第一話 冒険者候補生 アカネ
注意
・アカネ編は三人称視点で書かれています。
混乱するかもしれませんがご了承をお願いします
「ZZZ……」
一人のが少女が机に屈服している。いい夢を見てるのか静かに寝息を立てていた。
窓際に近いこの席から爽やかなそよ風がそっと流れ込む。
風は幼さを含んだ彼女の顔を優しく撫でた。そして木々が揺れると同じように彼女の栗色の髪が風でなびく。
しかしそんな彼女を揺さぶるものがいた。
「アカネ、アカネちゃん!」
「う、ううん、もうたべられましぇん」
「こら! 何を寝ぼけてるのよ!」
「はっ!?」
誰かの怒鳴り声で彼女が目を覚ます。
寝ぼけ眼で辺りを見渡すとそこには二人の少女がいた。
片方は勝気な雰囲気。
寝ぼけているアカネに対して腕を組んで不機嫌そうな顔をしていた。
長いピンクの髪の毛はくせっ毛なのか、軽く縦にロールをしていた。
もう片方はおっとりとした雰囲気。
起こされたアカネに優しい笑みを向けている。
深い紫のストレートな髪が印象的でメガネをかけている。
どちらもアカネと呼ばれた少女も同じように水色の制服に身を包んでいた。
「あっ、ローラちゃんにイリアちゃん!」
「おはよう、アカネちゃん」
「二時限のサウス先生、あんたの顔見て完全に呆れてたわよ。ここまで爆睡するなんて……って」
勝気な少女ことローラが締まりの無い顔のアカネに深いため息を付く。
そんな雰囲気を全く気にも留めず、アカネをフラフラと頭を世話しなく動かしている。
おっとりとした少女ことイリアはアカネの口元に付いていたヨダレをハンカチでぬぐった。
というのもアカネが授業が始まってわずか十分足らずで眠りこけてしまったからだ。
もともと授業がつまらないことで有名なサウス先生だったが、特に怒ることも無くアカネをそのままにしておいた。
『起こしたとしても寝てしまうならそのままで良い。苦労は後ですれば良い』
と冷酷なのか、日和見なのか分からない言葉をかけ、そのままにしておいたのだった。
尤も、生徒のほとんどは後のテストでひどい問題を作ることをうすうす感じ取っていたが……。
「あはは、ごめんごめん」
「ほら、そろそろ次の授業の準備!」
席から立ち上がると大きく伸びをする。余りに長く眠っていたのか妙に体が鳴る。
そのまま少しふらついた足取りで教室を出て行く。
窓の外はこの国の気候らしく、太陽が元気良く照り付けていた。
ここはイスカ大陸の東にある小さな国オプティム。別名『夏みかんの国』。
気候が温暖なこの国では初夏の陽気が年中続いている。
そしてここはオプディム国立軍務学校。名前の通り軍に携わるものを育成する学校である。
と言っても学部や学科自体はかなり広く取り扱われており、冒険者や騎士、レンジャーなど軍人以外の人間も多数輩出していた。
しかし、そのせいか冒険者の学校と勘違いされてしまうことも多く、入学希望者のほとんどは冒険者志望ばかりになってしまった。
そのためオプティム以外の国では完全に冒険者の学校と認知されてしまっている。
廊下を歩きながら三人は雑談を続ける。
「次の授業なんだっけ?」
「初心者用ダンジョンの散策だよ、アカネちゃん」
「おお、そうだった!」
「昨日、散々眠れないって連呼してたくせに……」
ローラの言う通りアカネは昨晩、全くと言って良いほど眠れなかった。
余りの眠れなさにベッドの上で何度も転がりながら目を閉じるのを待つ、が無駄に終わった。
今度は寮の外に出て走り回って眠ろうとするがそれも徒労に終わった。
そして眠気は朝日とともに訪れ、先ほどの居眠りへと変貌していった。
「いいじゃない。アカネちゃんがいつも通りで」
「まあ、そうだけどさ」
「とにかく! 早く行かないと!」
「もう! ダンジョンは逃げないわよ、アカネ!」
「それに準備もしておかないとね」
先頭を走るアカネを残った二人が追いかけていった。
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「というわけで、ダンジョンの散策を行ってもらいます。見つけた物は自分のものにしていただいて結構。あと、薬草や毒消しなどはきちんと持っていくように!」
教師が簡易式の朝礼台で説明をしている。生徒たちは綺麗に整列をして並んでいた。
しかしアカネを初め、ローラやイリア。他の生徒たちも制服姿から今度は鎧や法衣に身を包んでいる。
その中でもアカネの装備はかなり異質であった。
全体的な見た目はオレンジ色のメタリックなスーツ。
太ももや二の腕は黒いボディースーツが身体を覆っていた。
腕には銀色の大型の手甲。脚部も同じようなレガースを身につけている。
一方のローラは簡素な鎧。通称、ライトアーマーに身を包んでいた。
ライトアーマーはフルアーマーと呼ばれるつま先から頭まで覆う重圧な鎧とは違い、胸部や腰部などを守る程度である。
また服の上から着ることができるため女性冒険者の人気も高い。
巷ではライトアーマーとインナーの組み合わせでファッションができるくらいである。
そしてローラの武器は自分の身長と同じくらいの槍。これを振り回すのをアカネもイリアも何度も見ている。
最後にイリアだがオーソドックスな青いローブだった。手製なのか金色の糸で刺繍が施されていた。
手には鳥の装飾が施された杖。
「おお、これがダンジョン」
アカネの目の前には大きな洞窟が口を開けていた。
目を凝らして見ても奥が見えない。深い闇が冒険者を飲み込もうとしてくる。
「アカネは入るのは初めてだって言ってたわよね」
「うん! ローラは?」
「私? 私はあるわよ。一人は流石にないけどパパやママと一緒のときは入ったことがあるわ」
「私は初めてだな……」
「それじゃあ、そろそろ入ってください! まずは一班から!」
「よっしゃ! いくぞ、みんな!」
先生の呼び出しによって次々と生徒たちがダンジョンへと入っていく。
アカネは第八班。すでに二十人以上の生徒がダンジョンの奥地へと向かっていった。
そしてアカネたちも洞窟の奥深くへと進んでいく。
「おお、ここがダンジョン!」
「もう、さっきと同じこと言ってるわよ」
ジメジメとした薄暗い洞窟の中をアカネは世話しなく見渡す。
ゴツゴツした岩に緑色したコケが無数に生えている。奥の方は暗く、全く見通せない。
耳を澄ましても周囲には自分たち以外の声だけしか聞こえなかった。
どうやらかなり広いようで誰ともすれ違う様子は無かった。
「……暗いね」
「うん」
「気をつけなさいよ、特にアカネ! あんたはうっかりなんだから!」
「分かってる!」
と言った矢先、いきなり地面が崩れ落ちた。
すかさずローラが手を伸ばし、アカネの身体を奈落へと落ちるのを阻止する。
出入り口に用意してあった初心者用の簡易トラップ。
余所見をしていたらあっという間に落下するだろう。
「もう! 言ってるそばから引っかからないで!」
「うう、ごめん」
イリアがバッグから小さなランタンを取り出すとそこに炎の魔法で火をつける。
暗かった周囲が明るくなり見通しが立った。アカネを先頭に三人は進んでいく。
三人で行動するときはいつもこの陣形にしていた。
「この日のためにランタンを買っておいて良かったね」
「松明だと腕が疲れるしね、それに熱いし……」
「ねえ、あれ!」
ゆっくりと進んでいく中、アカネが通り道の脇を指差す。
金色の装飾が施された茶色の木箱。通称、宝箱だった。しかもかなり大きい。
三人は目を輝かせながら宝箱に近付く。
「ラッキー! ねえ、イリア! 開けてくれる?」
「うん、いいよ」
早速、イリアが宝箱に手をかける。 ”開錠”のスキルを持っているのはイリアのみ。
静かな洞窟の中で金属のぶつかる音が何度も響いている。
スキルの無い他の二人は固唾を呑んで見守るしかなかった。
「……どう、イリア? 開きそう?」
「構造は簡単だからもうすぐ開くよ」
そしてカチリという固い音が周囲に響く。イリアが宝箱の蓋に手をかけ、中を確認しようとする。
そのとき宝箱から白煙が勢いよく噴出した。三人の視界は瞬く間に白一色となる。
「な、なにぃ?」
「いったい何なのよ!?」
「ゴホ、ゲホ!」
煙が収まると口の開いた宝箱に紙が一枚のみ。そこに書かれていたことは――。
『スカ! ごくろーさん』
「……………きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
ローラは紙を手に取ると勢い良く破り捨てる。そしてさらに破ったのを何度も踏んづける。
アカネはむせているイリアの背中をそっと撫でてていた。煙を直接受けてしまいやたらと咳き込んでいる。
「うう、ごめんね」
「イリアちゃんのせいじゃないよ」
「もう、あったま来ちゃう! こうなったら絶対、宝を探し出してやるんだから! 行くわよ、二人とも!」
「う、うん!」
「おー!」
再び三人はダンジョンの奥へと進んでいく。
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奥へ奥へと歩みを進める途中、アカネが足を止めた。二人もそれに釣られて足を止める。
「どうしたの?」
「……何かいる」
「え?」
アカネの言葉に他の二人も周囲に視線を向かわせる。
こういうときのアカネの言葉を二人は信頼してるのだ。
三人はじっくりと周囲を見渡す。すると通路の先で小さな何かが動いた。
「見て、ゴブリンよ!」
ローラが指差した先には小さな生き物がうろついていた。
緑の色をした身体。人間の半分以下の身長。手には粗末な武器を持っている。
ゴブリン、この世界に存在する魔物の一種である。
力も速さもなく、賢さもあまり無い。いわゆる雑魚と呼ばれる魔物だった。
しかしそれでも十分凶悪な魔物であることは認知されている。
何の装備もなしに戦おうとした命知らずの男が無残な姿を晒すこともあった。
ローラとイリアはそれぞれ手持ちの武器、槍と杖を強く握り締める。
二人ともやたらと力を込めているのか、手が震えていた。
「二人とも、準備は良い?」
「いつでもいいよ」
「んじゃ、戦闘――」
「だりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
だが全てを言う前にアカネが大きく蹴りを放つ。
そのときに放たれた衝撃波がゴブリンたちをまとめて吹き飛ばした。
ゴブリンたちは一瞬にして宝石へと変わり果てる。その間、わずか三秒。
「やったぁ! もう大丈夫だよ!」
「……んもう! あたしたちの分も残しておいてよ! 実戦経験がつめるチャンスだったのに!」
「あはは、ごめんごめん」
頭で手を組みながら苦し紛れに笑うアカネにローラは不満をぶつける。
その光景を見ながらイリアはただ苦笑するのみだった。
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三人はさらに奥へと入っていく。ローラが懐にしまって置いた砂時計を見る。
中の砂は半分ほど落ちたことから、ダンジョンに入ってかなりの時間が経っていた。
最初の宝箱以外、これと言って成果が無い。そのことに焦りを感じ始めていた。
「あっ、また宝箱があるよ」
先ほどと同じような金色の装飾を施された木箱があった。
しかし先ほどとは違い赤い色をしている。
「ラッキー! レア物じゃない!」
「うん、あれなら挽回できるかも」
赤い宝箱は高価なものが入ってることが多い。
例えそうでなくてもなにかが入ってることは期待できる。
しかし宝箱の前には絶壁とも言える谷があった。
ふと谷底を覗き込んでみる。小さな石が落ちるがその音は全く跳ね返ってこなかった。
三人は思わず顔を見合わせた。
「……どうする?」
「そんなの簡単だよ、飛び越えればいい!」
「バカ! この前のことを忘れたの? この前大きくジャンプして天井に頭をぶつけて、そのまま落下したのは誰よ!」
「えっと……誰ダッタカナ?」
「アカネちゃん……」
そっぽを向いて口笛を吹いてるアカネにローラとイリアは呆れるしかなかった。
アカネは以前体育館を思い切りジャンプをして頭をぶつけて落下すると言う珍事を行った。
ローラもイリアもアカネの脚力は認めている。
だが微調整というものが苦手な彼女が、飛び越えようとして谷底へ落ちるのは火を見るよりも明らかであった。
「とにかく、簡単に向こう側へ行くのは不可能ね」
「そうだね。こういうのなら絶対何か仕掛けがあると思うし」
「うん、探そう!」
三人は壁や地面を調べ始める。
注意深く床や壁を観察し、丁寧に砂や岩肌に触れ、なにか無いか確かめる。
「みつけた!」
「これね!」
「あったよ!」
三人とも同時に仕掛けを発見する……がここでみんな口を閉ざしてしまった。
その理由は――。
「……やっぱりどれかがトラップだよね」
「そうだね……」
気まずい沈黙が流れ、全員の動きが止まった……。
しかし、顔自体は三者三様であった。
おしたい、おしたい! と興奮で顔が赤くしているアカネ。
不安と恐怖で少し肩が震えているイリア。
色んなシミュレーションをしてるのか、しかめ顔のローラ。
そして出した答えは――。
「ウジウジしてても仕方ないわ! アカネのボタンを押しましょう」
「うん! 分かった!」
ローラの言葉にアカネがスイッチを押す。すると天井から“黒い何か”がドバっと降りてきた。
“黒い何か”を思わず手にとって見る。正体は……ゴキブリであった。
ゴキブリが……一斉に動き始める!
「ご、ごきぶりぃ!?」
「きゃああああああああああああああ!」
「こ、こっちにこないでよ!」
三人がてんてこ舞いしているうちにゴキブリはどこかへ行ってしまった。
身奇麗にするために聖水を頭から被るアカネたちだったが、先ほどの光景が忘れられないのかみんな身体を震わせている。
「お、驚いたぁ……」
「驚くなんてモンじゃないわよ! このダンジョンを作った人がいるならその人、絶対に性格が悪いわ!」
イリアの呟きにローラは頭を抱えて雄叫びを上げる。
ゴキブリをモロに受けたアカネはその場で呆然としていた。
何とか気を取り直すと再び仕掛けのスイッチへと視線を移す。
「次は誰のを押す?」
「イリア、お願い」
「うん、わかった」
今度はイリアがスイッチを押す。すると突然何かが降って来た。
アカネのときとは違い、岩が落ちたかのような重い音。
周囲に砂埃を巻き上げ、こちらへと顔を向けた。
両腕は長いが足は短くアンバランスな姿。能面のような顔に目や口を思われる穴が開いていた。
白と黒のまだら模様が印象的な魔物、宝箱を守るガーディアン、クレイゴーレムだった。
「まずい! ゴーレムだわ!」
突然の来訪者にローラとイリアの顔が青ざめる。最下級とはいえ相手はゴーレム。
普通の冒険者ならば簡単にやられてしまうだろう。
欲に駆られるとろくなことが無いと言わんばかりにゆっくりとした足取りでこちらへと向かってきた。
「ど、どうしよう?」
「こうなったら倒すしかないわ!」
「!? 危ない!」
三人はすぐさま戦闘態勢に入ろうとする。がゴーレムの動きは思った以上に速かった。
腕と足に力を溜めて一気に間合いを詰めて二人を押し潰そうとする。
だがとっさにアカネが二人の間に入り、そのまま突き飛ばした。
地面を転がりながら難を逃れた二人だったが、アカネはがゴーレムの体当たりを貰ってしまう。
そのまま勢い良く吹き飛ばされ、洞窟の壁に叩き付けられた。
地響きをさせながら洞窟内に土煙が舞う。茶色の霧にアカネの身体も包まれた。
「アカネ!」
「アカネちゃん!」
「大丈夫! それよりもゴーレムの方をお願い!」
土埃の中からアカネは大声を上げた。二人はアカネの言葉を信じてゴーレムのほうへ向き直る。
ゴーレムも受身を取るのを失敗したのか転んだままもがいていた。
ローラはチャンスは今しかない、槍を構えて駆け出す。
「イリア、サポートをお願い!」
「うん、任せて」
イリアが”防御上昇”をかけるとローラは多くク飛び上がり槍を突き出す。
しかし槍はゴーレムの身体を全く通さなかった。カァン、と甲高い音とともに大きく宙を舞う。
そのまま何とか着地を決めるが、先ほどの攻撃はゴーレムの身体が少しそがれた程度だった。
「かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい! 固すぎるわよ! これ粘土でしょ!?」
「粘土って焼いたら煉瓦になるんだよ、だから固いのもある意味当たり前なんじゃ……」
「そういうツッコミは今は聞きたくない!」
しびれる腕を振りながら悪態を付くローラ。
一方、どうにかと体勢を立て直したゴーレム。巨体を必死に回転させては二人の方へ向き直る。
そして先ほどと同じように両腕と足に力を溜めようとする。
「どぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
しかしその前にアカネの拳がゴーレムの横顔を引っ叩いた。
ローラのときとは違い、轟音を上げてゴーレムが地面の上を勢い良く転がって行く。
「アカネちゃん!」
「お待たせ!」
「大丈夫? どこか怪我をしてない?」
「大丈夫、大丈夫! この位のは怪我には入らないよ!」
一発を喰らったゴーレムは立ち上がろうとジタバタともがいている。
顔にはひびが入っているが倒すとまで行かなかったようだった。
「ああん、もう! しぶといわね!」
イライラしているローラにアカネが囁いた。
「二人とも、時間を稼いでくれる?」
「……しょうがないわね、一発で決めなさいよ」
「分かった、アカネちゃん!」
ローラとイリアがゴーレムに向かっていく。
二人は攻撃ではなく回避することに専念しつつゴーレムの周りを回り始めた。
当のゴーレムはどちらかに照準を決めることままならず、翻弄されている。
その間、アカネは呼吸を整え始めた。
意識を上から下へ、胸から指先へ。“流気”と呼ばれる特殊な戦闘技術である。
魔力とも違う“気”というエネルギーが身体を流転し、巨大なエネルギーへと変貌していく。
エネルギーを一点、右の掌へと集めていく。オレンジ色の稲妻がアカネの周りに迸る。
「今よ! アカネ!」
「フラッシュ・バスタァァァァァァァァァァァァァァ!」
右手から眩い閃光が放たれる。閃光はゴーレムを身体を貫き、そのまま壁へと叩き付けられる。
そして激しい地響きを立ててゴーレムの身体に亀裂が入り、大地へと屈服した。
「いやったぁ!」
「やったじゃない、アカネ!」
「アカネちゃん! 良かった!」
手を上げて喜ぶアカネにローラとイリアの二人がすぐさま駆け寄る。
みんなボロボロであったが顔には笑顔が溢れていた。だがすぐにイリアは我に返る。
「それよりも宝箱! これ持って返らないと単位もらえないよ!」
「うん、それじゃあお願い! ローラ」
「任せといて!」
ローラが最後のスイッチを押すと谷を越えるためのつり橋が降りてきた。
「ローラのが正解だったみたいだね」
イリアの呟きを聴きながらつり橋を渡っていく三人。
宝箱の前まで来ると早速イリアが鍵を開けようとする。
だが鍵がかかってないようで宝箱は簡単に開いたのだった。
中身は――。
「……ナニコレ?」
中に入っていたのは一輪の花だけだった。
白く小さかったが今でもみずみずしい生気に溢れている。
だがそれを見たローラは深いため息をつく。
「はぁ……せっかくゴーレムまで倒したっていうのに出てきたのはこれぇ?」
「……ちょっとまって……このお花から凄い魔力を感じるよ」
「本当!?」
イリアがそっと花を手に取り、じっくりとを眺めた。
魔法の感知が苦手なアカネや疑いの眼差しを向けているローラも花に触れてみる。
花から青白い魔法のオーラが見えてきた。
「ホントだ!」
「じゃあこれ……もしかしてレア?」
「その可能性はあるよ!」
ローラは砂時計を見る。そろそろ砂が尽きかけている。
「そろそろ戻りましょ、レア物とってタイムオーバーだなんて情けないもの」
「うん!」
二人は大きくうなずくと元来た道を引き返していった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「というわけで探索に成功したのは四パーティー!」
教師が高らかに声を上げる。アカネのパーティーも入っていた。
三人が見つけた花は”白夜の花”と呼ばれるレアリティが高いシロモノだった。
帰還してきた頃には時間はギリギリ。ほとんど滑り込む形となった。
「あーくそ、あそこでトラップに引っかからなけりゃあな」
「こっちは魔物とであってやられたぁ……」
「タイムロスさえ無ければなぁ……」
「静かに! 反省は良い事だけどここですることじゃないでしょ?」
教師は注意するがざわめきは収まらない。
それだけダンジョンという場所が魅力的だったのだろう。
深いため息をつくイリアが周囲を見渡す。アカネの姿がどこにも見えなかった。
近くのローラに聞いてみることにした。
「あれ? アカネちゃんは?」
「……あそこ」
ローラが指した方向にはアカネが近くのリンゴの木に登っていた。
お腹が空いているのか、大きなリンゴに手を伸ばそうとしている。
「こら! アカネさん! 勝手にリンゴを取らないの!」
「えへへ……」
教師の叱責を受け、アカネはばつの悪い笑みを浮かべる。
こうしてアカネは無事単位を取得することが出来たのだった。
>アバター01へとチェンジをします。




