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魔女の最後の魔法

作者: 茅野琴美
掲載日:2016/10/11

 この世界は剣が支流の世界だ。魔女は嫌われ者。見つかると酷い仕打ちにあう。私はそんなリスクを侵してまで魔女になった。それは私が愛す男のためにーー。


 私の名はリーフと言う。修行中の魔女だ。


 「どうした? リーフ、元気がないぞ?」


 顔を上げると私の愛す男がいた。


 「げっ!! どうしてそこにいるのよ! 何でもない!」


 魔女修行をして歩いて帰っていた途中だった。


 私は魔女と言えてない。この人に嘘をついてしまっている。だけと本当の事は言えない。何処かで本当の事を言って嫌われてしまったら? と思っている。そんな自分が嫌いだ。いつか言える時が来るだろうか。自分の気持もーー。


 「何でって……まあ、暗いから一緒に帰ろう」


 彼は顔を赤くする。

 静寂のひと時。

 今が言うタイミングなのだろうか。分からない。普通の人だったらどうするのだろうか。誰か私に教えてほしい。


 「ねぇ。カノンだったらどうするの?」


 カノンとは私の愛す男の名だ。カノンは剣士という職業に就かず農業を営んでいる。


 そんな私の独り言にカノンは何だ? という顔をする。

 リーフは暗い顔をしている。


 「ホントにどうしたんだ? 困っているなら俺が相談に乗る。何でも言え。力になってやるぞ?」


 リーフはカノンの横顔をそっと見る。その横顔はリーフの頬を赤く染める。

 本当に今が言う時なのだろうか。言って私の傍から離れてしまわないか。だけど、言ってって言ってるからその言葉を信じても良いのか。いや、私は愛す男の言葉を疑うのかーー。言おう。今がその時だ。


 「あ……、え……と、わ……たし、ね……ま、ま……、あ、いや、あ……、ちがっ、……す」


 どうしても言えない。「まじょ」「すき」たったの二文字だけというのに。自分がなさけ無い。愛す男に隠し事をして良いのか。何で言えないのか。


 「無理に言わなくても良いよ」


 優しい顔になった。

 するとカノンは月を見る。「月が綺麗ですね」と顔を赤くしながら呟く。


 私はこの意味を知らなかった。私を元気づけたいのかな? と位にか思わなかった。


 「月はいつもと一緒だよ?」


 私がそう言うとカノンは顔に手を当てた。「どうしたの?」と私は言いカノンの顔をのぞく。するとカノンやはり顔を赤くしながら私を睨んでくる。だが、鋭い睨みではなかった。私は純粋に不思議に思った。


 「もう、村に着くね」


 カノンの言葉に私は少し残念に思う。欲を言うともう少しこの時間が長く続いてくれれば。


 長い星の出る時間は過ぎ太陽が出る時間となるーー。


 私はいつも通りに起きた。すると家の外は何か騒がしい。


 着替えて現場に向かうとカノンが作っていた作物が荒らされていた。カノンは何処だと探してみるが見つからない。近くにいた人にも聞くが知らない、誰も見てないと言う。では何処に行ったのか。もしくは……。リーフの脳裏に最悪な事態がよぎる。


 走ってカノンの家に行く。バンッと勢い良く木のドアを開けカノンがいないか見渡すーー。残念ながらいなかった。では何処に行ったのか。村の外なのか。


 私は走る。無事にいて欲しいと思いながら。私はカノンを守ると誓ったのに。大切な人を再び失いたくない。あの時の父のようにーー。


 だがそんな希望は崩れる。カノンを見つけたが腹部から血を流して草の根に染みこんでいた。


 「カノン……? どうしたの?」


 私は動揺する。私は今まで何をしていたのか。何をしてきたのか。今までの努力が無駄になる。守るって決めてたのにーー。


 「リー……フ、か……」


 カノンの目は光を無くす。だがカノンは思う。目の焦点が合わない。身体は寒い。だが腹部は燃えるように熱くて痛い。リーフに気持ちを伝えなければ。一生後悔する。


 「ず……っと……す……き……だっ、た」


 これでいい。もう、限界だ。

 カノンはもう思い残す事はないと言わんばかりに清々しい顔になり目を閉じたーー。


 「カ、ノン? 目を開けて? ねぇ、目を開けてってばっ!! ねぇ! ねぇ! いやだいやだいやだ!!!! あけ、てよ……」


 リーフの目には涙が溜まる。涙が出れば魔女を捨てたと言っても過言ではない。涙が出れば魔法は一生使えない。でも出した。愛する人が死んでしまったのだ。涙が出ない人なんていないだろう。


 リーフはカノンの身体に涙を垂らす。そして唇が重なる。愛しているだなんてもう伝えられない。それがリーフの最大の後悔ーー。


 「あなたのことずっと好きだった……。いえ、愛してた……」


 リーフはそう呟くと子供の様に泣きわめいた。「ごめんなさい」と何度も言いながらーー。




 「うる、さいな。リーフ……?」


 カノンの声が聴こえる。だが空耳だと思う。


 カノンは体を立たせる。いたたと言いながら。

 それに私は直ぐに泣き止み幻覚まで見だしたと思った。


 カノンは腹部を見て傷がないこと確かめるとリーフに抱きついた。


 「リーフ。ごめんな……。それと、何で傷が無いんだ?」


 リーフはその言葉に驚く。

 傷が無くなったのはリーフの涙の最後の力、癒やしの魔法に変わったのだ。


 「……。心配した、んだがら……!」


 リーフも抱きつく。そして、止まっていた涙は再び流れる。



 もう、後悔はしたくない。伝えなきゃ。今、全てを私の愛す人に言うーー。

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