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終わり

世界は黒く、光る無数の文字たちが奔っていた。

ここは世界の中枢。かつて僕が因果を断ち切った場所。


魔王が生まれる原因も勇者が生まれる原因もなくしたはずだった。

魔王というのは増え過ぎた生き物を殺すために創られ、勇者は暴走した魔王を殺すために創られる。

まあもうどうでもいいんだけど。

僕は進む。さらなる最奥へ。


「……あった。これが世界の核か」


明るく輝く光の文字の塊。余りにも密集しすぎ、一つの光球に見えた。


「これを壊せば……全て終わる」


終わるんだ。

はは……やっと僕は……

僕から全て奪ったこんな理不尽な世界に復讐できるんだ。


「幾千もの怨嗟喰らいし絶望色の刃金」

「遍く絶望を束ね紡がれた死色の黒刃金」


その色は深淵よりなお深い黒漆黒。根源的な恐怖を煽る色だった。


「それを壊されるのは少し困るね」


いつの間にか僕の目の前に一人の女がいた。

勿論、それは人間ではなく、魔族ではない。


「……誰?」

「そうだね。いうなれば世界、いうなれば神、いうなればこの世全ての創造主」


そしてこの女は続けて言う。


「いつも君は私を呪っていたね」

「……お前が神か」

「そう、私が神様。君をこの世界に呼んで、魔王を殺させたのも私。君がそんなにも不幸な目に合うのも私のせい」

「……」


こいつがすべての元凶。

こいつが僕からすべて奪った憎い相手。

復讐の対象。

殺意をぶつけるべき、存在。

だから僕はそれを振り下ろし、斬り裂いた。


「感謝するよ。ようやく私も眠れる」


そう、女が言った。

瞬間、世界は終わった。


徐々に世界は黒に支配され、崩壊していき、終わった。


世界はこうして終わる。

世界はこうして終わる。


劇的にではなくゆっくりと。

その終わりを刻みつけながら。


ばいばい、リーズ、メア、ギル。

君らの仇は一応とれたかな。

いくら人外だといってもこれで僕も死ねるはずだよ。



あれだけの命を奪ったんだ。僕は地獄にでも堕ちるだろうね。



でも、でも、もし君たちがいる天国に逝けたら…………





こことは違う世界。


「どうだった? 面白い話だったでしょう?」


紫色の髪をした女は手に持っていた本を閉じ、語りかける。


「何故勇者は再び勇者となる、という題名なのか知りたいのね。簡単よ。勇者という存在は文字通り勇気ある者ということ。

だから彼は文字通り勇者なのよ。だって世界という巨大な害悪を一人で滅ぼす勇気を持っていたのだから。そして彼は百年前と同じようにその勇気を奮い、再び勇者となるのよ」

「……」

「ん~それは世界が終わりたがっていたからでしょうね。だから終わらせるチカラがある彼の周りでは不条理なことばかり起きたのよ。だっておかしいでしょう。対価に要求したことを考慮すればそうとしか思えないわ」

「…………」

「さあ。死んでるかもしれないし生きているかもしれないわ。アレはもう生き物と呼んでいいレベルじゃないもの」

「……」

「別に悲しくはないわ。彼との関係性は互いに利用していただけだもの」

「……」

「しつこいわね。言ったでしょう。悲しくもないし嬉しくもないわよ」

「……」

「そう、かえるのね」

「……」

「ええ、また……」




「ふふ、私はあなたの事が気に入っていたのよ。気付いてたかしら、ねえ紅月?」







そこには何もなかった。



文字通り、言葉通りの虚無だった。



一体どれほどの時間が流れたのだろうか。



わからない。



どうでもいい。



解っていることは、僕が死ななかったこと。



どうでもいい。



どうでもいい。



どうでもいい。



漸く気付けたんだ。



虚無の中で漸く……



僕の中に愛しい存在がいるって……



まだとても弱々しいけれど、少しずつ強くなっているんだ。



…………リーズ。



だからもういいんだ。



これでもう……いいんだ。



僕が欲しかったものが手に入ったんだ。



だからもういいんだ。



僕は再び意識を手放した。



今度起きた時、彼女がそばにいると祈りながら……















リーズ、僕は君が大好きだよ。


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