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六話 未踏のダンジョンに夢を馳せて…… その2

「ここがダンジョンか……」

 

 一見するとただの洞穴。ただしその暗い空間の向こうから威圧的な何かを感じる。

 体がびりびりする感覚。かなり危ない雰囲気だ。

 高ランクの冒険者が行方不明になるくらいだもの。油断はできないわね。


「さて、いってみましょうかね」


 自分を奮い立たせるかのように洞窟の奥へと入っていく。

 洞窟の中はとっても静か。音もしなければ何かが飛び出してくる様子はない。

 大きい岩が立ち並ぶ中、何かが飛び出してこないようにと半分祈りつつ進む。

 ……勢いで飛び出してきたがここはひとつ、D・Eで調べてみた方が良さそうね。


「D・E! この洞窟について教えてちょうだい!」


 いつも通りディスプレイがあたしの前に出てくる。


【この洞窟はかなり危険です。高ランクの冒険者の冒険者と同伴することをお勧めします】

「いや、それはわかってるから。で、どのあたりが危険なのよ」

【マーカーに指定された部分を調べてみてください】


 そう言って現れた真っ赤なマーカー。壁の一部分を示している。

 それに従ってあたしもその部分に触れてみる。

 白くてやわらかくて……なにかしら……粘土? かしら?

 

【C3爆弾です】

「危険すぎるわよ!」

 

 あたしは思わず叫ぶ。

 ファンタジーの世界でプラスチック爆弾なんて出てくるとは思ってなかったわ!


「何!? その言い分だとこの洞窟にあるのは全部プラスチック爆弾ってこと!?」

【いいえ、そうではありません。次のマーカーに注意しながら進んでいってください】


 そう表示されると同時に再びマーカーに注意しながら進んでいく。

 マーカーにはいったい何があるのかしら?

 危険だっていうのなら危ない物でしょうね、刃物とか……火炎放射器とか。

 マーカーの近くを通り過ぎようとした矢先、何かが飛んできた。


「くぅ!?」

 

 とっさに地面を転がって回避をする。そして飛んできたものの正体を確かめようと近づいた。

 飛んできたのは……オレンジ色の魚、金魚だった。


「き、金魚!?」

【毒金魚です】

「金魚に毒なんてあるの!?」


 しかしピチピチと地面の上を数回跳ねた後、ついにそのまま力尽きたのだった。

 思わずあたしは両手を合わせて哀悼の意を表明する。


「ああ! もう! 高ランクの冒険者たちがどこに行ったかを教えなさい!」

【あと三百メートル先で一人発見しました】


 三百メートル、なかなか近いわね。

 さっそくマーカーに従ってその人物がいると思われる方角へ足を向ける。

 にしてもおかしな罠が多いわねぇ。いったいどんなやつがいるのかしら?

 洞窟のこともさることながら完全におかしな不条理に頭がパンク寸前だった。

 それでも気落ちをしていないのは、この洞窟の周囲が明るいからかもしれない。

 どこの誰かが付けてくれた明かりがなんとも心強い。

 

【次の道を左です】

「了解」


 早速左へと進んでいく。すると大きな扉の前に来た。

 どうやらマーカーの様子から言ってここね。さっそく扉を開く。

 そこには例の巨大な剣を地面に突き刺し、その上に立ちすくむマリオがいた。


「だ、だれかー! 助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 彼の周りには白っぽいぬめぬめしたあれ、ナメクジが無数にいた。

 魔物ならでかいとかあるんでしょうけど普通の小さいナメクジ。

 だが数が多い、出入り口からマリオの所まで無ずうのナメクジが辺り一面にうねっている。

 はっきり言って悪夢。ナメクジが嫌いな奴ならおぞましすぎて卒倒しそうだ。


「お、おれは……ナメクジだけはダメなんだ! 」

「ああ、もう! 待ってなさい!」


 あたしはいったん部屋から出ると、DEが作ってくれた塩をあたり一面にばらまいてやる。

 さすがのナメクジも塩が苦手なので壁へと逃げていく。

 マリオはすぐさま剣を引き抜くと一目散に部屋から飛び出してくる。

 

「ふう、助かったよ。ありがとう」

「どういたしまして」


 口ではそういうが高ランクの冒険者ってみんなこうなのかしら? という疑問が浮かんでいる。正直あまりにもみっともない。

 と、安心したのもつかの間。


「あれ!」


 突如、私たちの前に巨人の魔物、ギガントが現れた。

 あまりの大きさにあたしの身長なんて足首と同じ大きさしかない。

 おまけに力が強く耐久性もあるため、今のあたしじゃ対処できない!

 どうするべきか、そう考えた矢先だった。


「よっと!」


 掛け声とともにマリオが剣を振り下ろすとギガントは真っ二つになった。

 そのまま消え去るのを確認するともう一度マリオを見る。

 強い、普通に強い。さっきまでナメクジに右往左往してた男とは全く違う。


「さあ、探そう! 俺たちの仲間を!」

「そうね」


 マリオとともに奥へと進んでいく

 もちろんこっそりとDEのサポートを受けながら。

 マーカーを見た限り、仲間を近くにいるようだ。いったい誰なのかしら?

 おかしな罠に出会わないように進んでいくと遠くで声が聞こえてきた。

 誰かが金切り声を上げながら唸っている。


「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」

「おお! あれは! フランシス!」


 お祓い棒を左右に振りながら目の前の何かを追い払おうとしている。

 ……相手は巨大なカマキリだった。

 巨大カマキリは目の前のフランシスにただ戸惑うかのような動きをしている。


「六根清浄! 六根清浄! きえええええええええええええええ!」


 襲い掛かるつもりだったがフランシスの鬼気迫る表情に対して身動きが取れないようだった。

 あたしは隣にいるマリオにある提案をする。


「見なかったことにしましょう」

「おいおい、フランシスは仲間だ!」

「仲間でも取り込み中じゃないの。邪魔をしたら悪いわ」

「……ううん、しかし……」

「お二人とも! ミーには聞こえてるザンスよ! そんなことより早く助けてちょーよ!」


 フランシスはそう叫ぶと再びカマキリを威圧し始める。

 こう言っちゃなんだけど……あれで追い払うことができるのかしら?


「わかったわよ! ほら、どこか行きなさい!」


 あたしが手を振って追い払うしぐさをするとカマキリは頭を下げてそのまま退いた。

 ……意外と知性も高いのね……。あのカマキリ。

 まあさすがにこんなのに絡まれたらさっさと退散したい気持ちはわかるけどね。


「ふぅ、ミーの魔力に恐れをなしたザンス!」

「あれのどこが魔力だったのよ!?」

「それよりもこの洞窟は恐ろしい強さの魔物がいっぱい出てくるザンス!」

「ああ、俺も先ほど恐ろしい目にあったぜ」


 先ほどのナメクジのことを言っているのならそんなことはないでしょう、と言いたかったがそれを何とか抑え込む。


「この分だとリーダーたちもひどい目に合ってるのは明白ザンス!」

「ああ、早くみんなを見つけようぜ!」


 盛り上がる二人に対し、あたしはただ白けているだけだった。


 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 あたしたちは進む、洞窟の奥へ。

 二人がいてくれたおかげで道中は特に問題なく進めた。

 ……さっきのギガントのことと言い普通に強いのだ。この二人。


 銃弾をも跳ね返す大型の亀形の魔物、アークタートル。それをマリオが一撃で真っ二つにする。

 そしてフランシス。ザンスとかいかにもな風貌なくせして、何人もの冒険者を死に追いやったブラックレイスをあっさりと炎に包んだ。

 

 見かけはあれだが普通に強いのが怖いわね……。

 そうこうしているうちに広い場所に出た。

 そこはダンジョンに似つかわしくない花畑。正直、こんな洞窟で色とりどりの花を見るなんてすごく不気味に見える。

 隣にいるマリオが何かを示した。


「あれはガンドフ!」

「なんて麗しい! 花に囲まれて絶世の美男子になってしまったザンス」


 花に囲まれ眠るマッチョ、ことガンドフ。

 その顔は穏やかでなんとも美しい……。じゃなかった不気味。

 思わず背景にキラキラとした星をちりばめてしまう。


「花に囲まれてるだけじゃないの! ほら、とっとと助けるわよ!」


 あたしが奥へ入ろうとするが二人が足をつかんでそれを止めた。


「何するのよ!?」

「低ランクの君には悪いが……」

「お花を踏んだらかわいそうザンス!」


 フランシスの言葉はって昔幼稚園の先生にも言われてけど……。


「けど状況を考えなさいよ! あのガンドフっていうのはあんたたちの仲間でしょうが!」

「無論だ!」

「大切仲間ザンス!」

「なら花壇の中に入って叩き起こしてやらないと!」

「ああ、それはわかるが……」

「花を踏んでいくのは心がしおれるザンス……」


 切ない顔の男たちに嫌気がさしたあたしはついに踏み込もうとする。

 だがそれに今度はD・Eが待ったをかけた


【危険です! 花壇の中に魔物、マンイーターがいます!】

「へ?」

 

 花壇に踏み込んだ瞬間、大きな花の魔物があたしの前に立ちふさがった。

 ピンクの花の花弁がシューシュー言いながら身をねじらせている。

 巨人の次は巨大昆虫、そして今度は巨大植物ときたか……。


「だああああああああああああ!」


 思わず脱兎のごとく花壇から飛び出すあたし。

 そんなあたしをマリオとフランシスが叱責する。


「だから言ったザンス! お花を踏んだらいけないって……」

「全部後出しじゃないの!」


 あたふたするあたしたち。いくら何でもマンイーターに出会うなんて最悪だ。

 緑の長い職種をあたしたちに向けて伸ばしてくる。

 強酸性の樹液は服だけでなく肉体もあっさり溶かす凶悪な武器。

 仕方ない、覚悟を決めるか……。

 あたしは太ももにしまってある銃器を取り出すとマンイーターに照準を合わせる。


「待ってくれ、この人たちを攻撃しないでくれ」

「が、ガンドフ!」


 突然起きたガンドフがあたしたちの前に飛び出すとマンイーターに優しく語り掛けた。

 

「わかっているっすよ。あっしたちは悪い奴じゃない……気を静めてくだせぇ……」


 静かに、そして力強い言葉でマンイーターを説得するガンドフ。

 しかしチーズか何かのように、あたしたちの目の前でマンイーターに食われたのだった。


「あっ……」

「が、ガンドフー!」


 マンイーターは少しの間咀嚼をする。

 しかし、しばらくするとガンドフが吐き出された。どうやら口に合わなかったらしい。

 そのせいかどうかわからないが、お腹を壊したらしくよろよろと情けなく逃げていった。


「ガンドフ!」

「ふっ、恥ずかしがりやの魔物だったらしいっすね」

「誇り高い香りにバージョンアップしたザンス! かぐわしきガンドフになったザンス!」


 喜び合う男たち。もはやあたしの頭はついていけなかった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ダンジョンに潜ってかなりの時間が経った。

 残るは盗賊のベルネとリーダーのサントスだけ。

 全員とっ捕まえたらいったん帰還することにしましょうかね。 


「最後は二人だけど……一体どこにいるのかしら?」

「あの二人なら大丈夫さ!」

「そっす! 二人でも十分強いでさぁ!」

「ミーたちも早く合流して体勢を立て直すザンス!」


 こう言っちゃなんだけどやっぱりリーダーが信頼されているのはいいことだ。

 

 そんなことを考えてると案の定出くわすわけだ。……冒険者を困らせる分かれ道!

 ここはいわゆる十字路のようになっており、どの通りもかなり奥が深い。


「どっちに進めばいいのかしら?」

「俺にはわかる、あっちだ!」

「ミーの直観ではこっちザンス!」

「あっしの花占いではそっちの方角となりまさぁ!」


 指示した方向は見事に三方向。こういうとき賢いあたしはちゃんと理解している。


「うーん、じゃあそれぞれの方向に進んでみたら? もし二人を見つけたら教えてちょうだい!」

「ああ! 分かったぜ!」

「こういうのは久々ザンス!」

「うおおお! リーダーたちを見つけるのはあっしですぜぇ!」


 そういって三者三様の方向へ進んでいく。

 あたしは報告を待つためにこの路地で待つことにした。

 煩わしい連中から離れて一息をつくあたし。……せっかくだし、D・Eにも聞いてみるか。


「D・E! 正解の通路を教えなさい!」

【残念ですがどの通路もはずれです】

「へ?」


 そういうと三人が帰ってきた。


「うおおおおおおおおおおおおん! い、犬がぁぁぁぁ! おしっこをかけてきたぁ!」

「ひえええええええええ! ミミズが大量にいるザンス! うねうねしてて恐ろしいザンス」

「あああああああ! カラスに啄まれたっす! なんで洞窟にカラスがいるんスか?!」


 泣き崩れる男たちを見ながらあたしは行き詰ったことを確認する。

 うーん、全部違うってことは通路を間違えたのかしら?

 ふと、上の方を見ると何やら怪しげなとっかかりが。まさか……。

 あたしはカバンの中からロープを取り出してとっかかりに向かって投げる。

 そして思い切り引っ張ると十字路の中心から隠し階段が現れた。

 うわぁ、ありきたりねぇ。


「おお! さすが!」

「本来ならばベルネの仕事! あんたがいてくれてうれしいっす!」

「さあ、進みましょう!」

「おう!」


 あたしたち四人はダンジョンのさらに奥へと入っていくのだった。


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