「でも良かったです、悪い人じゃなくて」
「当然だ!」
「お調子者な部分はどうにかして欲しいと思いますけどね」
「うぐ!?」
軽く咳払いをして気を取り直す。
「さあて、城に戻ることにするか」
「僕は……」
どうするのかを決めかねているらしい。
まあこのご時世だ野生の生活もそろそろ限界かもしれんな。
せっかくだ。
「君も一緒だ」
「はい……」
私はホーネット卿が乗ってきたであろうウマを見つけるとすぐさま乗り込む。
隣にいる彼を後ろに乗せ、綱を振るうと馬が走り出した。
夕日を浴びながらふと、彼は話しかけてきた。
「ベルダさん」
「なんだ? 馬にでも酔ったか?」
「いいえ、そういうわけではありません。でも僕のことをちゃんと話しておこうと思います」
「そうか」
「ずっと気になっていたんですよね、僕が回復魔法とは違った力を持っているのか? 何故動物たちは僕を護ろうとするのか? なぜあなたが男だと知っているのか」
「気になると言えば気になった。だがあのときに聞いても君は話したがらなかっただろう」
「そうですが……」
無理に聞かなくていいとは思った。しかしそれ以上に彼のことを知りたかった。
いや、ちゃんと話すことでお互いの関係を整理したいだけかもしれない。
「……話してくれ」
「僕は命の一族という存在なんです」
「何だそれは?」
ぽつぽつと話す彼。
元々彼のいた世界では俗に言う九大元素を司る一族がいたらしい。
火水土風、魔法でも良く使う四大元素。光闇時空、この世の成り立たせる四種の力。
そしてそれらとは全く違う”命”を司る一族がいた。それが彼だった。
彼の力は”生命体”ならばなんにでも効く。
動物や私の気絶を直したのも彼だがもっとすごいことも出来るようだ。
そう例えば……人に超能力を与える。とか……。
「驚きましたか」
「……はっきりと言おう、全く分からん! まあ私の力も似たようなものだからな」
「そうですか」
「うむ」
そうは言っているが彼の存在が危険な存在であることは十分理解できた。
私のDEと同じように人間そのものを作り替えることができる、ということなのだから。
「……お互いに凄い力持ってるんですね」
「そういうことだ、目立って仕方が無いな! はっはっはっ!」
暗い顔をした彼に対し、あえて笑い飛ばす。その方が彼も気分が良い事だろう。
その証拠に私の背中に顔を押し付けてきた。しょうがない奴だ! まったく!
城が見えてきた。彼とともに城で生きていくのも悪いものではないと思っていた。




