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紅い勇者と翠の少女(仮)  作者: 華珠夜
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第六話 旅立ち

───強くなりたい。

いや、願望じゃダメだ。強くなるんだ!強く・・・・・・


勇者ベルーナの出発を見送りグレンと話した後、また夜明けに集まり話すこととなりその場は一時解散。仮眠するため最初に目覚めた薄暗い部屋へ戻ってきた。とは言え、眠気はないし夜明けまでは長い時間でもない。ベットに寝転がっているものの、ただこのまま時間が過ぎるのを待つことになりそうだ。


──ギギッ・・・ギィィィィ


ゆっくりと扉が開く。僕は体を起こし扉を見つめた。


「だっ、誰!?」


「起きてる・・・紅い髪の少年・・・」


どこかで聞いた静かで淡々と語られる女の人の声。薄暗い部屋に廊下の明かりと共に現れた人影がゆっくり僕に近づいてくる。


見えたその顔に一瞬で体温が上がった。

なんと、僕の天使様が降臨なされた!


まさかの出来事に頭の中は真っ白です。祭壇前で見かけたときは聖女の様に感じたが、薄暗い部屋で見る彼女はなんともミステリアスな雰囲気を醸し出す。

僕が例のごとく見とれていると彼女は口を開いた。


「初めまして・・・私はハノン。急な訪問ですまない」


「だ、ダ大丈夫です。むしろ、ぁ、ありがとうございます」


緊張のあまり何を言っているのか自分でもわからない。


「そこ・・・座っていい?」


「ど、どどぅぞ」


同じベットに腰掛けたハノンさん。ち、近いです。甘い良い匂いがします。そしてやっぱり可愛いすぎます。


「私は・・・前からキミを知ってたんだ。神樹で何度も見かけてたから」


「あそこで!?見られてたなんて・・・人の気配なんて感じたこともなかった」


「・・・キミの名前はアイルだったね?聖堂で聞いていたわ。・・・ここに来たのは、ただ話してみたかったから・・・それだけ」


「ぅ、うん」


「キミが森で遊んでると、神樹が・・・森全体が何だか嬉しそうにしてた。不思議な男の子」


そんな綺麗な顔で見つめられると・・・もうパニックです。心臓がバクバクしてるの聞こえてそうで・・・。もうホントに・・・・・・


「大好きです」


声に出てた・・・・・・・・・・・・


「・・・・・・・・・バカ」


はい、終わりました。


「・・・・・・またね」


彼女はそう言って甘く良い匂いを残し部屋を後にした。放心状態でそのまま朝を迎えたのは言うまでもない────。



扉がノックされ開かれるとリズさんが入ってきた。


「アイ君おはよう♪・・・・・・・・・なんだか・・・大丈夫?」


リズさん・・・ダメです・・・・・・。


「リズさん、おはようございます」


「これ、アイ君の服。準備出来たら神官長の所へ行きましょ」


僕は着替えを済ませリズさんと大神官グレンの元へ向かった。

聖堂へ入ると、グレンと共にハノンが立っていた。


「お待たせ致しました神官長。連れて参りました」


「うむ。短い休息の時間ですまぬなアイルよ」


「ぃ、いえ。大丈夫です」


「早速ですまないが、ちょっと状況が変わってしまってな・・・」


グレンは深刻そうに話し始めた。

あれから僕が開いてしまった封印の扉を再度封印するため向かったところ、中にあった大量の魔石が無くなっていたらしい。それによって神樹の力と合わせ広域に張っていた聖力結界が消失し、この地域に魔物が出現し始めることを聞かされた。多くの魔物はダンジョンで生まれ、それが地上へ溢れ出てくるらしい。


「暗躍している者が動き始めた。止めねば・・・世界に何が起こるか・・・・・・」


「・・・止めましょう。もう、あんな光景見たくありませんから」


「お前のような少年に戦いの運命を背負わせてしまうとわな・・・許せ・・・・・・」


「決めたのは僕ですから。気にしないでください」


「リズ、ハノン。アイルと共に行き見聞を広め、共に成長し邪悪を撃つのだ」


「了解致しました」


「はい・・・」


「旅立つ前に、お前たちに渡す物がある。私に出来る事はこの位しかないのだ。少しでも力にならせてくれ」


グレンがあのミスリルを手にし魔法を展開し始めると、刻まれた紋様が紫色の光で浮かび上がり強く反応を示している。


「我は斬る者。汝が姿を剣とし我が刃となれ。汝、我が剣なり────クリエイトマジックソード!」


グレンの魔法によりミスリルは剣の型を成していく。一方、術者のグレンは額から汗を流し疲れを隠せずにいた。


「アイル、このミスリルの剣を授ける。一見ただのショートソードだが、前術者の魔法から切り離した魔力吸収の紋は残してある。魔力吸収の効果が付いたミスリルソードと言うわけだ」


「ぁ、ありがとうございます!でも、グレンさん大丈夫ですか!?」


「心配はいらん。少し魔力を使い過ぎただけだ。次は、ハノン。お前にはこの指輪を。空間魔法の指輪だ。高い魔力を持ったお前にしか扱えないだろう。この指輪の力があれば、別次元の空間を開きアイテム収納など旅に役立つはずだ。だが、無闇に使ってはいけない。それなりに魔力の消費もあり、見られれば狙われることになり得る。奪われ悪用される事の無いようにな」


「・・・はい。ありがとうございます」


「そしてリズよ。お前にはあの杖を」


グレンは祭壇に飾られた立派な杖を取り上げリズに手渡した。


「この杖は・・・・・」


「うむ。アートリアの聖杖。女神の加護があるこの杖は、きっとお前の神聖魔法に役立つであろう。そして、聖杖を持つにあたり大神官の位を授ける。リズよ・・・二人を頼んだぞ」


「はい・・・必ず、、守ってみせます」


「お前たち三人が共に成長し、立派な英雄となる事を願う。まずはアイル、お前の爺様に会い無事を確かめるが良い。ミラルーンの街へ行けば魔物の話なども聞けるやも知れん。神殿から消えた魔石の行方も分かれば良いのだが・・・初めから多くが分かることは少なかろう。焦らずに行け、今ここからがお前たちの旅の始まりだ」


僕たち三人は装備を整えミラルーンの街を目指しアートリアの神殿を後にする。

本当に冒険をする事になるなんて思いもしなかった。昨日の出来事がまるで遠い昔の様に感じる。


旅立ちのこの日もまた雨が降っていた───────

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