第三話 扉
第三話出来上がりました。よろしくお願いします。
───甘くて優しい匂い。
フカフカでフワフワな感触に包まれている。
とっても素晴らしい心地良さは、いつまでもこうしていたいと言う欲求を抑えられないくらいのものだ。
「じいちゃん・・・まだ起きたく・・・なぃょ・・・」
ガバっ!
「じいちゃん・・・・・・」
勢いよく身体を起こすと全く見慣れない光景が目に映る。
「ここは・・・どこ・・・・・・?」
目覚めた僕は薄暗い部屋の中をキョロキョロと見渡し、知らない場所でいつの間にかブカブカのシャツに着替えている自分に困惑している。
裸足のままで立ち上がり、すぐそばに見えた扉を開くと二手に分かれた廊下に出た。所々にランプが吊るされており明かりが灯っている。
行くあてもなく歩き回るのも危ないが、あの薄暗い部屋にただジッとして何かを待つことにも不安を感じた僕は幾つもの扉の前を通り過ぎていた。
幾つ扉を見てきたかは覚えていないが想像以上に広い建物だ。
しかし、何故こんな所に来ているのだろう?思い返しても覚えているのは夢であろう出来事で・・・・・・うん、どこも痛くない。
そんなことを考えながら歩いていると目の前に大きく頑丈そうな扉が現れた。
「外に出れる扉なのかな・・・」
恐る恐る扉を押してみると想像以上に重い。重いと言うよりビクともしない感じだ。取手や鍵穴の様なものも見当たらないし・・・。
よしもう一回だ!
「ふんっ!んぐぐぐぐぐっっ」
力いっぱい押しているが扉は動く気配がない。
────キィィィィィィン
耳鳴りの様な音が聞こえた。その瞬間。
ギギッ・・・ギィィィィ・・・・・・・・・
扉は少しずつ開くと中から光が漏れてきた。外の光ではない様だ。
「やった!」と、小さくガッツポーズをし、入れるくらいに開けた扉から中を覗くとその光景に心を奪われた。
至るところがキラキラと紫色に光り輝いて飲み込まれそうになる。
無意識にいつの間にか中へ入っていた。
少し歩いた所でふと我に返る。紫色の光が夢と重なり現実へ繋がっていく。
「この・・・光は・・・・・・」
(『ギィィィィィィィィ!!』)
緑色した怪物たち・・・。あいつ等がやられて出した光がこんな紫色だった。でも、それは夢だろ!?じゃなきゃ僕がこんな所に・・・・・・。
夢だ!これも夢!全部夢だ!!夢だ!夢だ!!夢夢夢夢夢夢夢夢・・・・・・
膝をつきその場に崩れる。
「キミどうやってここに・・・」
この声!?あのお姉さんの・・・!?
声に驚き振り返ると、そこには怪物をやっつけてくれたお姉さんが立っていた。
「ゆ、夢じゃ・・・」
「ん?夢?じゃないけど・・・?」
呆然としている僕をお姉さんはそっと抱き締めてくれた。甘くて優しい匂いに包まれ涙が零れた。
「ねぇ、キミの名前は?」
「ぁ、アイルです。アイル・ルーシュです」
「そっか、アイ君ね♪」
そう言って僕の涙を優しく拭ってくれた。泣いていたことも「アイ君」なんて呼ばれたことにも恥ずかしくなって顔が熱くなる。
「アイ君はどうやってこの部屋に入ったの?」
「どうって・・・そこの扉から・・・」
「それなのよ。普通には開かない扉なのに・・・」
「えっとぉ・・・思いっきり押してみたら開いちゃいました」
「そっかぁ、押したらねぇ・・・」
「ぉ、お姉さん?も、もう大丈夫ですから・・・」
「あら、遠慮しなくて良いのに♪」
ずっと抱き締められたままで柔らかい感触が腕に押し当てられている。顔が熱い・・・真っ赤になってるのバレてるんだろぅなぁ・・・。
「とりあえずここを出ましょ♪ここはあまり良い場所じゃないの」
「は、はい」
「あとお姉さんのままでも良いけど、私はリズよ♪」
「は、はい!お姉さん」
僕達はクスクス笑いながら光の部屋を後にした。
リズの後に付いて廊下を進んで行くとまた別の大きな扉が見えてきた。今度の扉には装飾があって色々な模様が刻まれている。
「お姉さん、あの・・・ここってどこなんですか?こんなに大きな建物って・・・・・・まさかお城ですか!?」
「いいえ違うわ♪ここは神殿なの。」
「神殿・・・?」
「そう、神殿。あの時アイ君がいた神樹からもう少し森の奥に進んだ所になるんだけどね」
神樹?あの大木のことだろうか。僕だけの神殿と思っていた場所の奥にはホントの神殿があったなんて・・・。びっくりすることばかりで全く理解が追いつかない。
「そして私はこの神殿に仕える神官よ」
お姉さんは真っ白なローブを翻しニッコリ微笑んだ。
「さぁ着いたわよ。神官長に挨拶しましょ♪」
───大きく重厚な扉に手を伸ばした。
少し執筆ペースが落ちたかな?
頑張って書いて行きますのでよろしくお願いします。