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七話 さらばリリア! バカ貴族と金のゴーレム現る! その1

「さて、初めまして。ってことッスね。……どうしたんスか?」


 あたしたちはじっと最後の一人。ステラの顔を見る。

 よりにもよって最後が子持ちの人妻だとはあたしも思ってなかったからだ。


「まさか七人目がこういうのだなんて驚きだなぁ」

「私もこういう世界があるのを初めて知ったッス」

「全部自分ってことは初めてね」


 興味津々でステラを見るマキナ。

 あたしは目の前の彼女の存在を見ながら、自分の力のこと”魔王の力”を整理してみる。

 魔王の力とは事象に逆らうことが出来る力である。

 無から有を生み出す力。本来ならば根拠や根源が存在しないものを成立させる力。

 簡単に言えば世界に対してのチートだ。あたしに出来ないことなぞ存在しない。

 ……といいつつ、この力でどこまで出来るか全く分かっていない。


「過去を無理矢理作り出すことも、未来を強制的に決めることが出来るわ」

 

 あたしの疑問に対し、そう答えるガブリエル。

 取るに足らない。といった感じでサラリと言う辺り、あたしはちょっとゾクッとする。


 場合によっては他人の過去や意識を改ざんしたり、未来を悲惨な末路にすることだってできるのだから。

 過去を無理矢理作り出す、というのは恐らくあたし以外の六人だろう。


 ありもしない村から飛び出したアカネ。

 侯爵の存在しない娘として生まれたセルリア。

 不思議な道具を持つ、謎のディーラーマキナ。

 いつ建ったか分からない洋館に住まうガブリエル。

 傷一つ付かない無敵の姫ヴェルダ。

 ありとあらゆるを生み出す錬金術を使うステラ。


 この世界に住まう者はだれも彼女(あたしたち)に疑問を感じない。

 そこにいるのは当たり前、疑問すら思い浮かぶことはないという感覚なんだと思う。


「それで、あなたはこの世界で何を望むのかしら?」


 言葉を漏らしたかのようなガブリエルの自問に、あたしは答えることが出来ない。

 というのも現状で凄く満足してるのもあった。

 言いよどむあたしに対し、他の面々が次々に口を開いた。


「私、お師匠と同じくらい強くなる! お姉ちゃんを助け出す!」

「私は今は貴族の一員として恥じない行動をしたいです」

「僕? エリンの行先を見届けるよ」

「知らん! 目的がないまま生きるのも良い事だろう?」

「子供たちを探すッス。自分の娘は大事ッス。いつとか場合とか関係ないッス」


 アカネ、セルリア、マキナ、ヴェルダ、ステラの五人がそう言ってくる。

 それはあたしが自分(みんな)に与えた”ただの理由付け”なんだろうか?

 それともこの世界に”生きている自分”としての目的なんだろうか?

 あたしには全くわからない。最後にガブリエルが一言。


「私は……勇者様の生誕を望みますわ」


 それは完全に惚けた顔をだった。こいつにも欲望というものがあるらしい。


「……とりあえず食うのに困ることだけは避けたいわね」


 それぞれが目的がある中、あたしはそういうしかなかった。



 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 自分会議が終わると同時に朝を迎える。

 あたしはリリアだ。他の誰でもない。

 でも境界線が実に曖昧だ。記憶はあるが経験や身体が伴ってない。

 それでもピアノを引いたことも、額に剣を受けたことも、全部覚えている。

 でもその他人の経験を自分で活かせることはあんまりない。

 というか生かせることがない。全く神様の視点って奴も大変ってことね。


「おはよう!」


 そんな気分を振り払うようにいつも通りギルドにやってくる。

 しかしギルドの中はてんやわんやの大騒ぎだった。

 みんな慌ただしく走り回っている。

 ある者は書類を手に右往左往、またある者はひたすらペンを走らせている。

 あっ、誰かがぶつかった……。

 とりあえずあたしは受付にいるミリィに聞いてみた。


「いったいどうしたのよ?」

「攻めてくるんです!」

「攻めてくるって何がよ?」

「軍隊です!」

「軍隊!? なんで軍隊が攻めてくるのよ!?」

「実は……」


 ミリィから聞いた話をかいつまんで言うとこうだ。

 ある冒険者がダンジョンから、無限に金が出てくるアイテムを発見して持ち帰った。

 それを聞いたどこぞのバカ貴族が欲しいとねだった。

 冒険者とギルドは当然のようにノー! 引き渡しを拒否した。

 冒険者風情が生意気な、許せん!

 とバカ貴族が郡たんを率いて戦争を吹っかけてきた。らしい。


 あまりのことにあたしは頭を抱える。

 欲しいと思うだけならまだしも、こんな簡単に軍が動くというのも問題だ。

 国際問題とか内紛とかそんな感じの話ではない。完全に盗賊、強盗じゃないの!


「なんて奴なのよ……。それでギルド長は?」

「徹底抗戦の構えです! 冒険者の沽券に関わりますので」

「でしょうねぇ。けどそれってあたしたちも軍隊と戦えってことになるのかしら?」

「かもしれませんね」


 ミリィが口調は軽いがかなり真剣な面持ちで言ってくる。

 なかなかハードなクエストだ。人間相手の戦いなんて正直、これが初めて。

 山賊とかを張っ倒したりしたことはあるが……。

 それとはまた違った感覚を受ける。人の生死が関わる話だ。

 ”マキナ”や”ガブリエル”みたいに平然と殺せる精神をあたしは持っていない。


「で、他の奴らは?」


 あたしと同じ気分の奴はいないのか、とギルドの中を見渡す。



「へっへっへっ、ついにコイツを使う時が来たぜぇ!」


 と、なんか紫色した危ない刀剣を持ち出す奴。

 こら、ペロペロと舐めるんじゃない。



「ああ、こんな大掛かりな事件、本当に久しぶりだぜ!」


 ドクロとか横たわる人の絵とか、いかにもヤバい表紙の魔導書を取り出す奴。

 一瞬だけど表紙についてる目玉が動いたけど……大丈夫よね?



「奴らを血祭りにあげてやる! クックックッ」


 嫌な臭いを放つ壺を持ち出す奴。

 何かしら? 硫黄とか色んなのが混じった匂いがするんだけど!?



 ……危なげな連中を尻目に知り合いを探す。

 リックの奴は? ……いたいた。


「いいか、相手は軍隊だ、隙をついてねんごろになってもかまわない! 相手を確認したら一気に飛び込むんだ!」

「おお!」


 手を挙げて雄たけびを上げる男の中からリックを見つけると、そのまま締め技をかける。


「何を、教えて、いるのよ!?」

「リ、リリア! 俺はこいつらに戦争の掟を教えてやっただけだ!」

「ねんごろとかいかにもなフレーズが聞こえたけど!?」

「リリア、それは幻聴って奴だ」

「ほほう……それならそこのあんた、リックがさっき言ったことをもう一度一定頂戴」

「相手は軍隊だ! 隙を付いて女軍人にエッチなことをしても合法! 仕方ないよね、戦争だもんね!」

「ああ、バカヤロウ!」

「あんたたちねぇ!」


 勢い任せにリックをさらに締め上げる。青ざめた顔であたしの腕を叩くが全く気にしない。

 結局、戦争の準備をしてるという特殊な状況以外、ギルドの中は何一つ変わらなかった。

 緊迫感がないというべきか、余裕綽々というやつなのか……。


 考えがまとまらないままクエストに行くのもねぇ……。どうしようかしら?

 ため息とともに思い付いたことを口にする。


「ミリィ、ヘンダーソンさんの所へ行ってくるわ」

「はい、ヘンダーソンさんによろしくと伝えておいてください」


 ギルドを後にしてヘンダーソンさんの所へ行く。

 悩みがあると毎回ヘンダーソンさんのところへ来てるわねぇ……。

 街は相変わらずっていう雰囲気だった。

 露天商の人がいつも通り商売をしてて、宿屋や酒場が通常営業してる。

 街行く人もコレと言って慌ててる様子もない。

 これから戦争が始まるというけどやっぱたくましいわね、この世界の人は。

 

 そんなことを思いながら訓練所の前までやって来る。

 訓練所の扉には「しばらく休みます」という張り紙が貼って閉まっていた。

 当然か、もうすぐヤバい奴らが来るんですもの。

 仕方がない、とため息とともに帰ろうとした矢先だった。


「おお、リリアか」

「あっ、ヘンダーソンさん」


 ちょうどこれから帰るところだったのか、ヘンダーソンさんがいた。


 そのままあたしたちは手短な喫茶店へと入る。

 まだ昼間なのでここらへんの酒場開いていないのもあるけどね。

 注文した炭酸水が来るとあたしは取るに足らない悩みをヘンダーソンさんに話す。

 軍隊がやってきてギルド内が落ち着かないこと。 

 それなのにうちの奴らは相変わらずわちゃわちゃしているということ。

 ナイーブと言われればそれまでだけど。やっぱ自分の中で整理ができていない。

 あたしはヘンダーソンさんに疑問を口にしてみる。


「ヘンダーソンさん。これって戦争ってことよね?」

「戦争? バカ言うな、こんなのただのお遊びよ」

「お遊びって……人が死ぬかもしれないんですよ!?」

「落ち着け、戦争なんて言ってるがあのバカ貴族が手駒を集められると思うか?」

「バカ貴族って言われても正直、会ったことのない人を悪く言えませんから……。ただ原因は金を生むアイテムだって聞いてます」

「そうだ、そいつをタダで寄こせと言ってくる。これをバカって言わずなんて言う? バカじゃなかったら乱暴者。チンピラ。人間の屑。厚かましさ五十人前だ。」


 あたしは思わず口を閉ざす。傍目から見た状況はこんな感じなんでしょうけどねぇ。

 あたしの顔を察してくれたのか、ヘンダーソンさんが優しい声をかけてきた。


「いや、違うな。リリア、お前が言いたいのは人が死ぬのが嫌だってことだろ?」

「はい……」


 完全に心を見透かされたかのように思わず同意をしてしまった。

 こんな事を考えてしまう辺り、あたしは冒険者として甘いのかもしれない。

 危険と隣り合わせの職業のくせして、人命に関してはとても意志が薄弱だ。

 もっと強くならないと、と思いつつ踏ん切りがつかない。

 覚悟がないって辺り、前世から全く成長していないのかもしれないわね。

 それでも、と優しい声を崩さないヘンダーソンさん。


「大丈夫だ。この町の奴らは全員ヤバい奴らばかりだが、殺人に手を染めるような奴はいない」

「そう……かもしれません」

「なぁに、頭さえ潰しちまえばこの戦争はお終いだ。だからお遊びってわけだな、うわっはっはっはっ」


 それでもイマイチしっくりこない自分がいた。

 というのもその貴族に会ったことがないというのもある。

 おまけに戦争なんて初めての経験。誰もが経験をしてないことだ。

 とはいえ、言いたいことを誰かに話したら気分は落ち着いてしまったあたし。


「さて俺も準備をするか。どっちにしてもけが人は出るからな、薬草やポーションの準備をしておかないとな」

「……ヘンダーソンさん、ありがとう。ちょっと気分が晴れたわ」

「気にすんなってリリア」


 ヘンダーソンさんの言葉とともにあたしたちは席を立った。

 もちろん相談代としてヘンダーソンさんの代金もあたしが建て替えたのだった。

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