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Recruitment and hostility①

チャーリーゲーム事件が終わり、一安心――する間もなく新たな知らせが入った。自体は急展開を見せる。うららと北斗はどう立ち向かう?

 翌日のうららちゃんは眉間に皺を寄せたままだった。柳眉をひそめたたままの顔もいいが、やはり美少女には笑顔でいてもらいたいものだ。でも迂闊に冗談が言える空気でもない。

 理由は明白だ。昨日の「チャーリーゲーム事件 で助けた二人が死んだのだ。自殺だった。それも家族揃ってだ。正確にはあの家族――藤平紗弥香の家族と、事件の被害者の一人・山城遥がだ。

あの夜、仕事が終わって事務所に戻ってからIGHAへの報告書を作っていると、IGHAの日本支部――JGHAからうららちゃんのGフォンに連絡が来た。GフォンはGHOST HUNTER専用のスマホだ。GHOST HUNTER試験に合格した者には漏れなく支給される。GHOST HUNTER同士のやり取りは全額無料で使えるし、当然データのやり取りも超高速通信で無制限にできる。通常のゲームやブラウジングも有料で可能だ。無論うららちゃんはやっていない。

 で、JGHA支部長自らうららちゃんに連絡を取ってきた。GHOST HUNTER事務所で受けた仕事は自動的に警察とJGHAに通知が入るようになっているのだ。トラブルを避ける為らしいが、ある意味では監視下にあるようなものだ。いい気分はしない。

 Gフォンに出たうららちゃん表情が一変したのは、そのせいじゃなかった。只ならぬ様子に驚いて近付く俺の気配にも気付かず「まさか!」「そんな馬鹿な事あり得ない!」「何かの間違いじゃないの!?」と繰り返すばかりだった。

 Gフォンを置いて一息入れて――俯いていて表情は分からなかった――俺に藤平家の惨劇を伝えた。

「そんな……!」

 それ以上言えなかったのか、敢えて言わなかったのか。その時は自分でも分からなかった。今なら何となく分かる気もする。

 すぐにパトカーが来て藤平家へと戻り、現場検証に協力する事になった。遺書も書いた上での飛び降り自殺で、事件性を確認する為の聞き取り調査と言う名目だった。

 こういった事件が起きた場合、オカルト事件である可能性もあるので、警察と協力関係にあるGHOST HUNTERが「霊査」という形で協力する事になっている。というか、専門のHUNTERもいる。彼らは高度な正確性を求められるので、S級以上が担当する事になっている。

 今回の担当GHOST HUNTERは面識が無かったそうだが、勿論うららちゃんは身の潔白が証明された。それはいい。が、突然の自殺――というか心中か――が何故起きたのか? 如何にも怪しいじゃないか。「チャーリーゲーム事件」が解決した直後だぞ。普通なら安堵して平穏を享受している筈だ。

 しかも遺書にはこの世の不条理に絶望してと書いていたそうだ。霊査を担当したHUNTERから聞いたらしい。さすがに普通は教えてはくれないだろうな。その日はそれで帰してもらい、報告書を仕上げて帰宅した。せっかく仕事が終わったってのに、後味が悪い事この上ない。いや、それどころじゃないよな、人が命を――それも一人じゃないんだ――落としてるってのに。

 今日になってうららちゃんは藤平紗弥香達にチャーリーゲームを勧めたという本間に話を聞きに行ったらしいが、知らぬ存ぜぬで話にならなかったらしい。ただ、チャーリーゲームを勧めた事自体は認めたが、ほんの軽い気持ちだった事、その後は全く関与していない事を頑なに主張したという。

「っていうかね、あたしを口説こうとしてくんのよ、『君は彼女達よりも魅力的だね。放課後の予定は? 美味しいカフェを知ってるんだけどさ、どう?』とか言ってきやがるのよ! クラスメイトが自殺したっていうのに! あんなニヤケ面張り飛ばしてやりたかったわ!」

 事務机をドン! と叩いた両手が震えている。よっぽどなんだな。

「しかし……そいつの面の皮の厚さも相当なもんだな。インド象の尻並みだ。ていうか、その特進コースの奴らってのはそんなもんなのか?」

 うららちゃんの視線がきつい。下手な冗談は入れない方がよかったか。

「自惚れがあるのは確かね。エリート意識と言ってもいいわ。競争意識も強いから、もしかしたら『競争相手が減って良かった』って部分もあるかもね」

「上級国民予備軍ってとこか……俺には無縁な世界だな、理解出来ん」

「出来ない方がいいわよ、あんなの。人間性を捨ててまでいい暮らしってのがしたいなんて、金の亡者と変わらないわよ」

 金の亡者か……思わず誰かさんを見てしまいそうになったが止めておいた。仕方のない理由があるんだからな。

「でも、そうすると一体誰が、何の為にって話になるな」

「どうやって……が抜けてるわよ。それも含めて分からないと立件できない」

 オカルト事件は物証に乏しい。だが霊能力が公式に認定されているこの世界では犯罪対策が必要だという事で、S級以上のGHOST HUNTERが三人以上捜査・立証に立ち会い、全員一致で証明した場合に立件出来る事になっている。近年急速に増えてきたオカルト犯罪に対応する為、能力者の育成が急務となっているらしい。この業界も大変だな。

「あの時……エレベーターから降りた時にすれ違った男は?」

「何処の誰かも分からないでしょ? どうしようもないわ」

「霊能者でもか……」

「霊能者は魔法使いじゃないの。似たようなもんだと思われがちだけどね」

 そりゃそうか。取りあえずは警察の捜査を待つ。同時にこちらも独自に動く。その方針らしい。

「こっちも動くんなら『警察の捜査を待つ』わけじゃ無いんじゃ……」

「細かい事はいいの!」

 そう言い放つや、こちらに目もくれずGフォンをかけて待ち合わせの約束を取り付け、俺を引き連れて事務所を後にした。今日は営業どころじゃないって事か。


 待ち合わせ場所は郊外のカフェだそうだ。最近流行りの古民家を改装したカフェらしい。話題性だけでなく、本格的な水出しコーヒーが売りだ。恐らくだが、俺は一度言った事がある。記憶に残るくらいに美味かったが、今は言わない方がいいだろう。相変わらず眉間に皺がよっているし、ピリピリした空気が強くなっている。

 二人とも無言でカフェに向かっていると、人影が近付いてきた。

「失礼だけど……冴月うららさんかしら?」

「そうよ。じゃ」

「いやちょっと待ちなさいよ! 話があるのよ!」

「こっちは無いから。じゃ」

 とうとう前に回り込み、両手を広げて通せんぼをしてきた。

「話があるってんでしょ!」

「こっちは無いってんのよ! その図体で女言葉を喋る輩に用は無いのよ!」

 まぁそうだろうな。確かに顔は美形と言っていいし、美形によくある長髪だ。ただ、二メートル近い長身に加えて服の上からでも分かる筋肉質な体型。確かに女言葉よりも丁寧語の天才キャラ辺りが似合いそうだ。

「とにかく! 話を聞いてちょうだい! そこの喫茶店で飲み物くらいは奢るから!」

「なら最初からそう言いなさいよ! さ、行くわよ!」

 さすがは金の亡……いや借金返済の女王だな。見事な程の切り替えようだ。

 店で席に着くや、間髪入れず「一番高いコーヒー二つ」を注文した辺りは見上げた根性だ。と言うか俺も同様に見られる事が確定した瞬間でもある。

 イケメンロン毛はブレンドを注文し、店員が去ってから真田玲次と名乗った。

「私は『黄金の夕日教団』の広報主任をやってるの」

「あ、思い出した……ほら、あの建設中の大きな施設。あそこの……」

「そう、あれはうちの施設なの。で、君はいいから黙っててくれる?」

 さすがにムッとした所でコーヒーが来た。くそ、タイミングがいいのか悪いのか。

 うららちゃんは砂糖三つにミルク二つ、おれは砂糖無しでミルク一つで口をつけた。ムカつくイケメンロン毛はブラックだ。どこまでも気取った奴だな。

「でね、うららさん。貴女にお話があるの。うちと契約してくれない?」

「お断りよ。さ、行きましょ」

 コーヒーを一気に飲み干すやキッパリと断った。さすが俺の雇い主。気持ちいいな。俺も熱いのを堪えて一気に飲み干した。

「ちょ、ちょっと! あんた達ゴチになっておいてそりゃないでしょ!」

「あんたが奢るって言ったんじゃない。それとも嘘なの?」

「嘘じゃないけど……義理ってもんがあるでしょうが!」

「だから聞くだけ聞いてあげたんじゃない。感謝しなさい」

 なんともまぁ……気が晴れると言うか小気味いいというか。苦労してると違うなぁ……。

「さすがに一筋縄じゃいかないわね……まぁいいわ。これだけは聞いときなさい。契約金は五千万円。それも一年更新よ。つまり、これから卒業までの間に『何もしなくても』一億五千万円の収入が確定するの。悪くない話でしょう?」

「んな……!」

 言葉を失ったのは俺だ。そりゃそうだろう。テレビの中でしか聞かない収入を目の前の、それも年下の女の子が確約されているんだ。何も言えなくなるか、或いは大はしゃぎするかどっちかになるのが普通だろう。

 普通じゃないのは話を持ち掛けられて当人だった。

「信用できない相手の約束を信じる程子供じゃないのよ。それに、空手形は額面が大きいってのはお約束でしょ?」

 冷ややかってのはこういう事だと言わんばかりの視線と言葉。言われた方は腹が立つだろうなぁ。

「あんた……いい加減にしときなさいよ……ちょっと能力があるからって調子に乗ってんじゃないわよ……」

「あぁら……あんた本性を現すのが早過ぎね……。もっと隠せないようじゃ、それ以上の出世は諦めた方がいいんじゃない?」

 二人共に目つきがヤバい。止めに入るべきか?

「小娘が……あたしを舐めてたらどうなるか分かってんの? ただじゃ済まないわよ」

 ドスの効いた声。これはもうヤバい。止めなきゃ。

「いや二人ともその辺で……」

 うららちゃんが俺を制止した。どうする気だ?

「あんたこそ、諦めないと酷い目に遭うわよ。今ゴメンナサイすれば許してあげる」

「とことんまで舐めてくれるわね。どうなるってんのよ。やってみなさい」

「じゃ、遠慮なく」

 うららちゃんが大きく息を吸い込んだ。そして――

「きゃあああぁぁぁ! どこ触ってんのよ痴漢! 変態! 助けて北斗君!」

 大声で叫ぶと俺の腕にしがみついた。ああ、そういう事ね。合わせなければ。

「大丈夫かうららちゃん! てめぇ何しやがる!」

 奥からマスターらしき人が出てきた。店内にいた男性客も数人が立ち上がってこちらを見ている。イケメンロン毛の狼狽ぶりが心地いいな。

「お客さん……」

「ち、ちが……」

「この人! 痴漢です! テーブルの下から私の……!」

 ここで顔を伏せて言葉を切った。名演技だなぁ。俺はボロが出ない様にうららちゃんを抱き寄せるだけにしておいた。が。これが役得ってやつか、いい匂いがする。それに柔らかくて……いやいや、今はそれどころじゃ無い!

「あんた、ちょっと奥まで来てもらおうか」

「いや、あたしは……!」

「あんた、こんな女の子に何してんだよ!」

 サラリーマン風の男性客達がテーブルを取り囲み、親切にも「後は任せろ」と俺達を逃がしてくれた。サンキュー!



いよいよ本格的な展開に入ってきました。ストック分がないので厳しいですが、また次回もお付き合いいただけたら嬉しいです。

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