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N-091 やってきたのは?


 俺達が遺跡の地下迷宮に入って半月程過ぎた時、長老達から呼出しがあった。

 たまたま、村の奥にある迷宮から帰った時だったから良いようなものの、出掛けて直ぐなら呼び出しに応じられないぞ。

 まぁ、念の為に出掛ける前に長老達には連絡を入れてはいるんだけどね。


 何時ものように、俺とエルちゃんに伝令役のミイネさんの3人で長老の部屋へと出向く。

 何時もの席に座ると、長老がしばらく待つように俺達に伝えてくれた。


 世話係が入れてくれたお茶を飲みながら、町の図面を広げて話をしていると、その図面を預かると長老の1人が俺に告げる。


 「前にも見せてもらったが、だいぶ形として整理出来たようじゃ。これを元に町を作らせるよ。レムルには後で対価を支払うつもりじゃ」

 「対価は町作りに役立ててください。俺とエルちゃんをここで面倒見ていただけるだけで十分です」


 「ネコ族の一員なら当然のことじゃ。それは対価とは言わぬ。……そうじゃ!これを渡そうかの。パラム王都ではそれなりの需要があって購入するハンターも大勢いたのじゃが、王都炎上のおり原画が焼失しておる。今では黒レベルのハンターが持っているかどうかじゃろう」

 

 そう言って渡してくれた物は、パラム魔物図鑑? A4サイズでしかも1枚毎に魔物が彩色されて描かれている。下に数行に渡って特徴が書かれているから確かに図鑑だな。


 「良いのですか。これは貴重なものだと思いますが?」

 「構わぬ。絵師にその図鑑をもう一度描かせておる。あと数年すれば村の雑貨屋で売られるようになるじゃろうが、それはワシが使っていた物じゃ。ワシが補足しておる箇所も多々ある。お前達の助けになれば幸いじゃ」


 注釈付きって訳だな。それはオリジナルを越えるほど貴重だぞ。経験がこの図鑑に凝縮されてるってことだ。

 だが、そうすると長老の過去はハンターなのか?

 改めて長老を見ると、俺を見て笑っている。出来の悪い弟子を見守る師匠て感じだな。ということは、迷宮で困ったことがあれば相談できるってことになるな。それが分っただけでも、今日の収穫は大きいぞ。

 

 図鑑を押し戴いてバッグに押し込むと、改めてパイプにタバコを詰める。

 一服を始めたところに、3人の男達が部屋に入ってきた。


 「呼び出しを受けて早速参じました。で、ご用件は?」


 エクレムさんにメイヒムさんそれにアルトスさんの3人だ。

 長老の前に座り俺の方を見て軽く頷くと、早速長老達に用向きを尋ねた。


 「ふむ、知っている者もおろうが、例の迷宮の件じゃ。レムル達が帰って3日後に10人ずつの2つのチームを地下1階に送った。全員が青5つ以上の中堅じゃったが、あれから10日誰も帰ってこぬ。遺跡に行くまでに1日、地下1階への通路を行くのに半日を考えれば7日も地下1階の調査を行なっていることになる。

 レムル達が1階の調査に要した時間は約3日。中堅がその倍の時間をついやするのは余りにも不自然だ」

 「全滅したと見るのが妥当でしょうな」

 

 「だが、中堅だぞ。まして10人が全員やられる等聞いた事も無い」

 「やはり、あの迷宮の魔物はレベルが高いのでしょうか?」


 「レベルが高いのもあるじゃろうが、異質なのでは?と考えておる。キメラが1階におるような迷宮じゃ」

 「今度は黒を送り込まねばなるまい。銀の連中はあの戦で全員が亡くなっているからな」


 「そこでじゃ。再度、連合王国のハンターに依頼をすることにした。あの国ではレベルの高い銀がおる。だが、青5つのパーティを簡単に全滅させるような魔物が地下1階にいるような迷宮の調査を引き受けてくれるものかどうかじゃな」

 「たぶん、ユングさん達が来るんじゃないですか? あの人達は依頼の報酬よりもその依頼の難易度で依頼を受けている気がします」


 「あの娘達か? 本当に俺達の誰もが目にした事もない迷宮の最深部まで降りたのだろうか?」

 「何時かは分るじゃろう。2人が迷宮の地図を渡してくれたからのう。だが、ワシが知っておる地下6階までは正確じゃった。ワシ等の一族の誰かがこの地図を元に最深部まで降りることが出来るかが楽しみじゃのう」


 それまで生きてるつもりなのだろうか? まぁ、楽しみがあればそれだけ長生きできると俺のお祖父ちゃんも言ってたからな。案外長生き出来るかも知れないぞ。

 ということは、またユングさん達がやってくることになるな。

 何度も来て貰って悪い気がするけど、本人達は淡々としてるからな。

 

 「それで、連合王国からの返事は?」

 「早ければ次の商船でやってくるじゃろう。連合王国のギルドは正式に依頼として受取ってくれたようじゃ」


 ちょっと待てよ。連合王国と距離を考えると、今の話はおかしくないか?

 どう考えても早すぎる。依頼の文書を連合王国に送ってそれを船でまたエイダスに持ってくるだけで10日は掛かる。

 たぶん、長老は2つのパーティの村への帰還をギリギリまで待ってた筈だ。

 そうなると、連合王国の商館に伝えたのは精々3日前。その返事を長老が得ているとなれば……。

 商館はエルちゃんが持っているような通信機を持っているという事になる。

 連合王国では通信機は一般的な筈がない。だとすると、あの商会は連合王国の外交館の機能も持っているのだろうか?


 「どうした? 何を考えておる」

 「連合王国との連絡が早すぎると……。そして、その意味は何だろうと」


 「商館の駐在員に商会の者がおる。それでおおよその事は分かるじゃろう」

 「名目は商館の駐在ですが、実態は連合王国の外交官という事ですね。なるほど、それなら分ります」


 「何のことか俺達にはサッパリだ。」

 「国として付き合ってくれるという事ですよ。俺達が建国してもエイダスの他国が承認しなければ、無法者の集まりとして彼等は俺達を蹂躙できます。ですが、連合王国がそれを承認したとなればちょっと厄介になります。場合によっては連合王国の介入も彼等は考えなければならなくなります」


 「だが、俺達は国を失ったが、その国民の四分の一はいるのだぞ。国を作るなど簡単ではないのか?」

 「自立が必要です。国民の暮らしを維持するための最低限の産業が必要でしょう。そして他国の侵略を跳ね返すだけの軍備。さらにはそれらを運営管理するための統治組織。これらを有機的に組み合わせた体制が出来た時に初めて建国と言えると思います。他国に頼らねば国が維持できないのでは、国を作る意味がありません」


 「確かにレムルの言う通りじゃ。統治組織については旧王都の識者の一部がおるから彼等と相談しておる。

 農業は必要じゃろう。今までのように細々としたものではなく大規模に行なわなければならぬ。それは連合王国からの移住者を中心に何とかできるじゃろう。

 軍の方はアルトス達が頑張っておる。

 そして、我等の生活を維持するための資金はエクレム達のハンター組織が魔石で賄ってくれる。

 もう少しで、国として機能するようになるじゃろう。

 港の商館は、我等の国作りを見守ってくれておる。そう思えば、我等にとっても色々と利用することが出来るというものじゃ」


 「その利用の1つが、連合王国への依頼と言うことに繋がるのですか。なるほど……」

 「ついでに、散弾銃を追加しておいたぞ。新たに中隊2つが装備できるじゃろう」


 「それはありがたい。配備は任せて貰えるのでしょうな?」

 「もちろんじゃ。やはり南の森か?」


 「はい。北は荒地で冬は雪に覆われます。無理に軍を動かせばこの地に来るまでに消耗するでしょう。大規模な軍を派遣するには適しません。ですが、南の森は冬でもそれほど雪が積もることはありません。ラクトー山が遮るからです。やはり、南の森が1番危険です」

 

 長老の1人が俺をチラリと見る。それに気が付いた俺は小さく頷いた。

 ある意味、決定事項ではある。

 だが、それをその場の指揮官がどれだけ認識しているか。長老はそれを確認したかったのだろう。


 「それで、連合王国のハンターは何時来るのですか?」

 「早ければ2日後じゃ。たぶん迷宮の様子を知りたがるじゃろう。その時は、レムルにお願いするつもりじゃ」

 「分りました。それまでは迷宮に入らずに待つことにします」


 「それと、エクレムとメイヒムに仕事じゃ。次の船で連合王国から戦闘工兵の一団がやってくる。彼等の隊長と引き合わせるから、港と我等の村の間に町を作るのじゃ。これがその町の概要図じゃ。戦闘工兵の隊長に渡せば色々と補足してくれるじゃろうが、質問にはお前達で判断して対応してくれ」

 「町ですか? その位置には現在駐屯地がありますが……」

 

 「近場になるのか、撤去になるのかはお前達に任せる」

 「はぁ、何とかやってみますが……」


 あまり、自信は無さそうだな。たまに見に行ってアドバイスしてあげたほうが良さそうだぞ。

 頻繁に行くと、本人達の為にもならないだろうから、始まって一月後辺りが良さそうだな。

 

 「長老、1つ長期的な課題があります。武器職人のドワーフは3人。これでは工房が1つになります。可能であれば、ドワーフの里から職人を迎える訳には行きませんか」

 「それはワシ等も気にはなっておったのじゃ。アルトスが言うならば急務とも言えるのう。直ぐという訳には行くまいが、何とかせねばなるまい」


 新しくドワーフが来るという訳だな。

 何処から来るかが問題だな。出来ればサマルカンドの職人が希望だけど、そうもいか無いだろうな


 「それで、地下水は見つかったんですか?」

 「何箇所か試掘して、それなりに見付けてあるから大丈夫だ」


 俺の質問にメイヒムさんが即答してくれた。

 結局は水場だからな。水の量で町の大きさが変ると言っても過言ではないと思う。


 話が終わったところで、エルちゃんと俺達の部屋に戻った。

 直ぐにアイネさん達が話を聞きたがったが、これはエルちゃん達が説明してくれるから、俺はのんびりとお茶を飲む。


 「今度もユング様達が来るのかにゃ?」

 「それは分らないけど、きっと黒の高位か銀レベルの人じゃないかな。俺としてはユングさん達に来て欲しいけどね」

 

 誰になるかは、依頼金とその依頼の内容によるだろう。

 褒賞金を幾らにしたかは分らないけど、俺達でさえ銀貨30枚を貰ってるからな。金貨を何枚かってところじゃないだろうか。

 それでも、命あってのことだから高いということにはならない筈だ。



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