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三話 守れ! 騎士団の誇り! その1

 目を開けるとそこはいつもの天井だった。

 まるでさっきまでの出来事は夢であったかのように感じる。

 しかしそれでもあの二人の感触やゴーレムのおぼろげな感触は手に残っていた。

 身体を起こして、カレンダーを見やると”アカネ”が初めてダンジョンをもぐった日付と変わらない。


「アバターっていうのはあながち間違いじゃないってことね」


 ベッドから立ち上がると軽くストレッチをして身体をほぐす。

 もう一度確かめるかのように自分の身体にペタペタと触ってみる。

 やっぱりアカネとあたしは完全に別人物だ。身体つきから始まり、知性や思考もかなり違う。

 せっかくだし、最後の確認をしておこう。


「フラッシュ・バスター!」


 …………誰もいない部屋にあたしの声だけが響くだけだった。

 あれはアカネ(あの子)の技であってリリア(あたし)の技じゃないことを実感する。

 同一人物でありながら全くの別人という不可思議な経験。はっきり言って理解不能だ。


「……さてとあたしはあたしの仕事をしないとね」


 気を取り直し、朝の準備をしてアパートから出るとギルドに向かって歩いていった。



  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 

迷宮ダンジョン探し?」

「はい、そうです」


 ギルドの受付であたしはすっとぼけた口調で依頼の確認をした。

 薬草や鉱物探しでも魔物の撃退でも無く迷宮ダンジョンを探して来いという依頼だった。


「迷宮を探せったって……そんな事言われても困るわよ」

「でも今のところこの依頼を受けられるのはリリアさんしかいないんです」

「リックはどうなのよ?」

「リックさんは別件の依頼を受けてます。他の冒険者もこの件にはどうにもやりたがないので……」


 珍しい。あのリックがちゃんとまとも依頼を受けるなんて……。

 普段の姿からは全く想像が付かなかった。

 だがそれ以前に他の冒険者が受けたがらない依頼なんて怪しいにもほどがある。

 いったいどこの誰がこんな依頼をしてきたのやら。


「お願いしますよ、リリアさん」

「分かったわ、一応確認だけど迷宮を探してギルドに報告するだけで良いのよね?」

「はい、ですが発見した迷宮ダンジョンの詳細を出来るだけ詳しく報告してください」

「OK、任せて頂戴。それで……」

「それで、とは?」

「いや、迷宮ダンジョンを探せっていうけどどの辺りのを探せば良いのよ?」

「さあ……」

「さあって……それじゃあ雲を掴むようなものよ。せめて依頼人からの要望とか無いわけ?」

「それが……依頼人は騎士団からなんです」

「騎士団から?」


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 目の前の敷地にいかにもいかついと言った雰囲気の建物が建っている。

 具体的に言うのなら屋根がやたらと尖がっていて、その周りを金色の窓枠がこれでもかと輝いている。

 そしてなによりいかついと感じたのは手前に立ってる石像だ。

 名前を見てみると初代騎士団長ウイリアム・スチューベンと彫られている。

 この手の石像は凛々しい顔をしてるのが普通だが、彼の顔はなぜか小憎たらしいドヤ顔。

 あたしが子供なら顔に落書きをするだろう。

 ここがどこかといえば騎士団の館。現代風に言えば警察署、と言った所だ。

 早速中へ入ろうと足を踏み入れるが門番と思われる男に待ったがかかった。


「こらこら、お嬢ちゃん。部外者は立ち入り禁止だよ」

「立ち入り禁止って言われても困るわよ、あたしは冒険者ギルドからの依頼で来たんだから」

「冒険者ギルドからの?」


 騎士とあたしはお互いジロジロといやらしい目で相手を値踏みしあった。

 あっちはこんな子供が冒険者だなんてと言う見下すような視線。

 こっちはこんな融通が利かなそうで頼り無さそうなのが騎士という不安の視線。

 そして最終的にお互いに愛想笑いと言う決着を付けた。


「とにかく取り次いで頂戴」

「わかったからちょっと待っててくれ」


 そういって門番は奥へと引っ込む。 

 元いた世界では多少なりに敬語を使ってくれたけど、こうも砕けた言葉を使われるとやっぱり苛立たしい。

 十分というそこそこ長い時間を待たされてようやく門番が戻ってきた。

 

「団長が会うってさ、団長室は奥の一番広い部屋だからな」

「そう、分かったわ」


 こっちも同じくらい砕けた口調で言ってやると門番の眉が少しヒクついた。

 今度からは相手を敬うことね。と鼻で笑い飛ばしながらあたしは団長室へと向かう。


 …………にしても息苦しいわねぇ……。


 館の中に入って思ったのがこれだった。

 いかにもエリート然した男たちが重そうな鎧を音を立てて歩いてる。

 顔付きもいかにも戦士系のタイプから神経質そうなキレ顔とバラエティに富んでいる。

 ただしすれ違う人たちは全員、愛想が悪い。まあ町の治安を預かる場所だから息苦しいのは普通なんでしょうけど。

 なるべく邪魔をしないように、と団長室へたどり着く。一応礼儀としてノックを行う。


「入ってくれ」

「失礼します」


 あたしは重苦しいドアを開けて中へと入っていく。

 中では一人の女性があたしを迎え入れてくれた。

 綺麗な人……。最初の印象はそれだった。

 ミリィとは違った長い金髪だけどやっぱ手入れされてると違うのか妙に輝いていた。

 瞳の色もサファイアのようなブルーをしていた。おまけになんか目付きも鋭い。

 だが以外にも露出がそこそこ激しい。へそ出しの上太ももを惜しげもなく出している。

 ……なかなか自己主張が激しいわね。見ているこっちが恥ずかしくなってきた。


「初めまして。冒険者ギルドから依頼を受けたリリアと申します」

「ふむ、そうか……そこにかけてくれ」

「では失礼します」


 あたしは手短な椅子に座って騎士団長を正面から見据えた。

 こうして見ると団長を務めるだけあって威厳と呼ばれるものを感じる。

 以前、弓を正面から撃たれそうになったけどあれと良く似ていた。

 冒険者のスキルみたいなものを持ってるのかしら?

 下手に動けば一発でやられそうね……。


「早速で悪いんですけど依頼を行った経緯の説明をお願いします」

「そうだな……まず何から話せば良いのやら……」


 どうやら込み入った話があるらしい。

 それならあたしから切り込んでいくしかないか。


「まずダンジョンを探せと言われましたがどのような物を探せばよろしいのでしょうか?」

「そうだな……出来るだけ近場のがいい。洞窟系統が理想だ」

「近場の洞窟系……出る魔物は?」

「ゴブリンが理想だ、なんなら大蝙蝠でも良いぞ」

「なぜダンジョンを探せと? 騎士団なら独自の情報網を使えばそれくらいの情報を得れるでしょうに」

「確かに独自の情報網はある。しかし今回は町の外の事だからな。我々には迷宮を捜索するのは専門外だ」

「町の外……人間が犯罪を犯したわけじゃないってことでしょうか?」


 あたしの問いかけに沈黙で返す団長。こういうときは素直に肯定と見たほうが良いわね。

 話を聞いているうちになんとなくだが団長の考えが読めてきた。

 早速キーワードだけを抜き出して見る。

 ゴブリンや大蝙蝠、近場の洞窟。騎士団と町の外……。

 点と点を結んで出てきた自分の考えを思い切ってぶつけて見る。


「もしかして……町の中に魔物が侵入したんですか?」

「うっ!?」

 

 団長が言葉に詰まった。顔も少し青ざめている。どうやら正解ってことらしい。

 騎士団はこの町で治安を預かる組織。外部から魔物の侵入を阻止し、内部では犯罪者の捕縛などを行う。

 だからあたしも街の住人も税金を払う。のだがその組織が事もあろうに魔物の侵入を許したのだ。

 これでは職務怠慢といわれても仕方が無い。

 

「では発端となった魔物の侵入からお願いします」

「分かった。だが中身は出来るだけ内密に頼む……」


 掻い摘んで説明するとこうだ。

 一週間ほど前、町の壁の一部が破損していることを近隣住民が発見した。

 当初は壁の老朽化が進んでいると思われていた。

 なので板を当てて応急処置を施したのだが……。

 後日、その板はあっさりと剥がされ、破損は穴となっていた。


 そして町娘の一人が犠牲になった。


「犠牲? 殺されたってことですか?」

「いや、そうじゃない」

「そうじゃない? まさか連れてかれて慰み者に……」

「うむ、その系統の話だ」


 顔を少し赤くしながら団長は咳払いをする。

 こう言っちゃなんだけどこういう性的なモノに対してイマイチ実感がわかない。

 元が男だからなのか、はたまたそういう眼にあってないから軽視をしているのか。

 しかしそうだとしてもやっぱり許せない自分がいる。

 

「話を総括すると……。ゴブリンの巣穴を探せ。ということですね?」

「ああ、そうだ」


 回りくどい話をしていたが他人の失態をもみ消せ。ということらしい。


「分かりました。引き受けます」

「頼む」


 騎士団長が頭を下げるとあたしも同じように頭を下げ、そのまま部屋を出て行った。



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