2話 ~前世からのご褒美?~
今は授業中だ。
精神を集中し、俺は授業を受けている。
それは学生として勉強が本分!などの健全な理由ではない。
その証拠に授業内容はほとんど頭に入っていない。
ならば何をそんなに精神を集中しているか?
簡単な答えである。
女性(本当に神のようだ)に与えられた「ご褒美」によって前世の力を手に入れてしまった。
それからというもの…以前のただの面白味のない生活から細心の注意を払う
面倒な生活になってしまった。
俺の家には学校で折ってしまったシャープペンシルが何本もある…。
そう、前世の力を操りきれていないのか、あまりに強大な俺の力で折ってしまった。
比喩を使うが、俺の前世はどうやら人間ではなかったようだ。
何とか今日を学校を終えることに成功した。
元よりそんな機会もそうそうに訪れるものではなかったが、人には決して触れないよう心掛けている。
うっかり触ってしまったら最後、力の加減を間違えたら相手は…。
「リュウー!やっと会えた!!!」
大きな声で誰かを呼びかける女の子が一人。
あんな風にフランクな関係って…相手の男羨ましすぎる…妬ましい。
そんな嫌な気配を悟られないようさっさと帰りますか。
「リュウ!会いたかったよー!!」
彼女は俺に抱きついてきた。
場所は校内。こんな場所でこの状況はマズい。平然を気取って答えよう。
「ひ、人違いじゃ、ないですか?」
彼女はこれから赤面して謝るのだろうか?少し行動に期待した。
「何言ってるのー?リュウはあなたでしょ?」
「俺はリュウなんて名前じゃない。」
全くこの女の子は何を言っているんだ。
しかし、可愛い子だ。人違いに感謝感謝。
抱きつかれて分かったことは彼女の女の子らしい部分は控えめらしいということだった。
それは深い意味はないがありがたいことだった。
「リュウちょっとこっちにきてー!」
彼女に手を取られた俺はされるがまま、ついていった。
俺の力の加減がどうとかはこのときの俺には考えている余裕は無かった。
「リュウ…そっか。ごめんね。リュウには記憶がないんだったね。」
何というベタな。屋上につれてこられた。
「私もついおととい記憶を取り戻したんだけどね。」
「君…もしかして前世のご褒美で記憶でも貰った?」
俺が力を取り戻した日付と同じ日に思い出した。その事を聞いただけでこの答えは恐らく正解だろう。
「うん、よくわかったね?
前世で私とリュウと他のみんなで一緒に世界を救ったの。」
この数日ですっかりと俺もこのありえないような事に疑問を持つことも無くなった。
実際に自分にあり得ないような力が手に入ったからな…。
彼女の話通りだとすると、他にも同じように「ご褒美」を貰った俺の前世の仲間達はいるってことか。
「世界を救う…か。具体的に何をしたんだ?俺達は。」
「魔王を倒したの。」
え?…この子への信用が俺の中から一気に無くなった。
「魔王って…この世界そんなファンタジーな世界じゃ無いってことは、歴史の授業で分かるだろ?
魔王なんて存在いないよ?」
溜息を心の中でつく。
俺は何を真面目に答えているのか…。
「何も前世がこの世界って決まってないでしょ?
私達がいた世界では普通に魔王もいたし、勇者ももちろん。魔法もあったよ?」
なるほど。そういう事か。
「そうか…疑って悪かったな。」
「まさかすぐに信じてもらえるとは思わなかったよー。よかった!」
「わたしの名前はフラウ。
今の名前は天乃 花楓だよー。
リュウは前世の名前がリュウだったんだよ。」
「そうか。んじゃ俺も一応自己紹介しておくわ。
今の名前は瀬野 龍斗だ。よろしく。」
天乃 花楓…か。俺の前世は良い物だったのかもしれない。そう思わせてくれた少女だった。
「そういえば何で俺がリュウって分かったんだ?」
「そんなの簡単だよ。顔が一緒だもんー。」
「そうなのか!?」
うんっと彼女は傾く。俺の前世は良い物だった事が分かった。
しかし…転生しても顔は一緒なのか…。この事実知ったら発狂しそうな奴に心当たりが…。
「そんな天乃は俺に話すためだけに話しかけてきたのか?」
「花楓で良いよー。話すのもかなりの目標だったけど、そうじゃなくてね。
実はわたし達が前いた世界が危ないんだよ。だから前の世界を助けたくて…。」
俺達にはもう関係ないのに?
そう言いかけて俺は慌てて口を閉ざす。
彼女には記憶があるんだ…そりゃ自分の世界が危険となっては穏やかではないだろう。
「確か龍斗は力をご褒美にしてたよね?だからわたし達の世界を一緒に助けてくれたらうれしいな…。」
頼みにくそうに花楓はそう言う。
「良いよ。きっと俺はこの力の使い道に悩んでいる所だったしな。」
こんな可愛い子が頼んできたんだ。断る理由は無いな。
それにここで断っちゃえば彼女との縁も切れるような気がした。
「そんなあっさりと!
やっぱり龍斗は優しいね…。本当にありがとうね!」
こうして俺の人生に、恐らく最大かつ唯一の機転が訪れた。
俺達の世界の背景、彼女と俺との具体的関係…気になることはたくさんある。
でもきっと俺の人生は良い方向に向かっている。
そんな気がしていた。
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