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天使

作者: 優希
掲載日:2017/03/05

少年は、崖に立っていた。

目の前に広がる広大な海を見るでもなく、ただ、立っていた。


「……」


少年は無言で空を見上げる。

何かを探すように視線をさ迷わせていた少年は、諦めたように俯いた。

少年が探しているのは、天使だ。

町の中でも空に一番近いこの崖なら、悩んでいる自分を見つけてくれるような気がした。

少年は、周りの人間が嫌いだった。

褒めてくれない両親も、出来のいい弟も、自分を選んでくれない親友も、睨みつけてくるクラスメイトも。

全員を消してしまいたい。

それが、少年の願いだった。

自分で消すとしたら、一人目を消した時点で警戒されて、残りの人間が消せない。

だから、天使に願おうと思った。

でも、どんなに待っても天使は見つからない。

もう諦めて帰ろう。そして誰かを消そう。

そう考えた時だった。


「君、私を待っていたんでしょう」


少年の背後で声がした。

勢いよく振り返った少年は、瞳を輝かせた。

自分を真っ直ぐに見つめて微笑んでいる彼女には、羽がある。

羽は普通の人間にはないものだ。


「僕の願いを叶えてくれる?」


「そのために来たのよ」


優しい声色に、疲れ切った心が浄化されているような気がした。


「全員、殺して」


虚ろな目をした少年は願った。


「僕の周りの人間、全部殺して!」


彼女は困った顔をした。


「私は、人間に手を下すことは出来ないの」


「そんな…」


「でもね、そんな面倒なことをしなくても、君が楽になれる方法を知っているわ」


「それは何!?」


期待に満ちた目で彼女を見る少年。

ゆっくりと少年に近寄った彼女は、少年の耳元で優しく囁いた。


「君が消えたらいいの」


少年はハッと気付いた。

確かに、それは多くの人間を殺すよりも簡単だ。


「大丈夫。君の魂は、私がちゃんと連れて行ってあげる」


「ありがとう」


晴れやかな顔つきになった少年は、そのまま崖から飛び降りた。

海が高く飛沫をあげた。


「どういたしまして」


彼女の顔は、もう笑ってはいなかった。


「…私が、連れて行ってあげるから」


にい、と彼女が口角をあげる。


「地獄にね」


呟いて、彼女は“黒い”羽を広げた。

少年の魂を、連れて帰るために。

ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ……:(;゛゜'ω゜'): 怖い……怖い……! 最後のどんでん返しが恐ろしい!!! とっても面白かったです。この作品はもっと評価されるべきだと思います!
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