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フラグ、壊してしまいました………。

作者: 秋月煉

どうぞ生暖かい目で御覧くださいませ。


それは私が、とある書店の店頭で、最新刊の本を取ろうとした、まさにその時に起きました。


「ちょっと! その本っ! わたしが買うの! 寄越しなさいよっ!」


急に声をかけられた為に、ビックリして其方を見ると、一人の同世代位の少女がいました。けれど、正直に言って近くには行きたくありません。その………、随分とブクブクに太っていらっしゃり、脂汗がダラダラと流してまして。正直、気持ち悪いです。髪型はポニーテール。服装は私服のワンピースですね。


「あ、はい、どうぞ」


別に、本は他の場所でも買えますから、私は素直にお渡ししました。


「何よっ、その態度!?」


「え?」


いきなり逆ギレされましたが、なぜですか!? 思わず呆れて、キョトンとなってます。


「わたしに渡すんだもの! もっと丁寧にするのが普通でしょう!?」


え、いや、それを言われましても。はて、困ってしまいました。


「ねえ、皆もそう思うでしょう!?」


急に彼女は、私達の騒ぎに集まり出した、多人数の方々に言い放ちました。えー!?


「そうだそうだ! 彼女が正しい!」


「ブスは引っ込んでろよ!」


「お嬢さんに謝れ!」


「彼女が正しいんだ!」


因みにこれ、全部私に向けて言われたものです。あら、私、切れてもいいかしら?


「ほらね! 私が正しいのよ!」


んー? 彼女は周りに言われて、上機嫌で言ってますけど、失礼ながら、そう言っているのは、特定の一部のみ。若い男の子達ばかりなのです。他の女性や男性の方々は、不機嫌そうに彼女を見ています。私の方には、何故だか哀れみの視線が来ました。いえいえ、お気になさらず。


「あれ? 可奈(かな)? どうしたの? こんな所で」


そういって人垣の中から現れたのは、私の幼なじみ兼婚約者の鴉丸 大翔(ひろと)くん。歳は17才で高校二年生です。黒い髪は短くて、顔はイケメン☆ 背もスラリと高くて、モデルさんみたいです。本日は学校の帰りらしく、深いワインレッドのブレザーに、黒地に赤のチェックが入ったズボンを履いてます。ブラウスは白で胸元にネクタイをしめています。学校指定バックと、靴は革靴。うん、かっこいいです。

あっ! そういえば私、名乗ってませんでしたね。改めまして、橘 可奈と申します。高校一年の学生です。大翔くんと同じ学校なので、ブレザーは同じ。違うのは、柄が同じスカートで、胸元が赤いリボンである事ぐらいでしょうか?


「ちょっと!? イケメンじゃない!」


あ、あちらさん、大翔にロックオンしましたねー。目が狩り人と同じく、爛々としております。


「待ち合わせの場所には来ないし、どうしたかと思ったよ」


「ごめんなさい」


私は彼には弱いのです。ここは素直に謝りましょう。


「ねぇ〜♪ そんなブサイクなんてほっといて〜、わたしと遊びにいきましょうよ〜♪♪」


急に甘ったるい声を出し始めた彼女に、一部を除く皆さんが一斉に引きました。勿論、私と大翔も例外ではありませんでした。

だって彼女、脂汗ダラダラのうえ、動くたびにお肉がぶよんぶよんと……………すいません、気持ち悪くなってきました。


「はあ? なにいってんの? ブスは引っ込んでてよ、僕は可奈と話してるんだからさー」


あ、大翔くん、もしかして切れてます? 怒りのオーラが見えるんですが!?


「えっ!? な、なんで!? 皆がわたしに綺麗だって言ってくれたもん!」


はい? なにいってんでしょうか? この方、頭大丈夫ですか!?


「はあ? 言うわけ無いじゃん、綺麗だって言われるのは、可奈みたいな美人さんの事をいうんだよ」


はい!? 大翔、何でよりによって、こっちに話を振るんですか!? 巻き込まないで下さいよ!!


「あ、あの、大翔?」


私の顔が引きつっているでしょう。しかし、ここに来て漸く分かりました。この状況を作り上げた理由が。


「なぁに? 可奈」


何で今、私に向かって、大翔は大変キラキラする笑顔を向けているのでしょう??


「あ、あの………彼女、“後天性”の人では?」


「あー、それなら納得、そうだなぁ、種類は“魅了(チャーム)”か?」


大翔と私の言葉に、ギャラリーは更に彼女から離れます。勿論、理由があっての事です。

この世界には、魔法があります。勿論、全員が使える訳ではありませんが。普通は、歩き始めるのと同じくらいに、魔法が使えるようになります。なので三歳、十歳の時に二回、健康診断ならぬ魔法診断をするわけです。大体、人口の半分位でしょうか。

しかし中には、十歳を過ぎてから魔法が使えるようになる、“後天性”と呼ばれる方もいるのです。これがどうしてなるのかは、学者の方々が研究しているそうですが、未だにはっきりした理由は分かっておりません。

さて、魔法にはいくつか種類がありまして、その中でも危険視される一つが“魅了”です。魔法の中でも自分で制御出来ないものの一つで、魅了を中和する“アクセサリー”を着けるしか、方法がないのです。


「な、なにいってんのよっ! 後天性とか魅了とか、訳分かんない事言わないでよ!」


……………えっ?


思わず大翔を向くと、彼も此方を向きました。目が語っています。


この人、なにいってんでしょうか? と。


正直に申し上げまして、私が述べた説明は、この世界では常識的なものです。知らない人なんていませんよ? だって、義務教育である幼稚園から、魔法に関しては教育されるんです。既に魔法を開花させた子は自分の能力の制御を。それ以外の子は、魔法の危険性と、対象の仕方などを。他にも教科書があって、魔法とはどんなものかを勉強するのですよ。義務教育たる高校生まで。大学は任意ですが、必ず魔法学は学ばせられる訳でして。

つまり、何が言いたいかと言いますと。


この人の頭は大丈夫か?


これに尽きる訳です。だってこの世界で魔法を知らない人間なんて、いるわけないんですから。


「だ、だって、ここは“わたしがヒロイン”の世界だもの! 嘘よ、全部嘘っぱちよ!」


そう叫んだ彼女の周りには、目がヤバイ数人の男の子達。これ、彼女の魅了にかかってしまったんですね…………。


「仕方ありませんね、大翔、バッチ付けましょう」


「えっ? あー、しょうがないか」


そう言って、私と大翔はポケットから小さなバッチを取り出します。魔法の杖と剣が交差したような紋章が描かれたバッチ。これを見たギャラリーの人々が、驚いたように此方を見ています。


「では改めて、ご挨拶しますわ、魔法協会認定1級の橘 可奈と申しますわ」


「同じく、協会認定特級の鴉丸 大翔(ひろと)だ」


名乗りを上げると、ギャラリーから尊敬等の意味の方の野次が飛びます。ギャラリー、うるさいですね。

さて、一応、説明しますと。

この世界では、魔法協会という方々が魔法を使う方々を管理しているわけです。魔法を違法に使う方もいる訳でして、その取締役もかねています。

協会は認定した、言わば公務員のような存在を、等級に分けて使っている訳です。さて、私は一級な訳でして、能力的には平和な能力を持ってます。まあ、大翔は危険な能力持ちですが、大丈夫でしょう。制御は完璧ですし。


「そのバッチが何だっていうのよ! 何でヒロインのわたしの言うことが聞けないの!?」


未だに意味不明な事を言っている彼女には悪いですが、違法に魔法を使っている人がいた場合、私達、協会認定の魔術師は、彼女を逮捕、もしくは保護しなければいけません。


「大翔くん、本部には連絡…」


「さっきしといた」


言い終わる前に、大翔に言われてしまいました。


「さてと、可奈、現実みせてやれ」


うわー、大翔くん、やっぱりキレてましたか。まあ、お仕事ですので、やりますけれど。


「ヒーリング!」


私の手から、優しいキラキラした色合いの小さな光が出て来て、辺り一面に広がります。これは私の魔法の一つで、あらゆる異常状態を解く能力があります。


「あれ?」


「俺、なにしてたんだ?」


魅了が解けた少年達は、辺りをキョロキョロ。そして私と大翔が付けているバッチを見て、驚いてました。被害者くん達、元に戻って良かったですね?


「え? 急にどうしたの?」


意味が分かってない自称ヒロインさんは、茫然自失。この後、駆け付けた魔法協会の方々に、逮捕ではなく保護されました。まあ、魔法を知らないらしいですから、これからみっちり勉強させられますよ。安心してくださいな。


「んじゃ、デートと行くか」


「はい♪」


実は私、大翔にも言っていない事があります。


自分が“転成者”で“記憶持ち”である事を。


私が気付いたのは、三歳の検診の時でした。魔法が使え、更に希有な治癒の魔法持ちと分かった時、何か違和感を感じて。そして思い出したんです。


ここが乙女ゲーム、『君の魔法に恋をする』略して君ラブの世界だと。


そして最も最悪な事に、自分がライバルキャラだと気付いてしまいました。もう、終わった………、そう思いました。

私のキャラは、優しい心を持つ聖女。なので、ドロドロしたようなのはありませんでした。だって虐めや意地悪、そんな事、何一つないんですよ。全てにおいて完璧な聖女樣なんです。

しかし、故に攻略者の一人である婚約者の大翔が、私に引け目を感じてしまうんですよ。そしてヒロインと愛し合い私は捨てられる。

嫌に決まってますよ。私、この能力の所為で、犯罪者組織に狙われるわ、誘拐なんて両手じゃ足りないくらいです。更に婚約者に捨てられる? ふざけんなっですよ!


だから私は決めました。大翔を大切にしよう、と。私に接点があるのは、大翔ともう一人、同級生の子だけです。同級生の子には既に女の子がいましたので、勿論却下。そんな訳で、大翔とは仲良しになった訳ですが…………、まさか、フラグクラッシャーがここにもいるとは思えませんでした。大翔は、危険能力持ちですが、協会の保護を受けるだけ…………のはずが、まさかの等級持ちになってまして。勿論、私は自分からなったわけですが。


はい、フラグ、壊しちゃったんですよ。大翔とヒロインの色々な奴を。代わりに私が出来るフラグは全部回収済みですが☆


お陰さまでヒロインの影には怯えてますが、今現在、とーっても幸せです♪



◇◇◇◇◇



さて、君ラブのヒロインはといえば……………。


まさかの太っちゃって、面影の無い少女は、勉強部屋にて魔力を封じられながら、この世界の常識を漸く確認してました。暴れたくても、仕掛け等があるので無理。


こんな感じのため、フラグは一切たちませんでしたとさ。




フラグ、壊してしまいました………。



初めましての方も、お久しぶりな方も。


どーも、秋月煉と申します。以後、お見知り置きの程を。


まずは読了お疲れ様でした。


いかがでしたでしょうか?


久方ぶりに、ふと思いついた作品です。あまりクオリティーは高くありませんので、生暖かい目で御覧くださいませね?


感想やご意見は、いつでもお待ちしております。なお、優しい言葉であると助かります。お返事はメッセージにて、返させて頂きます。

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― 新着の感想 ―
[一言] うあ…天国から地獄ですねコレ…
[一言] ヒロイン、ウザっ!
[気になる点] >さて、一様、説明しますと。 一様→正しくは、“一応”です。 結構、この誤用をされる方は多いみたいですね。 “一様”は、“みんな、同じような様子”とかいった意味になります。
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