制服がフックポイント
「うそ……でしょ……」
何がなんだか、分からない。
「……アラベラ様?」
心配そうに侍女のジゼルが覗き込んでくる。
そりゃあそうだ。さっきまで「はしたないですよ。」と嗜められるくらいには浮き足立っていた私が前触れもなく急に青ざめたのだ。
そう、この春から入学が決まっている学園の、この制服を目にするまでは……
だってこれ、乙女ゲームの中の制服じゃない!
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乙女ゲーム「ウェヌスと共に」
平民だったヒロインが魔法が使えるようになったのをキッカケに、貴族ばかりいる学園に入ることに。平民を理由にいじめられたりもするが、魔力を高めながらも攻略対象の相手との愛を深めていく。
最終的に国近くに封印されていた魔物を攻略対象と共に倒してハッピーエンド
……ゲームなので色んなルートがあるけど、王道ルートはこんな感じ。
まだ記憶が曖昧な部分はあるけど、これが大筋の筈。
そうか、私はゲームの世界に生まれちゃってたのね。
この世界になんとなく既視感を持っていたのは前世の記憶のせいなのね。それが、制服を見て色々思い出せてきた。
前世、どうして自分の人生終わってしまったのか全然覚えてないのに、プレイしてたゲームのことは覚えてるってどうなんでしょうね。
「ご休憩、なされますか?」
青ざめたまま前世の記憶の処理をしているとジゼルがもう一度声をかける。
「あっ、大丈夫よ、大丈夫。」
「……なら、いいのですが……。」
そう言って荷造りの続きを再開(といってもジゼルが殆どやってくれる)しながらも、情報の整理を続ける。
確かヒロインのデフォルト名はミライ、だったな。私はデフォルト名でプレイしてなかったけど。
ということは、ヒロインではないみたいね。
アラベラ・カーラー・コルソン
これが私の名前。コルソン子爵の長女です。長女と言っても兄が二人、弟が一人居るので何も重圧があるわけではないです。
モブキャラなのかな……?まあそれはそれでいいんだけれど。
「そういえば、ウィリアム様が明日いらっしゃるんでしたよね。」
「ええ、そうね。」
ジゼルが服を畳みながら話しかけてくる。
ウィリアム・ヴァン・アーチボルド様は私の婚約者。会うといつもニコニコ笑っていらっしゃる太陽みたいな方。
目つきの悪い私とは真逆の優しいお顔立ちをしている。
ん……アーチボルド……?
そういえば、ライバルキャラで、めちゃくちゃヒロインいびり倒す、所謂"悪役令嬢"の名前が
ヴァネッサ・カーラー・アーチボルドって名前だったのよね……
いえ、私の名前はアラベラよ。
アーチボルド家に嫁いでも名前は変わらないわ……
ん……待てよ……アラベラ……?
悪役令嬢のヴァネッサって、ルートによってはヒロインを殺しかけるんだけど、ヴァネッサを唆すのってヴァネッサの祖母なのよね。その祖母の名前、アラベラって名前じゃなかった……?
「えっ……」
「アラベラ様?」
私……悪役令嬢のお祖母様なの……?




