第二話 光─ヒカリ─
アイルに襲いかかる怪物たちとの決戦の行方をどうぞお楽しみください。
森の奥を警戒している怪物たちは近づいてくる灯りをじっと見つめ身構えている。
僕は受けたダメージを抜こうと呼吸を整え、痺れの残る両手を必死に動かそうともがいていた。
「あらぁ?騒がしいと思って出て来てみればゴブリンじゃないですかぁ」
んん!?
女の人の声がした!?
「ダメだ!こっちに来ちゃいけない!!逃げて!!!」
今出せる精一杯の声で僕は叫ぶ。
「あら大変、キミ大丈夫?」
森の奥から来た謎のお姉さんは怪物など眼中にない様な素振りで、ランプ片手に僕のいる方へまっすぐ歩いて来る。
『ギィィィィィィィィ!!』
リーダー格の怪物が唸り声をあげると、5匹の怪物たちは一斉に襲いかかる。
「穢れたゴブリン風情がっ・・・」
彼女が怪物に向け手をかざすと指先に光が集まった。
「聖なる光の神槍よ魔を滅ぼせ・・・ホーリーランス!」
指先に集まった光は5つの光球体となり猛スピードで怪物に飛んでいく。光球体は怪物を捉えると槍へと変わり心臓を貫いて消え去った。
「す、すげぇ・・・」
思わず声に出ていた。じいちゃんのパワーにも驚いたが、目の前で起きているこの状況は理解すらできていない。
心臓を貫かれた怪物は紫色の光に包まれ、砂となり崩れ落ちた。
『ギィィッ』
リーダー格の怪物は大きく眼を開き後ずさりしている。
彼女はすかさず手をかざし、2本の指先に光を集め宙に十字を描いた。
「悪なるものへ神の裁きを・・・ホーリークロス!」
宙に描いた十字が輝きだし怪物へ向け一直線に放たれた光は怪物の腹に大穴をあけていた。砂となり崩れ落ちた怪物たちと同様に紫色の光に包まれたリーダー格の怪物は、一瞬強く発光した後小さな石となりその場にコロンっと落ちた。
「弱っちいのに魔石が落ちるなんてラッキーね♪」
謎のお姉さんは嬉しそうに怪物だった小さな石コロを拾うと僕に近づいてきた。
夢でも見ていたのだろうか?あんな怪物たちを一瞬でやっつけてくれたのは細くてか弱そうなお姉さんで、何が起きたのかも未だに全然わからない。それでも全身にまとわりつく痛みが現実を物語っている。
「あっ、あのっ・・・」
「キミ大丈夫?ちょうど魔石もあるし超回復しちゃいましょ♪」
僕の言葉を遮って優しく頬に触れられたお姉さんの手は少し冷んやりとして気持ち良かった。
ランプを地面に置きあの石コロを僕の額に当てる。
「この者に神の祝福を・・・」
僕は光に包まれた。
その瞬間全身から痛みと疲労が消えていく。
助かったことへの安心感と温かく優しい光の心地良さで今まで保っていた緊張の糸はプツりと切れた。僕は眠気を我慢できずに意識を失いお姉さんの胸に倒れ込んだ。
「あらあら、甘えん坊さんなのね♪、、あれ?これは・・・・・・」
彼女はアイルの持っていた武器に目を奪われた。文字の様な模様が紫色に光り浮かび上がっている。
「こんな物をどこで・・・あなたは一体・・・・・・」
眠ってしまった少年を背負い、武器にランプを引っ掛けて森の奥へと連れて帰る。
───甘くて優しい匂いが僕を包んでくれる。
悪夢でも見ていたかの様なあの出来事は、やっぱりただの夢だったんだな。
何だかとても心地好いんだ。もう少しだけ寝てても良いよね・・・・・・
第三話もサクサク書いていきたいと思います。
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