ギルドを発見しました。
目の前が一瞬暗くなったかと思うと、辺り一帯には綺麗な緑が生い茂っていた。
小学生や幼児がはしゃぎたくなるような野原だ。
顔を触ってみるも、俺が知っている自分の顔ではない、どこぞのイケメンらしかった。
この世界ではこれが普通なのだろう。
身長は変わっていなく、すらっとした体形も変わらずだが、どこか筋力を感じる。
「ジェネシスは丘の下の街へ行けと言っていたな。準備をしてから行こうか」
俺はその場に座り、魔導書を見つめた。
創造神の秩序とは便利なものだ。なんでも作れてしまうのだ。
その秩序の一部を使えるとしたら、魔法を作ることもできるのではないだろうか。
「そういえば、魔法神の祝福も得ていたな。混ぜ合わせればいろいろな魔法が作れるだろう」
ジェネシスは、魔法は感覚でできる。と言っていたな。
『スキル』というやつか。
〈魔法創造〉
「ふむ。これだな。魔法の効果は歩きながら考えるとしようか」
俺は無駄に高い外壁を目印に丘を下って行った。
その間に魔物に合う...なんてハプニングもなく、検問所のような場所へ着いた。
俺が下りてきた丘の左右には平らな道があり、そこからずらずらと馬車が街へ向かっていた。
大きな街なのだろう。
「次の者!手ぶらだな。王都への用はなんだ?」
ここは王都だったのか。
軽めの鎧を着た兵士が検問をしている。
関所はしっかりしているようだ。
しかし、これといって用事はない。どう話せばいいのだろうか。
「なに、叔父がこの街で商売をしていてな。手伝うために田舎から出てきた者だ」
「そうか。怪しいものは持っていないな。よし、通っていいぞ」
かなりラフな検問だな。パスポートのようなものは無いのだろうが、それにしても簡易すぎる。
実は道中に収納魔法を作り、魔導書をしまっているのだが、全く見抜けていなかった。
これでは危険物持ち込み放題ではないか。
「して、これからどうしたものか」
説明のままに王都へ来たが、特にやるべきことは決まっていない。
「そういえば、こういった世界にはお決まりのものがあると田中が言っていたな」
田中というのは、前世で二次元マスターの異名を持っていた俺の友人だ。
「ギルド...と言ったか。『クオリア』にもあるのだろうか」
建物についている看板を見ていくと、どれも日本語だった。
ジェネシスが気を利かせたのだろうか。
「ふむ、あれか」
大通りを歩いていくと、ひと際目立つ大きな建物があり、入り口には『ギルド王都本部』と書いてあった。
俺はいかにも異世界らしいギルドの扉を開けた。
「ほう。受け付けはここで合っているか?」
親切に、正面の窓口に『受付』の文字が書かれていた。
「はい...受付はこちらですが...どういった御用で?...」
「なに、今情報を欲していてな。ギルドならば何かしらの話が聞けると思って来たのだが、どうかしたか?顔色が優れないようだが」
「いえ、その...ここは子供の来ていい場所ではないので...お帰りいただいた方が...」
子ども...か
まぁ見えなくもない。ジェネシスの奴が顔を変えたのだ。
俺でいうと16の辺りか。
「すまない。年齢にそぐわないのは分かるのだが、状況が状況でな。どうか頼めないだろうか」
「あ、いえ...私はいいんですけど...」
受付嬢がそっと目を俺の後ろに向けた。
「おうおう。チビ、ここは子どもが来るような場所じゃねぇぞぉ?」
「さっさと帰って親の乳でも飲んどけってんだ。あはははっ!」
「おいおい、それは言いすぎだろ。子どもには優しく教育してやんだよ」
「ははっ。それもそうだな」
ギルドのすぐ横には酔っ払いのたまり場となっている酒場があった。
そこで酔った人間が他人に絡むというテンプレが出来上がっているのだろう。
「すまないが、貴様らに構っている時間はない。とっとと失せてくれ」
「ちょっと、君!?」
俺が挑発したから驚いたのだろう。
「おい、ガキ、舐めてんのか?あ゛ぁ?」
「舐めているのはそっちだろう。風にでもあたって酔いを醒まして来い」
俺が言い返すと、ギッと眉間にしわを寄せた。
「アニキぃ、これは教育してあげたほうがいいんじゃないっすかねぇ」
「そうっすよ。立場を分からせるのも、大人の義務ってもんですぜ」
「ああ、分かってる。ガキ、分かってんだろうな?今さら謝っても無駄だからな?」
「ああ、もちろんだ。そっちこそ、後で謝ってきても許しはしないぞ?」
二次元マスター田中が言っていた。
『異世界ものは自重しようとしてるけどぶっ飛んでるところがいいんだよね』
世界を救わねばならないのはそうだが、わざわざこんなところで騒がれるのも面倒だ。
セオリー通り自重しよう。
——〈魔導庫開錠〉——
先ほど作った収納魔法で空中に異空間を作り、なかから魔導書を取り出す。
「...は?」
「...なんだよ...あの魔法!?」
「何もないところから物が出てきやがったぞ!」
「おい、あれって神話の収納魔法じゃねぇか!?」
「まじかよ...なんで神話の魔法をあんなガキが...」
ふむ。これでももう常識外れ呼ばわりされてしまうのか。
しかし、俺が先ほど作った魔法が神話に出てくるのか。
素晴らしい偶然だが、まぁ無視しておこう。
「貴様はその剣を抜かなくてもいいのか?お飾りではあるまいな?」
「おうよ。俺はこいつらみたいにそんなちんけな魔法にゃビビらねぇぜ」
そういう言うと、体長が190はあるであろう巨体で大剣を構えた。
「後悔すんじゃねぇぞ」
「ああ、そのつもりだ」
せっかくだ。前世の知識を活用した魔法を使ってみよう。
「先攻は譲ってやるよ。ぶった斬ってやる」
「じゃあ、やってみろ」
俺は目の前に魔法で水滴を一つ作ると、ゆったりと相手の方向に飛ばした。
「ぷ、ふはははははっ!それが魔法か!?口ほどにもねぇなぁ。やめだやめ。さっさと終わらせてやる」
「そうか?よく見てみろ」
「あ゛ぁ?」
巨体は目をよく凝らし、水滴を見つめた。
しかし、何もわからなかったのだろう。
微笑しながらこちらへ歩いてきている。
「残念ながらゲームオーバーだ」
「ははっ!謝ってもむ.....ぐはあ゛ぁっ!!!!!!!!!!!!!!」
巨体が叫ぶ声と共に、ギルドの扉にぶつかり、それを破壊しながら外へ放り出された。
「な...何が起きたんだ?」
よく見ても分からないのだが、俺が使った魔法は〈固定水蒸気爆発〉だ。
水蒸気爆発の方向を風の魔法をライフリング代わりにして固定したもの。
ただの水滴でも、方向が固定されていればあれほどの威力になる。
規模は応用可能だが、侮ると思ったからな。
「さて、少々問題を起こしてしまったな。どうしたものか」
「.....あっ、はい」
先ほどから目を丸くしていた受付嬢に視線を送った。
「今ギルド長に話を付けてくるので、少々お待ちください」
「了解だ。騒がせてすまないな」
「い、いえ!ととと、とんでもございません!」
どうやらやりすぎてしまったようだ。
これからは加減を考えよう。
そして、異世界だからと言って好戦的な人間はそう多くないようだ。彼らが酔っていただけだろう。
気を付けなければいけないな。
第二話も読んでいただき、ありがとうございます!
実は、一話投稿から2、3時間後に、記念すべき一つめのブックマークを付けていただきました!
本当に励みになります。ありがとうございます。
感想、アドバイス等々いただければ嬉しいです!
ブックマーク、ポイント評価いただければ飛んで喜びます!(※重要 ↓の広告の下辺りに評価バーがあります!ぜひとも!)
次回の投稿は3月29日の朝9:00
ブックマークをして更新をお待ちください!