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楽しい転生一家  作者: ちょもらん
転生一家誕生
3/7

三、次男は勢い

マルガリータの婚約者の件で母様が大激怒した後、俺たち野郎はラルフ兄はもう置いといて、マルガリータをなんとかしないと一家大爆発だと慌てて知恵を絞った。

まだ口があまり自由じゃないが小難しいことばかり喋る末弟のアランは、どうしてもマルガリータに中継ぎをして欲しいらしい。

なんでそんなにこだわるんだと聞けば、乗っ取りが一番怖いのだという。


「よくよく考えて見てくださいよ。金や利権を引き出すのが貴族の婚姻政策です。一番上は職人に、二番目は騎士団務め、三番目は官僚コース、四番目は一歳児。四番目が成人する前に領地経営を手伝うよって嫁が送り込まれるでしょう? 鴨が鍋かぶってネギふりながら美味しいレシピの歌詞を声高に歌って見えるでしょう? みんなの婚約者を決める前に乗っ取れない立派な中継ぎを表明しないと断れない縁談がきちゃうんですよ?」


なんと俺たちの結婚までもが暗雲立ち込める領域に入るらしい。全員転生者なんだから好きなことして楽しく暮らそうぜ、としか考えていなかったもんでちょっと怖くなる。


「大体一番潰しがきかないのはポールお兄様ですよ。魔法教導が終了したらどうやって帰郷するのですか?」


来年から楽しい実家だと考えていたのだが、アランからしたら魔法教導まで受けた騎士が地元に返してもらえるなんて甘いんだとか。最近政治的な駆け引きを学んだらしいレオナルドも渋い顔をしている。


「そうですね、アランの言うとおりです。一時的に集合できるようにはなりましたが、任期中にここに残る理由をでっち上げられないと無駄に出世しちゃいそうですね」


空気を読んで離れるも近寄るもできる立場のレオナルドはちょっと気の毒そうに俺を見た。実家に帰る理由ができたぞと飛び付いたが失敗だったようである。悲しい。

俺が悲しい顔をしていると父さんがあっと何かを思い付いた顔をする。全員が父さんを見つめるとニヤリと悪人微笑をした。うん、この家系は悪役顔すぎるな。


「マルガリータを中継ぎは、もう決定でいいだろう。それでマルガリータは高等部に進学させる。でだ、そのマルガリータの婚約者はポール、お前が選べ。魔法教導つきのお前の上司になる条件は、マルガリータの婚約者になることだ」


悪人顔で世界征服を語るように見えているが、多分父さんは「おれあたまいーい」くらいのことしか考えていない。俺を教導対象に決めたときと同じ顔だが、それはもうアランに失敗だったと論破されている。話の中身というより父さんはあんま考えてないからなあとうろんげにしていたら、やっぱりアランが口を挟んだ。


「お父様、騎士団員が魔法教導を受けたいのは騎士団で出世がしたいからです。中継ぎの配偶者をするのに騎士団を離れろなんて本末転倒なんじゃないんですか?」


父さんの顔は世界征服顔から拷問を受けた後の犯罪者のように歪んだ。あれは多分、しょぼんくらいの感情である。

ここで俺以上にあんまりモノを考えないさっぱりとしたラルフ兄が参入した。転生カミングアウトしてから喋るようになったなあとちょっと嬉しく思う。


「領主の伴侶って退職しないといけないのか?騎士団って退職金でるのか?」


その言葉にレオナルドが反応した。


「騎士団には昇級試験制の職位階級があって実際の役職ではなくその職位階級で退職金が決まります。コネがなくて役職になれず役職給が出ない人も小まめに昇級試験を受けていれば退職金は上がります」


「あ、じゃあいけるね」


アランが前言撤回した。いけるのか? とみんなが注目したらアランはちゃんと説明してくれる。


役職になれないが地道に階級位を上げるタイプは現実的に現金主義なのだそうだ。いつか役職がくるためになんてロマンチストなことを考えるより、最終的に実入りを増やす金の話にシビアになってくるだろうという。コネもなければ継ぐ爵位もない貴族の三男以降が多く、生きることに貪欲だ。

中継ぎ当主をするマルガリータの伴侶になれば本人に爵位は発生しないが、貴族としての資格はマルガリータが爵位を持つ間は一時的に出るし、子どもに貴族子弟として教育の機会が発生する。これは平民が大金を積んでも得られない。これにプラスして、定年までの給与と退職金を役付き換算で算出した金を結婚支度金として約束する。約束であって、一括払いしないのは離婚した場合の清算が子難しくならないようにだとか言われたがそこはよくわからん。

とりあえず条件として、マルガリータに釣り合う年齢であること、中継ぎ当主の伴侶という期間限定爵位の婚約と理解できること、うちを乗っとるようななんか調子に乗った親戚がいないこと、他にもくどくど言われたがそのあたりの条件にあう先輩をリストアップすることを任された。


準貴族の出身で学園で苦労したという先輩、辺境伯爵家なんていいとこの坊っちゃんだと思ったが戦闘民族な実家に帰りたくなくて騎士団に逃げ込んだ先輩、継母が実家を乗っ取ってしまったので実質天涯孤独で帰れない先輩。あ、これは親戚がアウトなのか。

こんな感じで人物について語りながらリストを作っていたらアランに「ポールお兄様ってすごい人を見てるんですね」となんか尊敬の目を向けられた。これは嬉しい。




もう安心だなとあとは父さんに任せたのだが、うちの父さんはやっぱりやらかすタイプだった。てっきりあのリストから一人を選んだと思い込んでいたのだが、リストをそのまま転写したものを一枚、あとは「婚約者候補六人選んでくれ!」とメモして、俺の指導騎士を全て丸投げしていたのである。俺はすぐさま姉様から「あなたの黒歴史を多く知る順に選びます」という手紙を頂戴して王都に舞い戻ることになった。流石に一人で姉には勝てないのでレオナルドも引き連れて。

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