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七話 さらばリリア! バカ貴族と金のゴーレム現る! その2

 そして一週間という長い時間が過ぎた。

 その間、あたしはあたしで冒険の準備をしていた。

 ……んだけど、案の定クエストは停止。というか何もない。

 みんな戦争の準備で忙しいらしい。今もこのギルドの中ですら静か。

 いつまでも何もない掲示板を眺めている訳にはいかないか。

 軽くため息を付きながら、ギルドから外へ出てみる。


「来たぞ! バカ貴族のバカ野郎だ!」


 ちょうどタイミングよく、見張り台の上の誰かが叫ぶ。

 もはや完全にバカ貴族で通ってしまっている。

 あたしも街の人達もみんな、これから来るやつをバカ貴族と呼んでる。


 あたしはすぐさま街の外壁に上ってバカ貴族の軍隊を見る。

 金属の鎧を着込んだ強面男たちが、きれいに列を組んで進んでいる。

 手には槍や弓。疲れた様子も、乱れる様子はない。


「……結構ガチっぽいわね」


 あたしは軍隊を見ながら呟いた。

 そう、ガチの軍隊がガチの隊列を組んで、淀みも歪みもなく進んでくるわけだ。

 普通だったら、パレードの行進みたいに実に壮観だったかもしれない。

 でも目の前にあるのはこれから戦争を始める軍隊だ。

 本当に戦争をするつもりなのかしら、と思わず固唾を飲んで見守る。


 そんな奴らがガイアの町の門前までくると軍隊の列が二つに割れた。

 その作られた道の真ん中を、お神輿みたいなのに乗って誰がかやってくる。

 お神輿が門の正面に来ると高らかに宣言をした。


「ガイアの町の諸君! 私が貴族のポロドーンだ!」


 お神輿に乗ってやってきたのは、これまたいかにもな貴族だった。

 アホっぽい面。波打つエリ巻。横ロールの髪型とヒゲ。腕にはヒラヒラした短冊みたいなの。

 はっきりと言おう、バカ貴族という言葉がコイツのためにあるくらいだった。

 セルリアみたいな帝国貴族とはやっぱ違うわね。


「代表者よ、出てくるが良い!」


 バカ貴族の問いに、答えるかのようにギルド長が門前に現れる。

 どうやらギルド長が町の代表として前に出てくれるらしい。

 実にありがたいわね、うん。


「貴族のポポロンボン! 何故この街にやってきた!」

「ポロドーンだ! 人の名前を間違えるな!」


 名前を意図的に間違えることで相手を挑発するギルド長。

 やるわね、ああやって煽って冷静さを失わせるのね。

 それに嫌味の一つくらい言ってやりたいところ、みんなの気持ちを代弁したのね!

 ……と思ったら顔を真赤にしていた。どうやらテンパってトチってしまったようだ。

 とにかく気を取り直して再び宣言をするポロドーン。


「貴様らが手にしてる無限に金を生み出す魔法道具。それは経済を破壊する悪魔の代物! よって我々ポロドーン家が管理することにした!」


 はっきりと言えば無茶苦茶な暴論だ。

 無限に金を生み出すとかなんとか言ってるが、んなこと言ったら魔物を倒したことで生まれる宝石の類で経済は崩壊しているはず。

 そんなことはなく、あたしたちの街や他の都市郡も普通に経済が回っている。

 更に言うのならこの地域を支配しているのはこのバカ貴族の一族ではない。

 もっと言うなら持っていく道理もない。

 そんなことはどうでもいいと言わんばかりに、みんな文句を言い放つ。


「そっちこそ! そのためにいかつい男たちを連れてきて、いったい何を考えてるのよ!」

「そもそも金を生み出すと決まったわけではない! もしかしたら悪魔を呼び出す機械かもしれないぞ!」

「そうだそうだ、訳の分からんもんを持っていくなんて浅はかだ!」

「というか、ポロドーン家って何よ? そんな貴族聞いたことがないわ!」

「帰れー! 帰れー!」


 みんな一方的に言い放つ。

 だがバカ貴族は居にも返さず、軽く手を振るう。

 すると突如、爆発が沸き起こった。

 爆発したところを見ると黒煙が立ち上り、外壁の一部が大きく削り取られている。

 まさか……。


「ふふん、見たか! 我が魔術!」


 大笑いをするバカ貴族。

 黙らせるためとはいえ、爆発魔法を使うなんて趣味が悪いわね。

 死者が出たらどうするつもりなのかしら? ……金で解決するだけか。

 それはそうとさっきの爆発であたしの方も覚悟が決まった。 

 ヘンダーソンさんには相手のこと知らないから、と言って戦うのをためらったけど……。

 あちらの言い分とやり方はよくわかった。

 なので、あたしが代表としてこっちの返答を聞かせてやろう。


「ふん! それが何だって言うのよ!」


 あえて強気の発言でみんなを鼓舞してみる。

 さっきの威嚇で言葉を失うようなやわな奴らじゃないことを知っている。

 それにああまでやられてこちらも黙ってる訳にはいかない。


 そっちがその気ならこっちその気だ!


 覚悟を決めたあたしは魔王の力で生み出したバズーカを担ぐ。

 ズシッと重いバズーカ。それに付いているスコープを覗き込んでみる。


 照準、問題なし! 遮蔽物、なし! 距離算出、OK!


「ファイアー!」


 雄たけびとともにトリガーを引くとロケット弾が飛び出していく。

 ロケット弾は空を切りながら飛んでいき、貴族の斜め後ろに着弾、爆発が起こった。

 景気のいい音をさせて、地面が大きく削られる。

 大地が大きく焼けた跡を見ながら呆然とする貴族。実にいい気味だ。


「どうよ! あんたの魔力なんて怖くもへったくれもないわ!」

「いいぞ! リリア!」

「それでこそガイアの町の冒険者だ!」


 おかしな喝さいを浴びながら、再びバズーカを貴族の方へ向ける。

 向けられた方は青ざめた顔。このまま吹き飛ばしてやろうかしら?

 貴族の方は歯噛みをしつつ大声を上げた。

 

「うぬぬぬぬ! ええい、かかれぇ!」

「おお!」

「こっちもいけぇ!」

「おお!」


 お互いの号令が飛び交い、ついに開戦! たくさんの兵隊と冒険者が剣を携えて向かっていく。

 剣と剣がぶつかる。魔法と魔法がせめぎ合う。雄叫びがいたるところから聞こえてくる。

 こうして見るとやっぱ生は全く違うわね。


 ……と、傍観している場合ではない。

 チンタラしてたらこんな馬鹿騒ぎで死者が出るかもしれないもの。

 あたしはバズーカを横において、スナイパーライフルを生み出す。

 ヘンダーソンさんの言った通り、あのバカ貴族を仕留めればとっととお帰りしてもらえるはず。

 中身は流石に銃弾という訳ではなくいつもの通り、麻酔弾。

 頭を吹き飛ばす、なんていうスプラッタはあたしは好きではないからだ。

 さっそくライフルをバカ貴族の方に向けて、スコープを覗き込む。

 だが次の瞬間!


「うあ!?」


 思わず声が出た。というのも目の前に矢が飛んできたからだ。

 すかさず周囲を見渡してみると列をなした弓兵隊が。

 ……やばい! すぐさま壁へと隠れるあたし。

 矢は石の壁を飛び越えそのまま降り注いだ。このままじゃ不味いわね……。

 再びバズーカを肩に担ぐと再び場所を変える。

 そして再びスコープを覗き込んだ。照準は弓兵隊。


「ファイア!」


 ロケットランチャーのトリガーを引くと、空を切ってロケット弾が着弾する。

 赤い爆発とともに轟音が響き、弓兵隊の人が大きく吹き飛ばされた。

 衝撃で何人かが地面を転がる。中には黒焦げの人が見えた。


 …………さ、流石に死んでないわよね?


 恐る恐る、壁の隙間からそっと覗き込んで見る。

 アフロヘアーになりながら口から煙を吐いてる。死んでないみたいね。


 胸を撫で下ろすとバズーカを横に置き、再びスナイパーライフルを構える。

 距離良し、遮蔽物無し、風も激しくない。

 再度スコープを覗いてバカ貴族の顔を捉える。

 向こうはこちらに気づいていない。指示を飛ばすことに夢中だった。

 動きが止まったのを見はからい、今だ! と、トリガーを引く。

 しかし同時にカンっ!と乾いた音が響く。

 音速を超える弾丸がなんか硬い物に当たってどこかに行ってしまったのだ。


「DE! 一体どういうことなの!?」

【スキル:【遠距離攻撃無効】の効果です】


 DEがわざわざスローモーションで解説をしてくれる。

 手のひらに映し出されたディスプレイには、銃弾が頭に当たる寸前にあらぬ方向へ行ってしまっている。

 卑怯にもほどがあるスキルだった。というかそんなスキルあったんだ……。

 となるとスナイパーライフルで倒すことも、バズーカでも倒すことも不可能となる。


「ふははははははは! 暗殺対策でいざというとき付けていたスキルが役に立ったな!」


 意外な慎重派なバカ貴族にあたしは思わず感心をしてしまった。

 ……というかそもそもそういうのを考えられる頭があるなら、こんな馬鹿げたことをしないんじゃないかしら?

 

 すぐさま気を取り直し、解決方法を考えてみる。

 問題はバカ貴族を張り倒すには接近戦、つまり剣とか槍で倒すしかないということ。

 ……どうしたもんかしら?


【スキル無効化を取得できますがどうしますか?】

「パス! 今回の件でそんなもの得たら目立つだろうし持ち腐れるのは目に見えるわ」


 流石にあんなの相手に強スキルを得ることはやりたくない。

 それにあまりにも強い力はあたしはどうにも好きになれない。

 強い力なら”他のあたし”が持っているものね。

 とりあえず今は……。


「戦況を報告して頂戴」

【現在、貴族軍と冒険者軍の戦いは拮抗しています。ただ冒険者軍が徐々に押しています】


 おお、冒険者軍もやるわね。いったいどんな雰囲気なのかしら?

 DEが戦況の一部を映像として見せてくれた。


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「ぐええええええええええええええええ!」


 二人の男が暑苦しい顔で謎のプロレス技、締め技をかけられてる。

 たしかなんとかホールドだったかしら?

 顔は鬼気迫る状態で、お世辞にも戦ってる顔……なんでしょうけど正直変顔でしかない。

 結構きついのか、腕をタップしてる。リングではないため、試合は続行である。



「うわああああああああああああ!」

「げっへっへっへっへっへっへっへ!」


 一人の兵士が紫色した剣を振り回すおかしな奴に追いかけられている。

 あっ、捕まったわ。剣で頭を丸刈りにされてる……。

 しばらくして兵士の頭には傷一つ無い。きれいな肌色がそこにあった。

 


「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「うるせぇ、その鎧を引っぺ剥がしてしてやる!」


 よっぽど鎧が欲しいのか無理やり鎧を奪おうとしてる冒険者がいる。

 完全に山賊である。剥ぎ取った鎧をその場で着る冒険者。

 ……サイズが合ってないのでなんか鎧がメリメリ言ってる……。


 ……おかしなものばかり見ていたが、それでも徐々に押しているのはわかった。

 開戦からそこそこ経過したが、ガイアの街の門前で、剣と剣。魔法と魔法。お互いがお互いにぶつかり合っている。

 こうしてみると冒険者が強いというのもなんとなく理解できた。

 バカ貴族の兵士の方は練度が低いのか、冒険者軍の斬撃ならぬ打撃で次々とやられていく。

 それでも完全に優勢とは言えないらしく、一部の兵士たちが抵抗しているようだった。


 ……よく見ると兵士も冒険者も倒れたフリをしてお互いに端っこに行ってる。

 完全に観戦するつもりね。まったく本当に良い根性してるわよ、うちの街の奴らもあっちの兵士も。


「さて、どうするか……」


 一方のあたしは悩む。遠距離が通じない、となると接近戦に移行するしかない。


【現在、あなたの接近戦テクニックではあの貴族に対抗するのは分が悪いでしょう】


 どうやらあの貴族は顔に似合わずそこそこ強いらしい。

 困ったものね。どうしたらいいのかしら?


【おすすめはトラップによる捕縛です】


 トラップかぁ……。落とし穴でも作ってみようかしら?

 が、そう思ったがすぐに考え直す。

 いくらなんでも落とし穴に引っかかるようなタイプには見えない。

というのもあのバカ貴族はお神輿みたいなのに乗っかってるからだ。

 いざとなったらお神輿から脱出すれば良い。担いでる人は可愛そうだけど……。


 なので落とし穴以外の、別の手段を考えてみる。

 …………。何も思いつかない。なんか閃いて欲しいのだが何も思い浮かばない。

 こういうときに発想力が貧弱な自分が恨めしかった。


「ああ、もう! どうしたら良いのよ!?」


 やけになって駄々っ子のように手足をバタバタさせようとする。

 だが次の瞬間だった。


「こら! それはやめろ! 泥がついたらどうするんだ!?」


 バカ貴族が泥でぐちゃぐちゃの道を避けている。

 どうやらあのバカ貴族は泥まみれになるのがいやらしい。

 まあああいう奴らは何でもかんでも不衛生だの何だの言ってくるわよねぇ……。

 そういえばバズーカに対して青ざめたのもそれが理由なのかしら?

 ……うん?


「……これは……使えるかも!?」


 あたしはすぐさま外壁から一気に降りる。

 やることは決まった!

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