この名も無い星を君にあげよう。
『星屑を拾いました』
彼女が大事そうに両手で包む様にしたソレを見る。
「オセロ……じゃないな。両面黒だ」
「碁石ですよ? 囲碁の」
「コレが星?」
「囲碁の対局、一体何通りだと思います? 無限の星空の様だ、って或る漫画で言ってて、成程! と思ったのですよ」
受け売りの様だ。
「この名もない星を差し上げます」
否、要らねえよ、と言う此方の台詞ガン無視で、彼女は、ですから、と石を差し出して笑う。
「囲碁部、入ってみません?」
*
うっかりして、星をひとつ落としてしまった。
多分他の人間には大事な物だと解らない。持ってかれる心配はないが、踏まれたら割れるかも。
ポケットに穴が空いてるのに何で気付かなかったんだ。
「――星屑拾っちゃった」
必死に床に走らせてた視線が見慣れたハイヒールを捉える。
「何で……」
「バイト代わって貰ったの」
大正解、と茶目っ気たっぷりに笑う彼女は、いつかみたいにソレを差し出す。
「もう名も無い星じゃないね、名人」