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プロローグ

気品ある、豪勢な部屋。そこには三人の人間がいた。

僕としては漸く魔王を倒したのだから早く身体を休ませたいのだが……


「此度の魔王討伐、誠に見事であった。臣民を代表し、礼を言う」


髭を蓄え、豪華な服を着た男。これがこの国の王。


「勇者様、あなたが此方に来てはや三ヶ月、そろそろ故郷が恋しいと思う」


最初に抱いた違和感がより明確な形になる。


「我等にはそなたを故郷に帰す準備が出来ている」


魔王を倒した勇者はもう必要ない、そういうことか。だから僕が城に帰ってきた時、心底驚いたのか。


あの絶望的な強さを誇った魔王と相打ちになると確信して……

それとも、仲間の一人だったあの男が僕を暗殺できたと確信していてか…‥


「僕はもう必要ないと。今まで多大な利益をもたらしてきたこの僕が」


感情が凍る。冷たい声が響いた。勇者は怒りを隠さず、だが語尾は荒げずに朗々と語る。


「本当に損のないやり方だ。あなたたちはただ異世界から勇者を喚びさえすればいいのだから」

「いえ、違い──」

「──何も違わないでしょう。現に今の僕がそれを証明している」


僕の語った事実を否定しようとした姫様、間髪入れず僕はそれを否定する。


「もういい加減僕を騙さないでくれ」


つい先日まで好きだったヒトだけど、何一つ遠慮しなかった。それどころか見下すように冷たい眼差しで見据える。


「すまない」

「もういいですよ。ここでいくら文句を言おうとも僕には帰るしか選択肢はないですから」


頭を下げ謝られてもそれで済む問題でもないし、僕がどうこうできることでもない。


どうせこの王のことだ。僕が嫌々帰ったことを美談にして王朝をより固めるつもりだろう。つくづく僕は利用されるだけだな。


「もう一人にしてください」


そういい僕は立ち去った。姫様が何か言いかけていたが、彼女に僕を止める資格なんてない。石造りの祭壇の周りに沢山の宮廷魔術師たちが集う。事情を知らない彼らは泣いていた。


世界を救った勇者に何の礼もできずに、足早に勇者が帰ってしまうのだから。


唄うように呪文は唱えられ、終わる。

僕の足元から光の粒子となって消えていく。


「すみません。色々とお話しがあるのでこの場は私たちだけにしてもらえませんか?」


姫様が何かを決意した表情で言った。

ざわめいたが、最終的に宮廷魔術師は王の意思を問うように見て、王は頷いた。

残ったのは二人。僕と姫様。僕はもう腰まで消えていた。じきに全て消えてしまうだろう。


姫様は決心し、勇者に一歩近づき言った。


「私はあなたが好きです」


姫様が手にしていた指輪を手渡された。確か昔、勇者が綺麗で好きな形だと言っていた指輪だった。


「そう、僕も好きだった」


哀しそうに姫様は目を伏せる。


「だから僕は恨むし呪うし赦さない。次、僕を召喚してみろ。この世界を滅ぼしてやる。僕を騙したお前は全てを見届けてから殺してやる。僕はこの世界を赦さない」


渡された指輪を投げ捨てようとして、やめた。そして僕は光の粒子となって消えた。


「……ごめんなさい」


勇者の怨嗟を其の身で受け止めた姫様は泣き崩れた。


「ごめんなさい」

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