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四話 パーティーのススメ その2

「それで押し切られる形でパーティーを組めって言われたんですか?」

「そうよ」


 ギルドからちょっと離れたバーでミリィに愚痴を付き合って貰っている。

 ベイカーズは本日、定休日。

 まあ、あそこで話をするとリックの奴に割って入ってこられそうだしいいか。


「まあリリアさんぐらいの実力ならパーティーぐらい簡単に組めると思いますよ」

「それが問題なのよ。ギルド長には悪いけどパーティーに関してはてんで素人よ。どのパーティーに入るべきか、自分でも分からないんだから」


 屁理屈ばかり並べているが、やはりパーティーを組むとなると居心地というものが大事になる。

 連携の組み方、ポジショニング。おまけに状況判断能力なんかも求められる。

 さらにそこに人間関係のギスギスだの惚れた張れたなのが入って大変。

 シングルでのクエストでパーティーの素行を調査したことあるけど、やっぱりドロドロしてる所は多いわねぇ。


「そこまで言うのなら素直に勧誘されているパーティーに入ったらいかがでしょうか?」

「……ミリィ、あんただって見たでしょうが! あの奇人変人の集団を!」

「それはそうですが……」

「あんなところに入ったら最後! 二度と出られなくなりそうだわ!」


 雄たけびと共にドン、とグラスを叩きつける。

 そんなあたしを見ながらにミリィはちょっと苦笑いをする。



「うーん……となると、とりあえずヘンダーソンさんの所へ行ってみたらどうでしょうか?」

「ヘンダーソンさんの所に?」

「そういうのを教えるのが訓練所ですからね」

「……そうか、そうするわ」


 カップに入ったジュースを一気飲み干すとあたしたちはその場で別れた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 翌日、訓練所へとやってきたあたし。

 訓練所の中は相変わらず盛況している。

 訓練生たちを指導しているヘンダーソンさんは相変わらずのコワモテだった。


「よう、リリア。今日はどうした?」

「実は……」

「……長くなりそうだな。せっかくだ、差し入れされた紅茶で飲むか?」

「ええ」


 あたしの態度を察してくれたのかヘンダーソンさんはあたしに紅茶を差し出した。

 やや躊躇いながらもヘンダーソンさんに事情を話す。

 昔からこうやって他人に頼るのはどうも苦手。

 プライドが高いってことなのかしら?


「はっはっはっ、なるほど。ベンジャミンの奴に無理難題を押し付けられたって訳か」

「笑い事じゃないわよ、あたしは今までピンでやってきたんだから」


 大笑いをするヘンダーソンさんに対し、あたしは深いため息をつく。

 というかギルド長の名前、ベンジャミンって言うんだ……。知らなかった。


「だがあいつの言う通り、仲間ってものは良いもんだぞ。リリア」

「それは……分かりますけど」


 口ではそう言いつつもやらない辺り、やっぱ抵抗感があるわね。


「……人と仲良くなることにトラウマがありそうだな」

「はい……」


 思わず本音が出た。理由なんて無いと思ってたのに。

 脳裏に浮かぶのはやっぱあの光景。


 調子乗るな、と因縁をつけてくる輩。

 人の言葉を茶化して繰り返す輩。

 噂を信じて人を汚物か何かのように見てくる輩。

 

 この身体になってからは過去に対して身悶えするような事はなくなった。

 でもやっぱり体感的に拭えてない。集団の中に入ることに抵抗感があった。

 

 そんなあたしに対し、ヘンダーソンさんが少し頭をひねる。

 何かをひらめいたのか、自分の膝を叩いてこんな提案をしてきた。


「そうか……。よし、この際だ、新米パーティーのお守りをお前さんに任せよう」

「え?」

「パーティーって物がどんな物か分からないんだろ? それなら体験してみるのが一番だ」

「そういうものかしら?」

「お前さんは一人で何でも出来る。だからこそ、こういう新米の手助けをして欲しいんだ。向こうは安全性が上がるし、お前さんはパーティーのことを知れる。一挙両得ってわけだ、どうだ?」


 真っ直ぐにあたしを見つめてくる。正直にいえば引き受けたくは無い。

 けど、この人には何もかもお世話になってる。それに頼みを無碍にするのも悪い。

 ギルド長の話もあるし……。おかしなパーティーに入らなくても済みそうだし……。


「わかりました」

「頼んだぞ、リリア」


 観念したかのように承諾の言葉を出すあたし。それに対し笑顔のヘンダーソンさん。

 我ながら言い訳がましい人間だと思いつつも、この人の人柄に惹かれてるのかもしれない。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 翌日。空は雲ひとつ無い絶好の冒険日和……でいいのかしら?

 集合場所である町の入り口に、新米パーティーの面々が現れた。


「は、初めまして! ランク1冒険者のマルクといいます!」

「同じくランク1冒険者、ハーマン……」

「同じくランク1冒険者シェリー、よろしくお願いしまーす」


 ヘンダーソンさんの言いつけ通り、パーティーを組んだけど……。


 緊張でガチガチかつ気弱そうなマルク。

 剣士か……前衛で大丈夫かしら?


 覇気の無い見た目とコミュ障のハーマン。

 魔術士ねぇ。ランク1だから大層な魔術は使えなさそうだわ。

 

 けだるそうな顔とチャラチャラした態度のシェリー。

 盗賊……? 指輪とかネックレスとかつけてハデハデなのに?


 こいつらのお守りをしろ、というヘンダーソンさんのクエストにちょっと恨む。

 正直、まとまりがあまりにも無さ過ぎる。……余り者の集団なのかしら?

 とにかく、冒険者の先輩としてきちんとしなきゃ。


「よろしく、さて今日のクエストは薬草探しだけど……準備は良い?」

「は、はい!」

「……」

「問題ありませーン」

「それじゃあ、出発!」


 目的は南東の山に自生する薬草だ。それを採取して町に持ち帰る。

 ランク1に相応しいクエストだ。時間にして大して時間もかからない。

 風が少し強いけど暑さはそうでもない。これなら簡単に終わりそうね。


 ちらりと腕についている時計を見やる。正確には時計ではなくDEの画面だ。

 いざというときのために、こうやって常にアクティブにしておく。

 見た目は腕時計に偽装した魔法アイテム。なので話しかけても怪しまれないはず。

 

 特に困難らしい困難に遭わず、快調に歩いていくあたしたち。

 魔物に遭わなければお昼過ぎには冒険が終わるだろう。だが――。


「………ま、魔物です、リリアさん!」


 突如、あたしたちの前に魔物が現れた。やっぱ冒険だし当然ね。

 現れたのはハロウィンに良くある顔付きのカボチャにタコみたいな足が付いてる魔物。

 通称、パンプキンウォーカーだ。ランク1でも十分対処は出来る。

 でもコイツの種飛ばしはかなり痛いのよねぇ……。


「戦闘準備!」


 パーティーの面々に指示を送り、太ももに締まっておいた銃を取り出すあたし。

 それに対して……。


「あわわわわわ……」

「どうせ戦って無駄さ、俺たちはこいつらに食べられてしまうんだ……」

「えー? 戦うのー? こんなキショイ魔物とー」


 慌てふためくマルク。前衛の癖に腰を抜かしてしまっている。

 ネガディブな言動で体育座りをするハーマン。全てが終わった顔をしながらそのまま俯いてしまった。

 案の定、やりたくないことを押し付けてくるシェリー。あっという間に木の影に隠れた。

 ……なんでこの三人でパーティーを組んだのかしら?


「何やってるのよ、魔物がいるんだから準備しなさい!」

「で、でも!」

「無駄さ……」

「やだー、絶対非モテよー! この魔物!」


 イライラするあたしに対し、パンプキンウォーカーが肩を叩いてきた。

 振り向くと「お前も大変だな」という微笑みかけられてくる。


「ぐぐぐぐぐぐ……あんたに心配されることじゃないわよ!」

 

 怒りの余り、魔物に向って銃弾を数発撃って戦いを終わりにする。

 パンプキンウォーカーははあっさりと消えうせた。

 すぐさま背後にいる三人に向って怒鳴りだす。


「あんたたち! 考えてるのよ!?」

「リリアさん! 僕は懸命に頑張りました!」

「ふっ、今日も生き延びてしまったか……」

「うわっ、グロ! キショイんですけどー!」


 好き勝手なことを言ってる三人の顔をハリセンでスパーンと引っ叩く。

 快音をさせた後、三人を正座させた。


「マルク! あんたは訓練所で何を習ってきたの!?」

「ほ、本番と実戦は違うじゃないですか!」

「アホか! どっちも同じ意味でしょ!」


「次にハーマン! 勝手に生きるのを諦めて勝手に勝ち誇るな!」

「すまない……俺は気分屋なんだ」

「気分云々の話か! やることをやりなさいって言ってるの!」


「最後にシェリー! 冒険者をなんだと思ってるのよ!?」

「え-? 凄い冒険をして王子様と玉の輿ー?」

「今のままじゃ、玉の輿どころかただの傍観者じゃないの!」


 頭が痛くなってきた。これで本当にクエストを達成できるのかしら?

 

「とにかく先に進むわよ! くれぐれも仲違いなんてしないように!」

「わ、わかりました!」

「努力しよう……」

「はーい」


 返事だけは一丁前の彼ら。

 本当に大丈夫か不安になってきたあたしだった。

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