新撰組スチームパンク
色々(表現も時代考証も、設定の作り込みもタイトルもそもそもの文章力も)とガバガバですが、習作って事で勘弁してください。
「HAHAHA! コノ、クロフネロボガ、世界サイーキョデスネ! 開国シナサーイ!」
今の我々であれば、それを『ロボット』と呼ぶのは簡単である。
だが、当時の江戸の庶民はその機械製の巨人を示す、適切な言葉を知らない。
変形し、人型ロボットとして江戸湾に突如現れた黒船を、どう表現すればいいのか、この時代の人々は知らない。
「巨人だ!」
「船が巨人になった!」
このように叫ぶしかなかったのである。
だが、その圧倒的な存在感は庶民は元より、新撰組をも恐怖させるには充分過ぎるものであった。
「で、でっけえな!」
「おいおい……」
「これは参ったねぇ……」
江戸城の西側。
原田、土方、沖田が続けて口を開く。
しかし、ここは最終決戦が行われる江戸である。
彼らに呆然としている暇は、ない。
「おいおい、よそ見していていいのかい?」
三人に切りかかったのは、鬼の面を被った維新志士たち。
正確には鬼の面に脳を支配された『人間であったもの』
鬼兵である。
「俺の鬼兵隊は空気なんか読んじゃくれないぜ?」
「ハッハッハ! あの黒船は私が受け持つ!」
一方、南側。
新撰組が見上げたのは、江戸城の天守閣。
その頂上で片足立ち、右膝を前に突き出し両腕を横に伸ばし鶴のポーズを取る……全裸の男!
「慶喜様!」
「はああああああああああっ!?」
唯一、徳川慶喜と面識のある近藤の叫びに驚きの声をあげる一同。
「あれが、あれが将軍!?」
「あれとか言うな! 無礼だぞ!」
永倉の驚きは当然であったが(全裸だし)、近藤としては仲間の非礼を許すわけにはいかない。
慌てて永倉の頭をはたくが、
「近藤よ、気にするでない! このような局面において目上も目下もあるまい! 貴殿らの無礼は不問に処す。思う存分、力を振ってくれい!」
「西郷ドーン!!!」
慶喜が沙汰を伝えるや否や、天守閣が爆風に包まれた。
新撰組が進む遥か前方にいる、西郷隆信が両肩に装備したキャノンで砲撃したのである。
「西郷! 貴様!」
抜刀、そしてつま先でトントンと地面を叩く。
すると草履の底が周辺に磁場を形成、永倉の身体が僅かに浮き上がる。
物心ついた時から剣術一筋、電気蘭学による武器には見向きもしなかった永倉であったが、移動速度を飛躍的に向上させる磁場草履だけは愛用している。
刀を下段に構え、一直線に西郷の元へ突っ込む。
その速度は音速にも匹敵する。本来は肉眼ではとらえられない速度であるが、そこに横から突如、人影が突進してきた。
「夜明けタックル!」
「ガアッ!」
防御の構えをする間もなく、長屋の扉に叩きつけられてしまう。
「日本の夜明けはすぐそこぜよ!」
タックルからすぐさま体制を立て直し、拳銃の弾丸を素早く叩きこむ。
タンタタン!
それをキキン! と弾く金属音。
長屋の中から現れた永倉の眼、瞳孔が完全に開き切っている。
「坂本ぉ……てめえは極楽浄土で勝手に夜明け眺めてろやぁっ!」
天守閣を包み込む煙が消え、全貌が見えるようになった頃、そこに慶喜は既にいなかった。
しかし、慶喜の声が江戸全域に響き渡った。
「江戸城、無血開錠!」
平賀源内がかつて発明したエレキテル。
そのエレキテルが日本にもたらした恩恵はあまりに大きく、鎖国体制下にあったにも関わらず日本は独自の技術である電子蘭学を発展させ、蒸気工学を背景とした欧州の諸外国と対等に渡り合える国力を備える事ができたのである。
電子蘭学の結晶とも言えるそれは、国防の最終局面において江戸城を決戦兵器にする。
複雑な変形の果てに、江戸城は人型のロボットとなり、天守閣に浮かび上がるのは双眸を表す二つの半月。
「ハッハッハ! これが城型決戦兵器、E・D・Joeである!」
慶喜の声が、大音量で周辺に響き渡り、反響した。
新撰組一同が慶喜の生存に安堵するのもつかの間、今度は黒船からペリーの声が拡散する。
「HAHAHA! E・D・Joe! クロフネノ強サヲ試ス、イイ機会デスネ!」
こんなしょうもないものを読んでくださって本当にありがとうございます。
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