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N-017 リスティナさんの旦那さん


 朝早く小屋を出たから昼前に村に着いた。俺の時計では10時だから、余裕を持って村を回れるな。


 「皆で先ずはギルドよ。採取した薬草を納品するからね。そして、順番にレベルを確認しましょう」

 「グラルを狩ったんだ。だいぶレベルが上がる筈だぞ」


 ルミナスは期待してるようだけど、上がるといい事があるのかな? どちらかと言うと苦労が増えるだけなんじゃないかと思うんだけどね。


 ギルドの扉を開けるとチェリーさんが俺達を見て嬉しそうに「今日は」と声を掛けてくれた。

 早速、全員のレベルを水晶球で確認してもらう。


 「リスティナは白1つね。おめでとうを言わせて貰うわ。ルミナスとサンディは赤9つになったわ。今年中には白確実よ。てっちゃんとエルちゃんは赤6つね。だいぶレベルの上がり方が早いけど、無理しちゃダメよ。

 グラルの話はレムナスさんから聞いてるわ。よくも無事だったとギルド中で話題になってたわ」

 

 「ありがとう。小屋が頑丈に出来ていて助かったの。あのグラムにやられたチームがいたことが残念だわ」

 

 そんな事を話しながらリスティナさんとサンディはチェリーさんと薬草の数を数えだした。

 時間が掛かりそうだから俺とルミナスはエルちゃんを連れて掲示板の依頼書を眺めることにした。


 赤6つだから、2つ上までの依頼を受けられるんだよな。

 そんな事を考えながら依頼書を眺める。まぁ採取が多い事は確かだな。


 「白はやはり狩が多いな。てっちゃんも俺達と一緒に暮らしてるんだ。一緒の依頼を受けることができるぞ」

 「その辺はルミナスに任せるよ。だけど、あまり危険のない奴を選んで欲しいな」

 「安心して任せとけ。直ぐに俺たちに追いつけそうな奴を選んでやるからな」


 そう言って胸を張っているけど、ルミナスだってまだ赤レベルだぞ。

 エルちゃんと顔をあわせて首を振る。仕方ない奴だって、エルちゃんも思ってたみたいだな。


 「皆、集まって!」

 

 俺達に言葉を掛けて、テーブルの方へとリスティナさん達が歩いて行く。

 壁際のテーブルに俺達が座ると、リスティナさんが早速薬草の報酬を分配してくれた。


 「3つで675Lになったわ。1人、135Lずつね」

 「前の報酬と合わせれば1人600Lを越えるな。早速、俺は長剣を買うぞ」


 「でも、その前にベッドのことなんだけど、ギルドの2階にあったようなベッドなら材料を1台150Lで手に入れることができるそうよ。頼んでみない?」

 「少し広くないと2人で寝られないぞ」


 「それも入れて150Lなんだって。そして、蚊帳と運搬費を合わせても50Lでいいみたい。ギルドで斡旋してくれるそうよ」

 「願ってもないことだな。作るより寝心地は良さそうだ」


 ルミナスは少し渋っていたが、どうやらその代金をサンディが払うみたいだ。俺は今の所欲しいのはないからその話に飛びついたけどね。


 「それじゃぁ、私が纏めてチェリーに話しておくわ」

 

 それではこれでと、俺の報酬の山から200Lをリスティナさんに手渡す。そして改めて食料代を100L支払う。俺とエルちゃんで1200L以上、この冬に稼いでいるからこれ位の支払いは問題ない。後買うものといったら魔法の袋ぐらいだからな。


 昼食と夕食は各自が購入する事で、昼過ぎに南門の広場で落ち合うことにした。

 これからはエルちゃんとお見せを廻ってみよう。


 その前に、チェリーさんのところに寄って魔法の袋を購入する。

 エルちゃんの分ということで300Lで済んだ。エルちゃんが持っているのは姉さんの使っていた物なのかな?


 後は食堂、そして雑貨屋と見て回る。

 お弁当のピザモドキを購入すれば、とりあえずの買い物は特に無いのだが、エルちゃんは毛糸玉を3つ買って、ロアル用の減装弾を10個購入した。

 俺は0.2ℓぐらいの真鍮のスキットルと蜂蜜酒それに皮手を手に入れた。


 最後に武器屋を覗いてみる。

 色々な種類の武器が揃っているぞ。そんな中で短剣を見ていると奥のほうでヒュンっと剣を振るう音がした。


 「やはり、剣は値段で決まるな……」


 この聞き覚えのある声は、と奥に行ってみた。

 やはりルミナスが剣を振るっていたようだ。


 「早速来たんだな。それで気に入った長剣はあったのか?」

 「あぁ、だが今回は購入を見送るよ。1,500Lは俺達には大金だ」


 もうちょっと待つのか。まぁ、それもいいだろう。

 

 「てっちゃん達は?」

 「あぁ、ちょっとね。短剣を見せて貰おうと思って」


 「短剣ならこの辺だな」


 店の主人が数本の短剣をカウンターに並べてくれる。

 どれも上物だな。結構値段がするのかもしれないぞ。


 「この短剣は幾らですか?」

 「それは300Lだ。だが、それじゃぁアンタには短か過ぎるだろう?」


 「いえ、これで十分です。この柄はいりません。ケースは頂きます。それと、このガードですが、短く、この辺で切ってくれますか?」

 

 「槍にするのか。昔はそうやって自分の使い勝手のいいものを自分で作ったものだ。構わんぞその辺を見ていれば直ぐにやってやる」


 主人が短剣を持って奥へ入っていった。直ぐにギイギイと金鋸を使う音が響いてくる。


 「あの槍を直すのか? なら、今の槍をサンディにくれないかな。あれを見て欲しがっていたんだ」

 「そうだな。サンディにはエルちゃんが世話になってるし……。構わないぞ」

 「ありがとう。野犬に襲われた時、てっちゃんが遣っているのを見てずっと強請られてたんだ。だけど、売ってる槍はあれだろ。ちょっと違うんだな」


 「ほら、出来たぞ。ガードも刀身と一体だから、短くともそれなりに使えるだろう」

 

 俺が代金を渡すと、皮のケースに入れて短剣を包んでくれた。


 「あんた等がレムナスの言ってた少年達だな。俺の持っていた槍と同じ物を見たと言っていたぞ。工夫の出来るハンターは少ないが、あの少年達はそれが出来ると言っていた」

 

 「それって、褒めていたという事ですか?」

 「十分に褒めているぞ。レムナスはあまり人をほめる事はしない男だが、余程お前達を気に入ったみたいだな」


 小屋に入る時に入口に置いてあった槍を見たんだろうな。それにしても、レムナスさんもあの槍を作ったのか。

 何か親近感が沸いてきたな。


 もう一度雑貨屋に戻って鍬の柄を購入すると、南門の広場へと急いだ。

 既にリスティナさんとサンディーが待っていたようだ。俺達を見て安心している。

 2人に合流すると、門番さんに別れを告げて俺達の小屋へと引き上げる。


 「ルミナスが一緒じゃないもんだから、若いハンター達に随分と誘われたわ。全く自分達のレベルも考えないで人を誘うんだから困った連中よね」

 「でも、それは間違いじゃないわ。レベルが低ければ低いほど仲間が大勢いたほうが獣にも対処しやすい筈よ。とはいえ、さっきの人達は私達が女性だから声を掛けたんでしょうけどね」


 「御免、御免。ちょっと武器屋で長居してしまった。俺の長剣はもう少し先だ。中途半端な奴を購入しても詰まらないからな」

 「それじゃぁ、もっと頑張らないとね」


 どうやら、2人は俺達を待つ間に随分と声を掛けられたみたいだ。確かに2人とも美人だからな。

               ◇

               ◇

               ◇


 小屋に戻って、村で買いこんだ昼食をお茶と一緒に食べ始めた。

 この寝床がベッドになると思うとちょっと嬉しくなるな。


 「そうだ。サンディ、この槍を使わないか?」

 「え? 貰っていいの。」


 「あぁ、ちょっと違う物を作ろうと村で材料を買ってきたんだ。2つはいらないから、お古でいいなら使って欲しい」

 「ありがとう。使わせてもらうわ。前に一度使う所を見て、それ以来欲しかったのよ」


 俺は槍をサンディに手渡した。

 「柄が楕円だから、先に付けたナイフの刃の方向が判るだろ。槍にしては短いけど、杖代わりだからね。」

 「ホントだ。断面の長い方向とナイフの刃の方向が一緒なのね」

 

 サンディは片手剣だよな。獣相手には少し離れて使えるこの槍の方がいいと思うぞ。

 突く、殴る、斬るの動作が出来るからな。


 「それじゃぁ、明日の狩は期待ができそうね。チェリーから頼まれたの。野犬の狩よ」

 「野犬はレムナスさん達が群れを倒したんじゃないのか?」


 「春先の野犬は、村の周囲からは追い出したと言っていたわ。そして野犬はどうも湖の東岸を回りこむように南から来たらしいの……。」


 どうやら、春先にヒーデムと言う湖の南岸の町で、大規模に野犬を狩ったらしい。

 逃げた野犬が湖を回ってこっちに来たということだ。

 この村にとっては迷惑限りない事なので早速抗議したらしい。その結果、野犬狩りを行なう場合は、野犬1匹に3Lの報酬をヒーデム町が上乗せしてくれるとのことだった。


 「普段の3割増しじゃ、ハンターも喜ぶんじゃないか?」

 「そうでもないわ。野犬よりも簡単に狩れるリードルは1匹で100L以上で引き取られるから、野犬を専門に狙うハンターは何処にもいないの。

 私達も、薬草採取のかたわらに、野犬がいたら積極的に狩る位になるわね」


 まぁ、それ位はできそうだ。

 そして、炉の傍で再度槍作りを始める。 

 今度の槍はスコップナイフに比べて細くて長い短剣使うから、投槍としても使えそうな気がするな。


 その夜、村で買い込んだピザモドキを野菜スープと一緒に食べていた時、リスティナさんから衝撃的な告白があった。


 「マイデルが帰ってくるの。ようやく彼が戻ってくるのよ」

 「これで、怖い物はなくなるぞ」

 「リスティナさんも一安心ね」


 誰なんだろう?

 俺とエルちゃんが顔を見合わせる。


 「そうね。貴方達はまだ会ってないわね。マイデルは私の夫なんだけど、母親が危篤と聞いてこの島を離れたのよ。去年の今頃だったかしら」


 そんな事を教えてくれたけど、リスティナさんって人妻だったんだ。

 とてもそんなふうには見えなかったけどね。


 「楽しみにしてろよ。吃驚するから」

 

 ルミナスがそんなことを俺に言った。

 吃驚するような人なのか? ハンサムすぎるとか、筋肉ムキムキとか……。


 「ダメよ。そんなことを言っては。マイデルさんはドワーフ族なの。確かにちょっと変わってるけど、強い事も確かよ」


 余計に分らなくなってきたぞ。ドワーフってちょっと背が低い筋肉質の種族だよな。そして細工が得意だとも聞いた事があるぞ。もっとも、それはRPGの話ではあるんだけどね。

 一体どんな人なんだろう。ルミナス達の話し振りから、かなり慕っていることは確かだ。合うのが楽しみになってきたぞ。


 「たぶん、来月にはこの村に来るだろうってチェリーが言ってたわ。彼もこの小屋に泊めてあげてね」

 「もちろんです。リスティナさんの旦那さんでしょう。ここで暮らすのが一番ですよ」


 俺の言葉にリスティナさんも安心したようだ。

 それにしても、夫婦に交際中に兄妹か。この小屋もおもしろい連中の取り合わせだよな。そうなると小屋を大きくして部屋を作ったほうがいいのかな?

 マイデルさんが来たら、早速相談してみよう。

 

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