プロローグ
初めまして、羽紅と申します。なろう初投稿ですが、どうぞよろしくお願いします。
あなたを縛る鎖から私はあなたを解き放ちたい
恨みと憎しみに囚われないで
本当は誰よりも心優しい妖
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光ひとつ入らない暗闇。音一つない静寂。そして、この空間では温度すらなく、温かみも感じなければ寒さを感じる事もない。
だが、何もないはずのこの空間は彼にとって、とても冷たい空間だった。
心を凍らせ、何かを考える思考力を奪うほどに。
もう、どれだけの時間をこの空間で過ごしたのか。
とうの昔に時を数えるのをやめた。
そもそも、この空間では時間の感覚などすぐに狂ってしまう。
それに、時を数えようとも、この空間から解放されることなどないのだから。
これからも、永遠の時をここで過ごし、いつか己の命が尽きるその時まで、解放されることはない。
希望を持っていても辛いだけだ。
彼は何もないその空間で、久しく開けてなかった目を開く。
何かが見えるわけではなかった。
それでも、闇を見つめ手を伸ばす。
だが、その手をつかむ者はいない。
彼は小さく悲しげな笑みを浮かべ、諦めたようにまた眠りにつく。
いつか、死という名の解放が訪れることを願って。




