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四話 パーティーのススメ その3

 ちょうど太陽が真上になる頃、ようやく目的地へと到着した。


「つ、着いたぁ……」

「へっ、トンビの餌にならなくて済んだ様だな」

「いたーい! 足の裏にマメできちゃうかもー!」


 ふらふらになりながら地面を転がる三人。

 こうして見ると未熟ではあるものの、ちゃんとした冒険者なのよね。

 文句も弱音もやたらと吐いたけど、脱落することなくたどり着いたんだから。


 しかし道中のことを思い出すと……。


「や、やりました! 見てください、薬草を発見しましたよ!」

 そういってマルクが持ってきたのは茶色と紫色のヤバイ色をした草だった。

「それは毒草! 捨ててきなさい!」


「ふっ、せっかくだ。俺の特技を見せてやる」

 そういって指笛を鳴らすとヘビとか歩く草とかうじゃうじゃ集ってきた。

「だああああ! 何やってるのよ!」


「だるーい、休憩しましょうよー」

 そういって木の上に寝転がるシェリー。

「また十分しか歩いてないじゃないのよ!」


 とまあこんな具合だ。

 余り者たちでパーティーを組むとここまで恐ろしいことになるのか、と実感している。

 だが彼らをちゃんとここまで来れたことにあたしは自分を褒めてやりたい。

 それにここで薬草を採取すればこいつらからも離れられるしね。


「さあ、薬草を探しましょう。どの薬草を取るかちゃんと分かってるんでしょうね?」


 あたしの問いかけにみんな口を閉ざした。

 ……いや、まさかねぇ? どの薬草を取ってくるか忘れたなんて……。

 しかし誰一人としてあたしと目を合わそうとしない。


「ねぇ、何とか言いなさいよ?」

「……すみません! 忘れました!」

「悪いが、過去のことは忘れたぜ」

「草なんてどれでも一緒でしょー? テキトーでいいでしょー?」


 再び三人の顔をハリセンで引っ叩く。当たりが良いのか今回は妙に快音をさせた。

 悶絶している三人を尻目にどうするかを考える。

 ……しかたがない。こういうときの為にDEに頼るか。

 

「ああ、もう! ちょっと待ってなさい!」


 草むらの影に入ってDEを起動させる。


「DE起動。要請ヒント、彼らのクエストの内容!」

【ポーションの原料である柔月草を採ってくることです。量としては少しあれば問題はありません】

「了解!」


 再び三人の所へ戻る。みんなあたしを待っててくれたのか少しダラダラしていた。

 むむ……ここでシャンとしろ! と怒るのは簡単だ。、ここはこらえて……。


「とりあえず柔月草を探しなさい! それがクエストの中身よ!」

「はーい!」


 三人は早速周囲を探し始める。それに合わせてあたしも周囲を探してみる。


 柔月草。月光を浴び、柔らかな光を放つ草だ。

 三日月のように茎が少し垂れており、ポーションの材料となる。

 普通に使っても傷口を塞ぐ効果もあり、旅なれた人なら乾燥させた物が袋に入っている。

 ……でもあたしは知らなかったのよね、こういう草があることを。


【警告、強敵が接近しています】

「強敵って何よ……」


 DEの警告を頭に入れつつ草むらの奥を捜索してみる。

 草木の影に隠れながら淡い光を放つ草を発見した。

 三日月のように垂れた茎。間違いない、これが柔月草だ!


「あったわよ、薬草!」

「こ、これが!?」

「ふっ、お天道様も俺を見捨ててはいなかったか」

「やった! これで帰れるー!」


 喜ぶあたしたち。すぐさま採取へと走る。だが……。


「うるせぇぞ! ガキども!」


 背後から現れたのは、嫌な雰囲気な醸し出す男だった。

 背中に蛮刀を背負い、動物の毛皮を腰に巻いたヒゲ面の男。

 お風呂に入ってないのか、ちょっと口にはいえない臭いを放ってくる。

 俗に言う山賊だった。どうやらこの山は彼らの縄張りらしい。


「今日は獲物が来なくてイライラしてるっていうのに、てめぇらみたいなのがやってきて山を荒らし放題! この始末、どう付けてくれるんだ!?」

「どうもこうも、この山はあんたの所有物じゃないでしょうが」

「んだとぉ!?」


 あたしの発言に山賊が睨みを効かす。があたしも同じくらい睨み返す。

 山賊の視線があつかましいあたし、ではなく他の三人へを移った。

 

「おう、良い物持ってるじゃねぇか。その剣、新品だろ? 俺のと交換してくれよ。これで勘弁してやるから」

「うわ、やめろ!」


 マルクの剣に手を伸ばそうとする山賊。

 それをマルクが振りほどくと大切に抱きしめた。どうやら大切な物らしい。

 まあ、必死な表情から見て、かけなしのお金を集めたかったんでしょうね。

 しかし山賊はそれが不快に映ったのか、マルクに恫喝を仕掛けてきた。


「ああん、いっちょ前に抵抗すんのか?」

「いやぁ、それは……」


 刃を眼前にを突きつけられてビビるマルク。

 まあ流石に人に暴力を振るえって言われてもすぐには無理よね。

 そんなイキがる山賊に平手打ちを喰らわせるあたし。

 パーンというハリセンとは違った快音を響くと心が少し弾んだ。


「ぶへ! このガキ、何をしやがる!」

「何を? そんなの決まってるでしょ、あんたたちに渡すものは無いってことよ!」

「リ、リリアさん!」


 マルクがあたしにすがりつくかのような視線を送ってくる。

 言いたいことは分かる。穏便に物事を済ませましょう、ってことでしょ?。

 前世でも同じことやってくる奴はいた。今の被害さえ凌げば良いって考え。

 利己的な理由で被害者の尊厳って奴を踏みにじる奴。

 でもここは……あたしのいる世界とは違う!

 それに新米に冒険者っていうのを見せ付けてやらなきゃいけない。


「あんたたちも覚えておきなさい。冒険者から犯罪者にクラスチェンジしたくなかったら、こんな奴らにへーこらすんな!」

「このメスガキ!」

 

 山賊が剣を抜いてあたしの方へと迫る。

 だが先制攻撃よろしく、剣が振るわれる前にお腹に蹴りを一発叩き込んだ。

 重い感触と共に山賊はその場に崩れる。


「ぐぇぇ!」

「あーら、ごめんあそばせ。なんせ足癖はとっても悪いのよ、あたしは!」

「ぐぅぅぅぅぅ……! おい! てめぇら! 手を貸せ!」


 山賊が大声を上げると草むらからお仲間が次々にやってきた。

 よくもまあ、ぞろぞろと。後ろで待機でもしてたのかしら?


「うわわわ!? ど、どうするんですか? リリアさん!?」

「ふっ、ついに神は俺たちを見放したようだぜ……」

「えー! やだやだやだ! こんなキモいおっさんにヤられるなんてイヤー!」


 泣き叫ぶ三人。アクシデントに弱いのは新米らしいわね。

 喧嘩を買ったのはあたしだし、啖呵を切ったのもあたしだ。

 でもこれが冒険者の仕事。それが冒険って奴なのだから。

 人間だろうと魔物だろう驚異や困難に対してどう立ち向うかが課題。

 そうじゃなきゃ、冒険者は続けられない。ちょっと無責任かもしれないけど……。


「あたしが言いたいのは一つだけよ、こうなったらなんとしても生き延びなさい! いいわね!?」

「ええええええええええ!?」

「それじゃ、スタート!」


 みんな三方向に走っていく。全員逃亡を選択するのはある意味賢い。

 勝てない敵に立ち向うのはバカがやること、訓練所でも教わったしね。

 なので一番のベテランのあたしはそれぞれのフォローに走る。


 マルクに手を伸ばそうとする奴に一発。

 ハーマンに剣を振り上げてる奴に一発。

 シェリーの尻を追い掛け回す奴に一発。

 そしてあたしに向かってくる奴に三発。

 リロードをしている間にも敵は来るのでキックを一発。


 相手を休ませることなくひたすら攻撃を続けるあたし。

 一方の山賊の方はちょこまか動くあたしを捕らえることが出来てない。

 闇雲に剣を振るうだけで頭が回っていないようだ。


「くそ、このメスガキちょこまかと!」

「あいつらに比べたらこの程度軽い軽い」


 スケベゴブリンとの戦いに勝つために修行をした成果が出てきた。

 と言ってもDEが用意してくれた訓練プログラムを少しずつこなしているだけ。

 それでも面白いくらい山賊に銃弾が当たった。

 

「くそ、このガキ!」


 調子に乗るなと背後から羽交い絞めにしようと仕掛けてきた。

 それをしゃがんでかわすと後ろ返りの要領で転がり、股間を思いっきり蹴り上げる。

 男としては知っている突き抜ける痛みが山賊を襲った。


「セクハラは厳禁! お仕置きよ!」


 悶絶している所に、そのまま数発撃って黙らせる。


「女の子のお尻を追いかけたいなら、もうちょっと身だしなみを整えることね」

「くそ、コイツに攻撃を集中させろ!」


 弾丸を込めながら再び山賊へと向かっていくあたし。

 見た所数も少なくなってきたし、あの三人の姿も見えない。

 見事に逃げ出してくれたようだ。なら敵に集中しても問題は無い。

 ここらで一気に決めてやる!

 銃のグリップを握り直して気合を入れなおした。

 破裂音と金属音、草の青臭さと火薬の臭いが周囲に立ち込める。

 音が響くたびに山賊が一人、また一人と倒れていく。


「クソ、たった一人なのにこのガキつええ!」

「ありがとう、でもあんたの賛辞はノーセンキュー!」


 苛立っている山賊の頭にに綺麗な回し蹴りが入る。

 クリティカルを喰らったのか、そのままあっさりと気絶をした。


「ズラかれ! ここは出直しだ!」


 山賊たちは仲間を背負って次々に山の奥へと逃げ帰っていった。

 それを見ながらあたしの方も一息をつく。


「……終わったわね」


 これでよし。戦闘終了! 一応スタン効果がある銃弾を使ったから死人はゼロ。

 目が覚めても暫くは活動は出来ないでしょ。

 流石に人を殺すとなると目覚めも悪いしねぇ……。


【警告、三人とも生命のピンチです】

「了解」


 最後の仕上げだ、DEが指し示す場所へと向かってみる。


「ああん! もうやだー!」

 泣き叫ぶシェリーを見つけた、どうやらドロ沼に落ちたようだった。

「もうちょっと周囲に気をつけなさないよ!」


「ふっ、カラスの野郎め。なかなかイキなことをしやがる」

 頭に鳥のアレ(フン)をつけたハーマンが木の上でスカシをこいていた。

「枝にぶらさがってかっこつけるな!」


「リ、リリアさん! 無事だったんですか!」

 大穴の下でマルクが喜びの声をあげた。明らかにこれで助かったといわんばかりに。

「もちろんよ……で、あんたは何で穴に落ちてるのよ?」


 三人ともドロだの砂だのまみれながらも生き残ったらしい。

 あたしもだが新米時代はやっぱ上手くいかないことが多いわよねぇ……。

 でもこういう泥臭いことを積み重ねて絆を深めるのも悪くないのかも。

 だからと言ってこのパーティーのお守りは二度とごめんだけど。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 そしてギルドへと到着。長かったような短かったようなそんな日程だった。


「さあ、クエストを報告してきなさい」

「は、はい!」


 三人は受付へクエストの報告へ行く。そしてミリィから小袋が手渡された。

 喜ぶ三人を尻目に、あたしは椅子に座って一息をつく。

 これでパーティーも解散、というかあたしの役目も終わりか……。

 シングルでやってたときも初めての報酬は心が躍ったのを思い出す。


「リリアさん、ありがとうございました!」

「これで俺たちも一人前の風来坊ってわけか……」

「でもこれだけしか貰えないなんて悲しいー!」


 三者三様の反応だが誰も冒険者を辞めるなんてい言わなかった。

 それだけ今回のことで自信がもてたってことなのかしらね?

 ……でもちゃんとパーティーに入れて貰えるんでしょうね? あの三人。

 いや、今回の件をちゃんと糧にしてきちんと成長するわよ、うん。


「リリアさんの報酬です」

「ありがとう」


 ミリィがいつもの通り、報酬を渡す。いつもより小さい小袋がそこにはあった。

 まあヘンダーソンさんには相談に乗ってもらったし、これはこれでいいのかもね。


「どうでした? パーティーは?」

「うーん……やっぱ独りのほうが気楽だってことがよく分かったわ」

「そうですか……」


 あたしの発言にミリィは少し寂しそうな顔をする。

 今回の件を得てあたしもパーティーを組みたい、となるのが理想なんでしょうけどそうはならかった。

 でもパーティーだけが冒険者のキモってわけじゃないはずだ。 



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 翌日、ギルド長室。

 約束事を果たしたことをギルド長に報告する。あたしの考えもついでに。


「結局、パーティーは組まない。と」

「はい。やっぱりあたしはシングルが肌に合ってるようです」

「そうか……けど残念だね。パーティーを組んだらランクが6になるかもしれなかったのに」

「物事と言うのは収まるべくして収まると思います。それに私は私でやっていけると思いますので」

「そうか……」

「それじゃ、あたしは失礼します」


 ギルド室を後にすると再び受付へともどるあたし。

 そこにはいつも通り、冒険者でごった返していた。

 今日も仕事をしようと受付へと向かう。


「ミリィ、今日は仕事、入ってる?」

「はい、でもリリアさん。今後もシングルの冒険者を続けるんですね」

「ええ、そのつもりよ」

「……いつか見つかると良いですね、リリアさんの仲間」

「そうね、そうなったら面白いかもしれないわね」


 仲間か……。

 それは彼女たち(アカネとセルリア)に任せることにしましょう。


「さて、今日のお仕事は何?」

「薬草集めです」

「え?」

「南東にある山に行って薬草を摘んできてください。出来るだけ多く」

「……わ、わかったわ」


 こうしてあたしは再びあの山へと向かうこととなったとさ。はぁぁぁぁぁぁぁ……。

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