プロローグ
心地の良い風が頬を撫で、わたしは目を覚ました。
視界に入ったのは薄い靄が空を覆い、太陽に見えるそれは薄っすら光を射していた。
頭の中がふわふわする。
体を起こそうにもふわふわして力が上手くはいらない。
「さぁさぁ起きてアリス。お茶会に遅刻してしまうよ」
足元から可愛らしく、無邪気な子供の声が聞こえた。と、同時にふっと力が不思議と戻った。
ぐっと地面を押し体を起こして、わたしは目の前の子供に驚いた。
聞こえた声で勝手に“子供”と認識してしまった為、目の前の現実をすぐに受け止めれなかった。
小柄で小学生の様な体形に対して、首から上がウサギだった。
ウサギの被り物という訳ではなく、今の今まで見てきた事のある生きたウサギだった。
真正面から見ても側面にあるウサギの瞳は、真っ赤である事が分かるぐらい大きかった。
真っ白な絨毯に赤い血が滴り落ちたかのように、その存在は2つあった。
瞬きをしたり、鼻をひくひく動かしたり、片耳だけ外を向いて音を聞いたり。
気味が悪いぐらいウサギそのものだった。
「アリスはお寝坊さんだね」
「・・・アリス?」
「そう、アリス。君の事だよ」
白ウサギに似合わない、人間の子供の人差し指をわたしに向けた。
「君が今度のアリスだよ」無邪気にそう言って笑い声をあげた。
昔見た夢に肉付けして物語を作成していきます。
ダークファンタジー要素がありますが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。