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N-171 ユングさんのお土産


 遥か西よりやってきた悪魔の遠征軍が、エイダス島の北西海岸に上陸してから20日が過ぎた。

 今の所はパラム王国は平穏そのものだ。とは言え、パラム湖の沖合いに漕ぎ出す船はいない。岸辺沿いで釣りをする姿が庭のテラスから見える。貴重な食料だから、漁ができる間は漁を継続すべきだろう。


 レムナム王国は兵力の半数を使ってシダル山の中に拠点を作っているようだ。

 【メルダム】を防ぐ方法を考え付かないのだろう。自然の洞穴を利用しようというのだろうか?

 だが、王都に篭るよりは良いだろう。直ぐに包囲殲滅されてしまうだろう。レムナム王都は規模が小さいからな。せめてパラム王都程の大きさと他の拠点との連絡用の地下道があれば良いのだが……。


 いつものように、作戦指揮所でスクリーンの画像を基に、軍の配置を大きな地図上の駒を移動する。遠征軍の駒の数が足りなくなってきたな。既にエイダス島に2万も上陸している。

 あらかた配置した駒を眺めながら一服していると、衛兵が来客を案内してきた。


 「よう、頑張ってるか?」

 「ユングさんでしたか。来るなら来ると連絡していただけると助かります」


 そんな俺の抗議もどこ吹く風だ。笑みを浮かべながらテーブルを回りこんでソファーに向かう。

 俺達もソファーに移動だ。エルちゃんはお茶を頼みに部屋を出て行った。


 「こっちも色々と忙しくなってきたからな。まあ、それ位は我慢してくれ。それと、これは土産だ」


 バッグから魔法の袋を取り出すと、煙草の箱を20個程取出した。

 ありがたく頂いておく。これからは貴重品になるんだろうな。

 

 「こっちは、鯛焼きだ。エルちゃん達に渡してくれ」

 「峠の航空部隊はどうですか?」

 「分かったか? フラウ達は向こうでちょっと新型爆弾の取り扱いを教えている。本来はお前達にも供与したいところだが、絶対数が足りない。爆裂球で我慢してくれ。3千個をアルトスのところにおいてきたぞ」


 思わず、絶句する。それ程の量があれば、定期的な夜間爆撃が可能になるぞ。

 

 「このままではレムナム軍が崩れる。最終的に壊滅するのは仕方がないが、少し早過ぎる」

 「助かります。少なくとも半年は伸ばしたいです」


 「お前の旧式武器の売り渡しは、それなりに効果がある。商船が、2カ国にカートリッジを2万発程運んだそうだ。更に3万ほど送ればしばらくは対処できるだろう。旧式武器ならお前達に牙を剥いても対応できるだろう?」


 エルちゃんがトレイを持ってやってきた。

 暖炉のポットのお湯を使ってお茶を入れてくれると、ユングさんが軽くエルちゃんにカップを捧げてお礼をしている。


 「それで、連合王国の見解は?」

 「うむ。先ずはこれを見てくれ」


 俺の問いにユングさんが端末を操作してスクリーンを展開する。連合王国から大陸の西の外れまでが映し出された。


 「西の王国は全て滅んだという事になるな。難民の収容が現在進行中だ。ここにいる軍隊は2個大隊ほどに減っているが敵を徐々に東に引き連れてきている。連合王国が西に作った長城まで後100kmもないが、この程度なら十分に阻止できる。

 だが、この流れは止まらない。続々と西の大陸からやってくるだろう。これを阻止するために峠の航空部隊を使うのは前に話した通りだ……」


 ユングさんの危惧は、敵の侵攻ルートが変わらないか?という事らしい。

 現状であれば、何とかなる。反攻は困難だが迎撃は可能だ。だが、西回りで侵攻してくる敵兵力が最近減っているらしい。差が出た分が東に回ってくると戦略を練り直さねばならないらしい。

 だが、減った兵力は必ずしも俺達の方に回ってくるかは分からない。ミズキさん達はその原因と対策を考えるのに忙しいそうだ。


 「まぁ、そんな状況だ。俺達は西を担当する事になったから、度々顔を合わせる事荷なると思うけどね」

 

 となると、東は明人さん達が担当してるってことだな。

 だが、北の山脈は大丈夫なのか?


 「穴があるのは分かってる。だが、北はそれ程心配はいらないそうだ。厳冬期を越せるような連中じゃない。短期間であれば何とかなるが、長期間となれば話は別だ」


 冬将軍という事か?

 そういえば、カナダから北極海を渡ってユーラシアについたらインド辺りで南に下がってる。それ以上北を進めないという事か?

 

 「ですが、このままでは何れ破局ですよ?」

 「そうでもない。この状態が長く続くという事だろうな。……将来的には、俺達が遠征することになるだろうけど……。アンデス山脈に網の目のように張り廻らされた敵を制圧する手がまだ見付からない」

 

 原爆、毒ガス……それでもダメだったらしい。もっとも、それらを使ったのが別の目的だから、直接相手の本拠地に使ったわけでは無さそうだ。

 だが、そんな兵器を使う相手に数で戦おうとするのか? ひょっとして、本能で戦っているのかもしれないな。


 タバコの箱の封を切ると、キャルミラさんに向けると細い手を伸ばして1本を取った。俺も1本を取ると、ライターで火を点けてあげる。

 

 「低脳ではあるが、本能はあるという事じゃろう。由々しき事態じゃが、膠着状態がこのまま続くのはもっと問題じゃ」

 「そうだな。だが、それがこの世界の現状だ。俺達の反攻はかなり先になりそうだな」

                ・

                ・

                ・


 遠征軍の侵攻から半年が過ぎた。

 レムナム軍はまだ善戦している。北の拠点に軍を分散させて、総動員体制を敷いているようだ。戦えない国民はサンドミナスに亡命させたようだ。

 殆ど荷は持たないが、旧ボルテムとガリム王国の財宝を持参したようだから、サアンドミナス王国としても無碍には出来無いだろう。数年立てば兵士になれる子供達も沢山いることだしな。

 まだ商船はサンドミナス王国には出入しているようだ。

 食料と弾薬はかなり豊富なんだろう。たまに闇に紛れてレムナム王国に荷馬車が送られている。

 同じ侵攻を受ける者同士ある程度の融通を図っているのだろうか?

 

 俺達の王国にもレムナム王国とサンドミナス王国から何度か共闘を促がす伝令がやってきたが全て追い返している。

 共闘そのものは問題ないが、その後が問題だ。パラム王国の内部に入り込んでくる可能性が高い。

 彼らの支援はイオンクラフトで十分だ。夜間爆撃を行なっているから、今まで持ちこたえたと言っても良いんじゃないか?

 俺達の軍備が十分に整うまでの時間を稼いでくれる代償としてはそれで十分だろう。


 「だいぶレムナムは侵食されたな」

 「はい。王都は数日で落ちるかも知れません。この内海をつかった物資の輸送が途絶えればレムナム王国は滅亡です」


 小船で南部から内海の奥に向かい、ヘイムダルの目の前で荷揚げを行なっている。その後は湿地帯を迂回して山に向かうのだが、荷駄の列はいつも数台だ。


 「見付からぬように小船を使っているようじゃが、いつまで続くかのう……」

 「王都が破壊されても、サンドミナスとの国境の柵は機能しています。後一月はこのまま輸送できるでしょう。サンドミナスとしても、レムナム公国の滅亡で次に侵略の手が伸びる事は知っていますから、援助を止めるわけにはいかないでしょうね」


 現状の遠征軍の数は3万を超えている。

 何度も総攻撃を掛けてはいるようだが、その都度銃の一斉射撃で撃退している。

 夜間は遠征軍の焚き火を目標に爆裂球を降らせているから、かなり消耗しているはずなのだが、次々と艦隊が兵士をはき出している。

 

 「レムナス将軍からの通信です。レムナム軍の偵察部隊が接近。撃退したとのことです」

 「ご苦労さん。レムナス将軍には引き続き監視を頼むと連絡してくれ」


 通信兵が俺に軽く胸を叩く礼をすると、テーブルに引き上げていく。


 「レムナムは東への逃走路を探しているということじゃろう」

 「早めに監視所を作って正解でした。石垣を築く事はできませんでしたが、丸太の柵を作るために柵から西へ1M(150m)以上森を伐採しています。近付けばハンターが撃退してくれますよ」


 それ程高い柵ではないが2重に作ったそうだ。監視所は外壁と屋根を石積みしている。敵の【メルダム】にだって扉を閉めれば耐えられるだろう。

 その柵も現在は3重目を作るためにアルトスさんが2個中隊を派遣している。更に北側は屯田兵の部隊が柵や石垣築いている。まだまだ形にはなっていないが、後一月も経てば衛星画像で確認出来るようになるだろう。


 「問題はこの艦隊じゃ。今までの規模とは異なるぞ!」

 

 地図上で西に配置された駒をキャルミラさんが指差した。

 その艦隊はいままでの3倍の規模で向かってくる。30隻に乗り組んだ兵士の数は6千人を超えるだろう。

 その前後にお10隻の艦隊がある。全て上陸すると1万人を超えるんじゃないか?上陸している部隊と合流すれば4万の軍勢だ。いよいよって感じだな。


 「マイデルの爆弾製造は進んでいるのか?」

 「人数が増えたようです。現在は1日2個という所ですね」


 連合王国からの補給は弾薬を重点的に行なっている。爆弾は一度に運ばれる量は20個程度だ。50kg爆弾だからな……。1機に2個、それが4機で8個だ。どれ位の威力があるのかは分らないが、現在の在庫量は300発程度だろう。足りないところを鉄の管に爆裂球を3個入れた簡易爆弾で対処しようと考えている。ユングさんが運んでくれた3千個の爆裂球の内、千個をこれに当てている。

 残りの爆裂球は2個一組で針金で縛って落としているのだが、夜間爆撃だから効果が確認できない。遠征軍の連中は共食いするようだ。翌朝にはまるで何もなかったように戦士達がうごめいている。


 「余裕がある内は続けるべきじゃろうな。だが、……」

 「夜間限定で良いでしょう。まだこの島の北東部に俺達がいることを教える必要はありません」


 可能な限り隠れるべきだ。それが俺達の補給を容易にしてくれる。

 西の長城に連中が押し寄せるまでは気が付かないだろう。

 

 大陸の西にスクリーンを移してみた。

 この島とは問題にならないな。数個大隊規模で東に進んでいるようだ。

 難民の群れは長城の中に収容したようだ。

 長城には既に3個大隊が配置されている筈だが、更に遊牧民の戦士達もその守りに着いてるな。ダリム山脈の尾根に向かって長城が延びている。

 最初は簡単な柵だったが、今では2重の柵と空掘りその後ろの石垣という形で陣が出来上がっている。

 見える範囲で6箇所の砦が作られているから、俺達の砦と同じで砦内から砲撃も可能なんだろう。

 更に画像を拡大すると移動式の78mm砲が並んでいる。こんもりした丘のようにみえるのは隠蔽した105mm砲なのだろうか?

 かなりの備えだな。さすがは連合王国だ。


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